ストライキ中の工場や事業場で働く労働者。スキャブscab(病菌、疥癬(かいせん)の意)ともいう。労働組合がストライキに入ると、経営者は企業活動を確保するため、種々の手段を用いてその切り崩しを図ろうとする。スト破りは、〔1〕臨時工、下請工など非組合員、〔2〕第二組合員または管理職、〔3〕争議脱落者または組合脱退者、〔4〕職業的暴力団、などの動員もしくは雇入れのいずれか、またはその併用で通例行われる。いずれの形にせよ、スト破り自体は違法とはいえない。しかし、経営者が組合側と団体交渉をなんらもたず、ストライキの切り崩しだけを目的にスト破りによる操業を行うことは、争議権、団結権に対する侵害とみなされるのが一般的な見解である。なお、スト破りを防止するため、労働組合はピケットを張るのが普通であるが、経営者はこれに対し実力でピケットを破ろうとして暴力的な衝突が起こる例がしばしばである。
[吉田健二]
ストライキ中の工場や事業場であるにもかかわらず,そこで就労する労働者,またはその労働者の行為により,ストライキの効果の減殺をはかること。スキャッブscab(もと米語)ともいわれ,イギリスではstrikebreakerないしblacklegが一般的な言い方である。使用者は生産や営業の続行をもとめて,さらにはストライキの切りくずしを目的として,ストライキ非参加者や雇い入れた失業者を就労させることがある。ストライキ参加者はピケッティング(ピケ)によって彼らの就労を阻止しようとするが,スト破り側の挑発(暴力団関係者を雇い入れることもときになされる)によって暴力的衝突となりやすい。スト破りを許せばストライキの効果は減殺されるため,労働協約の中にスト破り雇入禁止条項をあらかじめ設けさせている労働組合もある。
執筆者:遠藤 公嗣
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