労働組合内の不満分子が、これまでの組合を脱退して新しく結成した労働組合をいう。この場合、分裂前の最初にあった組合を第二組合との対比で第一組合とよぶ。第二組合結成の原因としては、一般に、〔1〕組合の組織運営、運動方針に対する組合員の不満、〔2〕組合幹部の派閥対立、〔3〕対立する上部組織や政党など他団体の介入、〔4〕使用者による組合分裂工作、などがあげられる。とくに日本の場合は経営組織と基盤を同じくする企業別組合を特色としているため、組合幹部の買収、利益誘導など使用者側の分裂工作を受けやすく、第二組合結成の有力な要因となっている。
第二組合の特徴をあげれば、第一に組織的には職員層、役付き工、職制など使用者に近い者が主体となっていること、第二に運動路線としては階級闘争路線を排して労使協調、労働組合主義など穏健路線がとられていることである。このため第二組合は、しばしば使用者側の第一組合に対する組織的攻撃に協力し、組合切り崩しの下請機関的な役割を担う。
また、争議時を例にとれば、早期妥結や第一組合よりも低額条件で妥結をみるなど、スト破りと同じ役割を演じ、事実上御用組合となっている例が多い。
このような第二組合の結成を防止するためには、ユニオン・ショップ協定やクローズド・ショップ協定あるいは唯一交渉約款を締結するなどの方法もあるが、かならずしも有効な手段とはなっていない。第二組合防止の有力な方途は、〔1〕組合民主主義の確立、〔2〕職場闘争の推進、〔3〕組合員の理論学習の強化、などにより地道に組合の闘争力、団結力を高めることである。なお、第二組合の結成にあたって使用者がなんらかの形で手を貸すなどしたとき、あるいは第二組合の結成直後に第一組合を差し置いてユニオン・ショップ協定や唯一交渉団体条項を含む労働協約を締結した場合には、明らかに不当労働行為とみなされる。
[吉田健二]
一般的には,現に存在する労働組合のなかから組合分裂によって新たに結成される労働組合をさすが,歴史的概念としては,そのうち,相対的に労使協調的な右派組合をこのように呼ぶ。日本の労働組合の多くはユニオン・ショップ制(〈ショップ制〉の項参照)にもとづく全員一括加入型の企業別組合という特徴をもつため,主体的な意思決定過程を経ていない全従業員が自動的に組合加入をしている。そのため,労働組合が労使対立の度合を強めてくる場合,経営側の働きかけをうけるなどで,親(しん)会社的意識をもつ従業員が第二組合をつくりやすい傾向にある。第2次大戦後の日本では,第1期(1946-50) 産別会議民主化同盟(産別民同)による産別会議への分裂攻撃(〈民同運動〉の項参照),第2期(1951-60) 民同右派(後には全労会議)による総評への分裂攻撃,第3期(1961-70) 民社党の結成により,その支持基盤である同盟による総評への分裂攻撃,などが相次いだ。いずれも,政治,経済の重要局面で代表的な労働組合に第二組合が発生しており,戦後労働運動史は組合分裂史ともなっている。
1970年以降は,基幹産業における大企業においては,これら第二組合がほぼ制覇したので組合分裂は減少したが,中小企業分野では依然として組合分裂は続いている。最近では,少数派となった第一組合が長期にわたって存続したり,多数派に転化する例や,右派組合から左派勢力が分裂して新組合を結成する例もみられ,複雑な現象を呈している。
執筆者:河西 宏祐
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