スポーツ外傷(読み)スポーツがいしょう(その他表記)Sports trauma

六訂版 家庭医学大全科 「スポーツ外傷」の解説

スポーツ外傷
スポーツがいしょう
Sports trauma
(外傷)

 上腕骨(じょうわんこつ)に発生する投球骨折や腕相撲骨折手首有鉤骨(ゆうこうこつ)骨折、骨盤(こつばん)裂離(れつり)骨折などスポーツ活動に特有の骨折もありますが、外傷の形態それ自体については、スポーツ活動によるものと日常生活で起こるものとの間に大きな差はありません。ただし、スポーツの種類によって発生しやすい外傷というものはあります。

よく起こるスポーツ外傷

 アメリカンフットボール・ラグビー・相撲の頸椎(けいつい)損傷頸部捻挫(けいぶねんざ)、ラグビー・アメリカンフットボールの鎖骨骨折(さこつこっせつ)肩鎖関節脱臼(けんさかんせつだっきゅう)そして肩関節脱臼(かたかんせつだっきゅう)、バレーボール・バスケットボール・ラグビー・サッカーの膝関節(ひざかんせつ)靭帯損傷、サッカーの足関節捻挫(そくかんせつねんざ)外側(がいそく)靭帯損傷)、陸上短距離や野球の肉ばなれ、バレーボール・バスケットボールの突き指などはその好例です。

 なお、アキレス腱の断裂は、普段スポーツをあまりやらない人が草野球や運動会などで急にスポーツをして受傷することが圧倒的に多い外傷です。

 スポーツ選手の場合は、慢性のアキレス腱周囲炎などに続発することが多く、突然断裂することはまれです。野球による突き指や上腕骨の投球骨折も草野球参加者など未熟者に発生することが大半で、訓練された選手に発生することは極めてまれです。

注意すべき特殊なケース

 これらの外傷の具体的な症状や治療法についてはそれぞれの項を参照してもらうとして、外傷のなかには見落とされやすい骨折や異常な経過を示す例もあるので注意が必要です。

 たとえば手首を構成する小さな骨(手根骨(しゅこんこつ))のうち舟状骨(しゅうじょうこつ)有鉤骨の骨折は手術が必要な例も多いのですが、初期には診断がつきにくく、単に手首の捻挫として治療されているケースも少なくありません。

 また、強度の打撲のなかには、のちに筋肉の一部が骨に変わってしまう(異所性骨化(いしょせいこっか)という)例もありますし、下腿の打撲のなかにはコンパートメント症候群といって、はれによる循環障害のために急速に筋肉や神経が壊死(えし)に陥るような恐ろしい例もあります(緊急手術が必要です)。

 外傷は初期治療の適否予後を左右します。したがって経過に少しでも疑問があったら早めに整形外科などの専門医を受診したほうがよいでしょう。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スポーツ外傷」の意味・わかりやすい解説

スポーツ外傷
すぽーつがいしょう

スポーツ活動の際、人や物への衝突や転倒など、一度に急激な力が加わることで起こる組織の損傷。捻挫(ねんざ)や打撲、骨折、脱臼(だっきゅう)、肉離れ、腱(けん)断裂、靭帯(じんたい)損傷などをさす。軽微な動作の反復により一定の部位に弱い力が持続して加わって起こるスポーツ障害(テニス肘(ひじ)やボウリング腕など)とは異なる。おもなものは、頸椎(けいつい)損傷、頸部・手関節・足関節などの捻挫、手根骨骨折、突き指、鎖骨骨折、肩関節脱臼、下腿(かたい)部肉離れ、アキレス腱断裂、膝関節靭帯損傷などである。注意しなければならないのは強度の打撲によって筋肉などの損傷部位が骨に変化してしまう異所性骨化で、関節の可動域が制限されて運動に支障をきたす。また、打撲部位が循環障害から壊死(えし)に至る筋区画症候群(コンパートメント症候群)は、痛みとともに麻痺(まひ)や知覚障害を伴うもので、下腿に痛みや腫脹(しゅちょう)を伴い機能障害をきたす前脛骨区画症候群(脛骨前筋症候群)と、手の拘縮変形により機能障害をきたすフォルクマン拘縮がよく知られている。程度にもよるが多くは一過性の損傷であるため、治療により運動機能や筋力が回復すればスポーツ活動を再開できる可能性が高く、治療後に以前より組織が強靭となって運動機能が向上するケースもある。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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