海抜0メートル以下の土地をいう。世界的には、カスピ海の周辺、死海の周辺、オランダのポルダーなどにゼロメートル地帯が広がる。オランダは国土面積の4分の1が海面以下である。日本では一般に大都市の低地部における地盤沈下地をさして用いている。東京の江東(こうとう)地区では長い期間にわたり地盤が沈下し、東京湾の海面より低いゼロメートル地帯が、荒川(放水路)の両側を中心に広がっている。新潟では1950年代に天然ガス採取に伴って地下水を急激に汲み上げたために地盤沈下が起こり、ゼロメートル地帯が出現した。大阪では西部の臨海工業地帯の地盤沈下が激しく、たびたび災害を受けている。名古屋では南西部にゼロメートル地帯が広がり、伊勢(いせ)湾台風(1959)のときの災害が甚大であった。これらの地帯では、新しい沖積層で水を含む不安定な地層が厚いうえに、工場などによる地下水の過剰揚水のため、地盤が沈下することが多く、高潮災害の危険が大きい。このため地下水のくみあげ規制や、堅固な防潮堤の築造などにより、水害を防ぐ施策が講ぜられている。濃尾(のうび)平野、筑後(ちくご)・佐賀平野、関東平野北部では地盤沈下防止のために地下水採取の削減や代替水源の確保を定めている。
[山鹿誠次・菅野峰明]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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