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デンプン デンプンstarch

翻訳|starch

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

デンプン
starch

D-グルコース (ブドウ糖) が縮合してできた多糖類。植物により二酸化炭素と水を原料として光合成でつくられ,種子,根,地下茎などに貯蔵される。高等動物栄養素として重要であり,ヒトの食物の過半を占める。一般に無味無臭の白色粉末で,植物の種類により特有な形の粒子となって存在する。この粉状のデンプンβ-デンプンといい,これを水と暖めると 50~60℃で粒が膨張して糊状になる。この状態のものをα-デンプンという。β-デンプンは冷水に不溶で消化酵素 (アミラーゼ) の作用を受けにくいが,α-デンプンは容易に消化される。室温あるいは低温で放置すると,α-デンプンはβ-デンプンに徐々に変化するが,乾燥状態では,この変化がきわめて遅い。この事実は食品加工に広く利用されている。デンプンはヨウ素によって青色に呈色する (ヨウ素デンプン反応) 。これはきわめて鋭敏な反応で,デンプンまたはヨウ素の検出に用いられる。

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栄養・生化学辞典の解説

デンプン


 α-グルコースが大部分α1→4結合で結合し,ある種のものでは部分的にα1→6結合で枝分かれした構造をもつ多糖.α1→6結合があるものをアミロペクチン,ないものをアミロースという.動物の消化酵素によって消化される重要な栄養素である.イモ,穀物などの主成分(構造式は前ページ

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

デンプン
でんぷん / 殿粉
starch

緑色植物に存在する多糖で、エネルギーを貯蔵する役割をもつ。構成する単糖はグルコースである。デンプンは高等動物にとっても、炭水化物の栄養源として重要な役割を果たす。デンプンは白色の粉末で、無味、無臭。冷水には溶けない。比重は1.65程度で、水中で沈殿するところから殿粉と名づけられた。
 デンプンは光合成の結果、葉の葉緑体中に生ずる。この光合成されたデンプンを同化デンプンとよぶ。同化デンプンは夜間に低分子化され、ショ糖(スクロース)の形となって根、茎、種子などの貯蔵場所に運ばれ、そこでふたたびデンプンに合成される。この貯蔵されているデンプンは貯蔵デンプンとよばれ、デンプン分子が多数集合したデンプン粒という粒状構造をとっている。デンプン粒を顕微鏡で見ると、同心円の縞(しま)状の層が見える。デンプンが植物体内で生合成されるときの原料は、グルコースが活性化されたもので、アデノシン二リン酸(ADP)グルコースである。貯蔵デンプンの生合成の際には、ショ糖から直接に合成が進むという考えもある。
 デンプンはアミロースとアミロペクチンの二つの成分からなる。アミロースはグルコースがα(アルファ)‐1・4結合で重合した直鎖の多糖で、分子量は数千から数十万である。アミロペクチンはα‐1・4結合のグルコース鎖が、さらにα‐1・6結合で分岐構造を形成した高分子化合物である。ヨウ素デンプン反応において、アミロースは深青色、アミロペクチンは赤褐色を呈する。アミロースとアミロペクチンの比率はデンプンの種類によって異なるが、ジャガイモの場合は20%がアミロースであり、また、糯米(もちごめ)や糯トウモロコシのようにアミロペクチンのみを含むものや、高アミロースのトウモロコシ・オオムギ・米や豆類のようにアミロースを30~70%も含むものもある。デンプン粒を約70℃の温水で処理すると、粒は破れずに膨潤して内部からアミロースが溶出されてくる。
 主食である米や麦の主成分はデンプンである。デンプンの消化過程は、まず唾液(だえき)や膵液(すいえき)中のα‐アミラーゼの作用を受けてα‐1・4結合が切断される。この結果、グルコース2分子が結合したマルトース(麦芽糖)や3分子が結合したマルトトリオースなどが生ずる。α‐アミラーゼはα‐1・6結合の分岐構造には作用しないので、この部分は限界デキストリンとよばれる分岐少糖となって残る。これらの少糖は、小腸で膜消化される。すなわち、小腸粘膜微絨毛(じゅうもう)上に存在するマルターゼは、マルトースなどのα‐1・4結合に作用し、またα‐1・6‐グルコシダーゼは分岐(枝分れ)構造に作用し、いずれもグルコースを遊離する。このようにして生じたグルコースは、小腸壁から吸収されて肝臓に運ばれ、エネルギー源として利用される。[村松 喬]

糊化デンプン

デンプン粒を水の存在下で加熱するか、アルカリ水溶液などの水素結合を破壊する媒体中に置くと、粒は不可逆的に膨潤(または溶解)して糊化(こか)する。糊化とともに粒は微結晶性、複屈折性を失い、粘度が上昇し、酵素(アミラーゼ)や酸など化学薬品に対する反応性が急激に大きくなる。糊化はα化ともいい、糊化デンプンをα‐デンプン、元のデンプン粒をβ(ベータ)‐デンプンとよぶこともある。
 糊化デンプンを水とともに放置すると、微生物の夾雑(きょうざつ)がなくても粘度は低下し、ときには沈殿を生じ、酵素や酸に対する抵抗性が増し、微結晶性を一部回復する。この現象を老化といい、老化したデンプンを老化デンプンとよんでいる。老化をβ化ともいうが、厳密には老化デンプンは元のデンプン粒(β‐デンプン)とは異なり、β´化というべきである。[不破英次]

生産

同化デンプンを多量に蓄えている穀類、いも類、豆類からデンプン粒が工業的に製造されている。日本で製造されるデンプンはトウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、コムギがおもなもので、2006年度の生産額282万トン程度である。このほか、少量のコメやクズのデンプンが生産され、古くはカタクリやワラビのデンプンもつくられていた。外国ではトウモロコシ、ジャガイモ、コムギのほかに、タピオカ、サゴヤシ、アロールートのデンプンが製造されている。日本に輸入されているのはタピオカとサゴヤシのデンプンで、2006年度の輸入額は15万トンを超えている。[不破英次]

用途

デンプンの性質は、原料植物の種類や品種、生育環境、デンプンの製造条件、純度、デンプン粒の大きさなどによってかなり異なり、それに応じてデンプンの用途も異なってくる。デンプンの用途は多方面にわたるが、次の三つに大別できる。(1)デンプンの高分子特性の利用、(2)デンプンを加水分解してグルコース、麦芽糖、異性化糖(グルコースとフルクトースの混合物)などをつくる、(3)デンプンを発酵原料として利用する。
 デンプンを食品の加工や調理に用いるのはいくつかの目的があるが、そのほとんどが前述の(1)高分子特性の利用で、とくに増粘性の利用が多い。この場合、それぞれのデンプンによって性質が異なるので、たとえば葛湯(くずゆ)やとろみつけにはジャガイモデンプン、プディングにはトウモロコシデンプンというように、目的にあったデンプンが用いられる。さらに、よりよい性質をデンプンにもたせるため、いろいろな加工デンプンが製造されている。[不破英次]

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