ナーナク(その他表記)Nānak

改訂新版 世界大百科事典 「ナーナク」の意味・わかりやすい解説

ナーナク
Nānak
生没年:1469-1538

中世インドの宗教家。ヒンドゥー教イスラムを統合したシク教開祖。パンジャーブ地方の中心都市ラホール近郊のタルワンディ村の小農の子として生まれた。少年のころから冥想を好み,ベーダ聖典に通じ,ペルシア語に堪能であったという。ヒンドゥー教とイスラムの修行者たちと親しく交際した。27歳のとき,ワーラーナシーで活躍していたカビールに会ったと伝えられるが,その真偽は別にして,ナーナクはカビールから最大級の影響を受けたと思われる。30歳のとき出家,同郷のムスリムの吟遊詩人マルダーナと2人のヒンドゥーの農夫とともに諸国巡歴し,詩のかたちで教えを説いた。彼の朝の賛歌は《ジャプジー》といわれ,他の彼の宗教詩とともに,《グラント・サーヒブ》に収められている。また,サンスクリットの論書2編も著したと伝えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナーナク」の意味・わかりやすい解説

ナーナク
なーなく
Nānak
(1469―1538)

中世インドの宗教家。ヒンドゥー教とイスラム教を統合したシク教の開祖。パンジャーブ地方の中心都市ラホール近郊に小農の子として生まれた。カビールなどから大きな影響を受け、30歳のとき出家、同郷の吟遊詩人マルダーナBhai Mardana(1459―1534)と2人のヒンドゥー教の農夫とともに諸国を巡歴し、神の唯一性、内在性を詩の形で説いた。彼の朝の賛歌は『ジャプジー』といわれ、他の彼の詩とともに、シク教の根本聖典『グラント・サーヒブ』に収められている。

[宮元啓一 2018年5月21日]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ナーナク」の解説

ナーナク
Nānak

1469~1538/39

インドの宗教改革者。シク教の開祖。ラホール近郊の村の会計兼農民の子として生まれ,父の職を継いだ。30歳頃,家を捨て,生涯にわたってインド内外の諸国を巡歴し,讃歌をつくり,ムスリム出身の弟子の楽器に合わせてそれを歌った。彼はカビール感化を強く受け,唯一の神への信愛と献身によって,ヒンドゥーとムスリムの区別も,カーストの区別もなく解脱(げだつ)できるとし,カースト差別を否定し,ヒンドゥー教イスラームの橋渡しを図った。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナーナク」の意味・わかりやすい解説

ナーナク
Nānak

[生]1469.4.15. ラホール近郊
[没]1539. パンジャブ
シク教の開祖 (グル ) 。商人の家に生まれ,幼少からベーダに通じた。初めムガルの太守に仕官したが,神の啓示を受けてハリの信仰を地上に広めようと賛歌を歌いながらインド各地を遍歴し布教に努めた。唯一永遠の神を説き,ヒンドゥー教の業と輪廻の思想を受け継いだが,化身説を否定し,偶像崇拝をやめ,苦行を禁じ,カースト制度による差別を退けた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ナーナク」の解説

ナーナク
Guru Nānak

1469〜1538
シク教の開祖
若いころからバラモン教の『ヴェーダ』やペルシア語に通じていたが,宗教改革家カビールの影響を受け,イスラームにもなじんだ。唯一神信仰を基盤に,ヒンドゥー教の教義や儀式を改め,シク教を創始した。

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367日誕生日大事典 「ナーナク」の解説

ナーナク

生年月日:1469年4月15日
シク教の開祖
1539年没

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世界大百科事典(旧版)内のナーナクの言及

【カビール】より

…彼が作った詩は膨大な数にのぼったと思われるが,その一部が弟子たちによって《ビージャク》として編集された。また,シク教の開祖ナーナクが彼から絶大な感化を受けたということから,同派の根本聖典《アーディ・グラント》にも多数収録されている。【宮元 啓一】。…

【シク教】より

ナーナク(1469‐1538)を開祖とするインドの有力な宗教。シーク教とも呼ばれる。…

※「ナーナク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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