百科事典マイペディア 「ニーベルングの指環」の意味・わかりやすい解説
ニーベルングの指環【ニーベルングのゆびわ】
→関連項目コルトー|ダンディ|ニルソン|ワルキューレ
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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R.ワーグナー作詞・作曲による楽劇。序夜と3日間のための〈舞台祝祭劇〉で,4部からなるきわめて大規模な作品。台本は作曲者自身が中世のエッダ,ゲルマン伝説《ボルスンガ・サガ》,また英雄叙事詩《ニーベルンゲンの歌》その他に取材して作成し,作曲は1874年に完成した。全曲の初演は76年8月13~17日の4晩にわたり,バイロイトの祝祭劇場で行われた。序夜《ラインの黄金Das Rheingold》(1幕。1854)では,ラインの黄金に呪いがかかる次第が物語られ,第1夜《ワルキューレDie Walküre》(3幕。1856)ではいくさ乙女ワルキューレの一人であるブリュンヒルトが,彼女の父大神ウォータンの命に背いたので,岩の上に眠らされている次第を,第2夜《ジークフリートSiegfried》(3幕。1871)では若き英雄ジークフリートが,大蛇を退治し,ブリュンヒルトを目ざめさせる次第を,第3夜《神々のたそがれGötterdämmerung》(3幕。1874)ではジークフリートがハーゲンの奸計によって殺される次第を描き出す。
ワーグナーは大規模なゲルマン伝説に材をとって,人間のもつ力への意志が世を没落させるという思想を表現した。黄金と力の支配の代りに人間愛の支配する新しき世の到来を希望してこの劇は終わる。このような思想表現のほかに,この劇は人間心理の深層を描き出すものとして,近年注目されている。ワーグナーはここでフロイトの精神分析を先取りしていたことになる。台詩には頭韻が用いられている。
ワーグナーの楽劇にはすべてライトモティーフが使用されているが,この作品ではその使用法が最も徹底している。その数は少なくとも100以上あり,管弦楽においてこれらが物語を展開させる補助手段として有効に働く。ここに使用される管弦楽は音楽史上未曾有の大編成による。作曲は《ジークフリート》第2幕の途中で11年間中断されたが,そのための様式の不統一は見られない。今日まで《ニーベルングの指環》はバイロイト音楽祭の最も重要な出し物である。
執筆者:渡辺 護
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…ケルトの英雄クフーリンは殺した相手を指輪によって息子と知るが,これも〈身分証明〉〈認知〉に用いられた指輪の例である。 指輪を主題にした文学作品にはトールキンの《指輪物語》があるが,指輪がはらむ複雑な象徴性を最大限に展開したのはW.R.ワーグナーの楽劇4部作《ニーベルングの指環》である。ライン川の河底の黄金からニーベルング族(侏儒族)によってつくられた指環は,世界征服の絶大な力を約束する。…
※「ニーベルングの指環」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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