イラン,トルコ,アラブ諸国など西アジアと北アフリカおよび中央アジアの伝統音楽に用いられるノンリードの縦笛。ナーイnāyともいう。元来ペルシア語で〈アシ〉を意味し,実際にネイと呼ばれるアシの茎(中空で竹に似ているがより柔らかく軽い)で作られる。長さは約40cmから80cm内外まで,音高によってさまざまであるが,指孔の数はほぼ共通しており,前面に5孔(ないし6孔),背面に親指用の孔が一つある。ネイはイラン,トルコ,アラブの古典音楽に不可欠の重要な楽器であるが,それ以上にイスラムのスーフィーの典礼音楽で重用される。奏法は管の切口の上端の鋭い縁に息を吹きつけて吹奏するが,尺八のように正面に向かって唇を当てるのではなく,笛をやや斜め横に構え,歌口の側面に唇を当てるのが特徴である。またイランの古典音楽では,この一般的な奏法に加えて,歌口をすっぽりと口中に入れて,上唇と上の前歯の間で歌口の一端を支え,舌と前歯の間隙から呼気を吹きつける独特な奏法が用いられる。
なおアラビア語ではこの笛をカサバqaṣaba,ガスバghaṣba,またはクッサーバquṣṣābaとも呼ぶが,これらの名称もアラビア語で〈アシ〉を意味する。また民俗音楽に用いられる短いネイをアラビア語でシャッバーバshabbābaと呼ぶことがある。中国の洞簫(簫(しよう))はもと西域から伝来したといわれるが,今日の西アジアのネイと共通の祖先をもつものと考えられる。
執筆者:柘植 元一
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西アジア、中央アジア、北アフリカで用いられるノンリード(無簧(むこう))の気鳴楽器。ナーイとかカサバともよばれる。いずれも語義は「葦(あし)」で、実際に太いアシの茎でつくられる場合が多い。標準サイズは長さ50~70センチメートル、直径2~2.5センチメートル程度。指孔は前面に5~7穴、裏面に1穴(親指用)あけられる。奏者は楽器をやや斜めに構え、管の上端を下唇に置くか上歯に当て、送り込む空気の量と方向を舌で調節しながら吹奏する。音域は普通2オクターブ半程度で、呼吸法や運指法(交差や半開)、さらには唇と頭の動かし方などで微妙に音高を変化させる。古典音楽や民俗音楽の合奏や独奏に広く用いられるが、トルコではとくにイスラム教典礼音楽の重要な独奏楽器となっている。
[山田陽一]
…拍節の明確な歌はタスニーフとかザルビーと呼ばれ,あらかじめ作曲された軽い付随的な部分を成す。アーバーズの伴奏に用いられる楽器は,タール,セタール,サントゥール,カマーンチェのような弦楽器やネイと呼ばれる管楽器,そしてトンバク(ザルブ)と呼ばれる太鼓で,旋律楽器は歌の旋律を不即不離の関係で追う。またこれらの楽器が,あらかじめ作曲された器楽曲(ピーシュダルアーマドやレング)を歌の前奏曲や終曲として合奏演奏することもある。…
…オルガンのパイプの主軸であるフルー管もこれと基本的に同じで,機械送風を用いることと,吹込み口も歌口も下部にある点が異なる。 やはり縦型の尺八,洞簫(どうしよう)(簫),ケーナ,ネイなどの場合は,管の上端が開放されており,気道は設けられていない。気流の諸条件は横笛の場合と同じく,すべて奏者の肉体的制御にゆだねられ,管端が歌口を兼ねる。…
※「ねい」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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