ネオジム

精選版 日本国語大辞典 「ネオジム」の意味・読み・例文・類語

ネオジム

〘名〙 (Neodym) 希土類ランタニドの一つ。元素記号 Nd 原子番号六〇。原子量一四四・二四。淡黄白色、六方晶系の金属。天然にはセル石・モナズ石ガドリン石などの鉱物に含まれて存在。一八八五年、ドイツのC=オーエルが発見。空気中では酸化物の被膜を作り青みを帯びて灰色になる。熱水により水素を生じる。〔稿本化学語彙(1900)〕

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デジタル大辞泉 「ネオジム」の意味・読み・例文・類語

ネオジム(〈ドイツ〉Neodym)

希土類元素レアアース)のランタノイドの一。銀白色の金属で、展延性がある。熱水には水素を発生して溶ける。ガラスの着色剤レーザー活性剤永久磁石などに使用。元素記号Nd 原子番号60。原子量144.2。

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化学辞典 第2版 「ネオジム」の解説

ネオジム
ネオジム
neodymium

Nd.原子番号60の元素.電子配置[Xe]4f 46s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素セリウム族の一つ.原子量144.242(3).質量数142(27.2(5)%),143(12.2(2)%),144(23.8(3)%),145(8.3(1)%),146(17.2(3)%),148(5.7(1)%),150(5.6(2)%)の7種の安定同位体と,質量数124~161の放射性同位体が知られている.1842年,C.G. Mosanderが新元素を発見したとして,性質がランタンと“双子のように”似ていて一緒に存在していたことから,ギリシア語の双子を意味するδιδυμο(didymos)によってジジム(didymium)と名づけたが,1885年に至り,C.F. Auer von Welsbach(ウェルスバッハ)がこれをさらに二分割して,一方をギリシア語の“新しい”νεο(neos)とMosanderの“双子”を併せてneodymiumと命名した.他方はプラセオジムである.日本語名はドイツ語の元素名(Neodym)の音訳.
モナズ石バストネス石(バストネサイト)などに存在する.地殻中の存在度16 ppm.希土類元素全般の主要産出国は中国で約98%(2007年)を占めている.希土類埋蔵量首位は中国30%,ついでロシア諸国22%,アメリカ15%.金属は1000 ℃ 以上の高温におけるフッ化物のCaによる還元,または塩化物の溶融塩電解で得られる.淡黄銀白色の金属.α(六方最密)と862 ℃ 以上のβ(体心立方格子)の二変態がある.密度7.007 g cm-3(20 ℃).融点1021 ℃,沸点3068 ℃.標準電極電位 Nd3+/Nd - 2.32 V.第一イオン化エネルギー5.525 eV.希酸,熱水に可溶.空気中(室温)で酸化され酸化皮膜をつくる.酸化数3.Nd3+ の電子配置は4f 3常磁性.Nd化合物の色は赤~赤紫が多い.水溶液も同様.
Nd2O3は青(紫)色で,これを含むガラスはネオジムガラスとよばれ,580 nm 付近(黄色)の光線を吸収するので電球用やガラス細工用眼鏡に使われる.リン酸塩,フッ化物,シュウ酸塩は水に難溶.Nd:YAG(Nd:Y3Al5O12)はレーザー用ドーパント.1982年に日本で発明・開発されたNd2Fe14Bは,現在,最強の永久磁石(商品名ネオマックス)([別用語参照]希土類磁石)であり,コンピューター・ハードディスクドライブ,携帯電話用振動モーター・スピーカー,MRI装置,電気自動車駆動用モーター,放射光挿入光源(アンジュレーター)用など多方面に利用されている.[CAS 7440-00-8]

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改訂新版 世界大百科事典 「ネオジム」の意味・わかりやすい解説

ネオジム
neodymium
Neodym[ドイツ]

周期表第ⅢA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1885年オーストリアのF.vonウェルスバハが,それまで単一元素とされていたジジムdidymiumを二つの新しい元素に分けることに成功し,一つをプラセオジム,他を新しいジジムneodidymiumと名づけたが,現在ではネオジムと称することになった。主要鉱石はセル石,モナザイト,バストネサイト,ガドリン石などである。銀白色金属で,展延性がある。空気中では徐々に酸化物の皮膜をつくる。熱水と反応して水素を発生する。水素,窒素気流中で加熱すると,直接化合して水素化物,窒化物を生ずる。無水塩化物の溶融塩電解,あるいはフッ化物のリチウム-マグネシウム合金などでの還元によって,かなり高純度の金属となる。通常3価の化合物が得られ,固体および水溶液は赤紫色を呈する。常磁性。固体レーザー,合金添加剤など,金属工業,電子材料,磁性材料などへの応用分野が開発されつつある。酸化ネオジムNd2O3はガラスの赤紫着色剤に用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネオジム」の意味・わかりやすい解説

ネオジム
ねおじむ
neodymium

周期表第3族に属し、希土類元素の一つ。1885年オーストリアのウェルスバハは、それまで元素と考えられていたジジムdidymを二つの成分に分けることに成功し、その一つをギリシア語のneos(新しい)とdidymos(双子)からネオジジムと名付け、のちにネオジムとなった(他の一つはプラセオジム)。おもな鉱石はセル石、モナズ石などである。無水塩化物を融解塩電解するか、アルカリ金属で還元して銀白色の金属が得られる。展性、延性がある。空気中室温で表面は酸化被膜で覆われる。ハロゲンと直接化合し、水には徐々に、熱水や酸には水素を発して溶ける。化合物は普通、酸化数Ⅲで、多くは赤色または紫色を呈する。用途はガラスの着色剤やレーザーの活性剤などである。

[守永健一・中原勝儼]


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百科事典マイペディア 「ネオジム」の意味・わかりやすい解説

ネオジム

元素記号はNd。原子番号60,原子量144.242。密度7.007,融点1021℃,沸点3068℃。希土類元素の一つ。主要鉱石はモナズ石。1885年K.V.ウェルスバハが発見。銀白色の金属。熱水と作用して水素を発生,酸に溶ける。化合物の多くは赤ないし紫色。酸化ネオジムNd2O3はガラスの赤紫色着色に利用。ライターなどの発火合金(アウアー合金)に使われてきたほか,鉄との合金が小型強力磁石として,また近年はレーザー用半導体の成分として重要。
→関連項目レアアース

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネオジム」の意味・わかりやすい解説

ネオジム
neodymium

元素記号 Nd ,原子番号 60,原子量 144.24。周期表3族,希土類元素でランタノイド元素の1つ。主要鉱石はセル石,モナズ石,ガドリン石などであるが,常にほかの希土類元素を随伴する。地殻平均含有量 28ppm,海水中の含有量 0.009 μg/l 。 1885年オーストリアの化学者 C.ウェルスバハがかつて元素と考えられていた物質ジジムからプラセオジムとネオジムを分離,同定した。単体は銀白色の金属で,融点 1024℃,比重 7.004。酸に可溶,酸化数3の化合物が普通である。塩類は固体,溶液とも赤紫色。ネオジムガラス,ミッシュメタルの製造などに用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内のネオジムの言及

【ウェルスバハ】より

…1880‐82年ハイデルベルクのR.W.ブンゼンのもとで希土類元素の研究を始め,生涯その研究に没頭した。希土類のジジムは2種の元素の混合物と予想されていたが,85年彼はその分離に成功し,プラセオジムとネオジムと命名した。1907年にはG.ユルバンと独立にイッテルビウムとルテチウムとを分離した。…

※「ネオジム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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