改訂新版 世界大百科事典 「ハミルトニアン」の意味・わかりやすい解説
ハミルトニアン
Hamiltonian
古典力学を正準形式に書き表すために導入された量であるが,量子力学においてきわめて重要な役割を果たす。
古典力学のハミルトニアン
古典力学で質点系を一般化座標qiで表し,運動エネルギーをK,ポテンシャルエネルギーをVとする。L(qi,qi)=K-Vからpi=∂L/∂qiを定義し,piをqiに共役な運動量という(qiの・は,qiの1階の時間微分の意味)。qiをqiとpiで書き表し,をqiとpiの関数として表したH(qi,pi)をこの力学系のハミルトン関数,あるいはハミルトニアンと呼ぶ。Kがqiの二次斉次式のときはHは系の全エネルギーに等しく,ハミルトニアンは系の全エネルギーを座標と運動量で書き表したものである。運動方程式は,
の形のハミルトンの方程式で与えられる。これは1階の方程式であり,ニュートンの方程式に比べて広い対称性をもち,数学的に取扱うときに便利である。
→解析力学
量子力学のハミルトニアン
量子力学においても同じ表式H(qi,pi)を用いる。ただしqi,piは量子力学的な非可換量であり,Hは線形空間の要素に作用するエルミート演算子となる。このHをハミルトニアン演算子,あるいは単にハミルトニアンという。状態を表す波動関数ψの時間的変化はシュレーディンガー方程式,
iℏψ=Hψ
によって与えられる(ħは,プランク定数を2πで割ったもの)。座標qiとしてデカルト座標xiを用いるならば,ハミルトニアンは,で与えられる。Hは系のエネルギーに対応する量(演算子)であり,その固有値E1,E2,……は系のエネルギー準位を与える。
執筆者:宮沢 弘成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報