アメリカの推理作家。さまざまな職業を転じたのち、ピンカートン探偵局の探偵となり、そのときの経験を多くの作品に生かしている。1920年代からパルプ・マガジンの『ブラック・マスク』誌に短編を発表し始め、長編『血の収穫』(1929)で売り出し、彼の最高傑作といわれる『マルタの鷹(たか)』(1930)でその地歩を固め、ハードボイルドの旗手の1人となった。ここに現れる私立探偵サム・スペードSam Spadeも、またピンカートン探偵局をモデルにしたと思われるコンチネンタル・オプ探偵局の名もない探偵も、いかにもハードボイルドらしい非情なタフ・ガイである。ときには悪すれすれの線を歩み、皮肉屋ではあるが友情と真実に対しては忠実であり、政治や社会の腐敗には敢然と立ち向かっていく状況を、簡潔な文体で展開した。また映画の台本も書いた。彼はマルクス主義者であり、1930~40年代、社会運動に参加、赤狩りの時代には投獄される(1951)など迫害を受けた。劇作家L・ヘルマンは1930年以来彼の愛人であり、彼女の文学的影響は大きかった。
[梶 龍雄]
『『血の収穫』(河野一郎訳・中公文庫/田中西二郎訳・創元推理文庫)』
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アメリカの探偵小説作家。私立探偵だった経験を生かし,私立探偵コンティネンタル・オプ(コンティネンタル社探偵)やサム・スペードの活躍する《血の収穫》(1929),《マルタの鷹》(1930)などを発表。なぞ解きではなく,人間存在の不条理を乾いたタッチで描くハードボイルド派の代表的作家となった。なお劇作家L.ヘルマンは彼の生涯の〈恋人〉であり,彼から大きな文学的影響をうけた。
執筆者:島田 太郎
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