バンド(英語表記)band

翻訳|band

精選版 日本国語大辞典 「バンド」の意味・読み・例文・類語

バンド

〘名〙 (band)
[一]
① 皮革・布などでつくった平たいひもや帯。また、帯状のもの。ベルト
※紅毛雑話(1787)一「鼻帯 〈略〉其紐をノイスバンドといふ、ノイスは鼻、バンドは帯の蛮語なり」
② 洋装で、腰に締める帯。ベルト。
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉電影「鶸(ひわ)色絹の網紐をバンドウ代りに仰々しく房(ふっ)さりと締めてゐた」
③ 製本・装丁で、大判の表紙の背につけられる横線の隆起。西欧の羊皮紙や厚手の紙を使った本で各折り丁を麻糸でからげとじにした部分の名残りで、今日ではボール紙の小片などを心にしてつける。
④ 電波の周波数帯のこと。
⑤ 登山で、岸壁の側面を横に帯のようにからんだ階段状の場所。〔登山技術(1939)〕
[二] 一組の人々。一団。特に楽団。ふつう軽音楽演奏の楽団。また、その演奏。
あめりか物語(1908)〈永井荷風〉酔美人「折からの音楽(バンド)につれて」

バンド

〘名〙 (bund) 埠頭(ふとう)。特に、東洋の港町についていう。
※支那游記(1925)〈芥川龍之介〉上海游記「漢口のバンドを歩いてゐたら」

バンド

〘名〙 ⇒バウンド

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デジタル大辞泉 「バンド」の意味・読み・例文・類語

バンド(band)

物を固定させるための、ひも状のもの。「時計のバンド
洋装に用いる、皮・布製などの腰帯。ベルト。
登山で、岩壁の途中にある帯状に張り出した部分。
周波数帯。
軽音楽などの、楽団。楽隊。「ジャズバンド
[類語](1)(2ベルト/(5楽団

バンド(bund)

(アジア諸国で)埠頭ふとう波止場。築堤・堤防。また、港町の海岸通り

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改訂新版 世界大百科事典 「バンド」の意味・わかりやすい解説

バンド
band

楽団あるいは楽隊と訳す。器楽合奏団のことであるが,今日ではおもに,管楽器を主体とする合奏団,またはジャズをはじめとする民衆的あるいは民俗的な合奏団(編成はさまざま)を指す語として用いる。

 上記の英語あるいはフランス語のbandeは,もともと集団,とくに軍隊のそれを意味していたが,合奏団をこれになぞらえたのは17世紀からで,フランスの〈王の24人の弦楽合奏隊Les vingt-quatre violons du roi〉が〈グランド・バンドLa grande bande〉と呼ばれ,これにならったイギリスのチャールズ2世の楽団も〈The King's Private Band〉と呼ばれるようになった。ここではオーケストラに近い意味であったが,イギリスではやがて,バンドという言葉は〈ブラス・バンド〉〈ミリタリー・バンドmilitary band〉に代表されるようになった。ブラス・バンドは金管合奏(打楽器を含む)の意味である。ミリタリー・バンドは軍楽隊を意味すると同時に,ブラス・バンドに木管楽器を加えた編成,すなわち吹奏楽団を意味した。今日では吹奏楽団(吹奏楽)は単にバンド,あるいはウィンド・バンドwind bandと呼ぶ。

 アメリカでは19世紀末に黒人たちの管楽器によるバンド演奏が盛んになり,街頭での行進曲ダンス音楽に始まって,やがてジャズを生むこととなった。ジャズ・バンド以後,タンゴ・バンド,ロック・バンドあるいはダンス・バンドなどのように,バンドという語はポピュラー音楽の分野で,その編成を問わず広く使われている。なおジャズでは,小編成のバンドはコンボcomboと呼んでビッグ・バンドと対比的に扱うことがある。
執筆者:

バンド
band

もともと集団を指す言葉であるが,文化人類学の用語としてはもっとも未発達な進化段階の社会組織を意味する。衣食住のための物質文化もきわめて単純であり,また生産,保存貯蔵,運搬などの技術も未発達な集団で,ほぼ採集・狩猟に生計を依存し,動植物資源を追って季節的に移動する。生活単位は夫婦とその子どもからなる核家族で,資源が豊富なときは一時的に30人から100人ほどの集団をつくるが,また家族単位で離散してしまう。旧石器時代以来,採集狩猟生活者の多くはこの生活様式であり,そこではリーダーに率いられる一時的な狩猟集団以上の組織はない。政治的経済的な集団組織は家族をこえて存在しないのが,バンド段階の社会の特徴である。やがて生産力の向上に対応して,親族組織,村落組織などが育ち,リネージ組織や首長制をもつ部族段階に移行する。狩猟民でも北西アメリカ・インディアンのように資源に恵まれた地域では首長制に達しているが,本格的な社会進化は農耕,牧畜の開始による。
採集狩猟文化
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バンド」の意味・わかりやすい解説

バンド
band

アフリカや北アメリカ,オーストラリアなどの狩猟採集民に多くみられる,政治的・社会的組織の最も単純な形態。通常ホルド hordeと同義的に用いられているが,恒常的なバンドをホルドとして,他と区別することもある。ホルドは本来,中央アジアの遊牧民集団に対して適用されたものであり,今日ではバンドという名称のほうが広く用いられている。数家族の結合からなる通常 100人に満たないきわめて小規模の社会単位で,一定の領域内で移動生活を営む。生業基盤が弱いため,生活は成員の相互援助によって支えられている。成員は互いになんらかの血縁的つながりをもっていることが多いが,親族の高度な組織化は通常みられない。一つのバンドは独立した政治単位で,これより広い社会的統一はないのが普通であるが,儀礼その他の目的でいくつかのバンドが集結することもまれにある。

バンド

ベルト」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「バンド」の意味・わかりやすい解説

バンド

ホルドhordeとも。採集狩猟民の間にみられる移動的な地域集団のこと。少数の家族が構成する小規模のものから200〜300人にも及ぶものまである。キャンプを張りながら季節の変化に応じ食料を求め一定領域内の移動生活をする。
→関連項目アメリカ・インディアンボトクード

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岩石学辞典 「バンド」の解説

バンド

色や組織が隣接する地層と異なる薄い地層の一般的な名称.石炭または砂岩の中にある頁岩などの剥離面をいうことがある.実際には二次元的な表現として岩石の表面にのみ使用される[Fay : 1920].成因的な意味は含まれず,火成岩のlayeringや堆積岩のbeddingとは区別されて用いられる.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バンド」の意味・わかりやすい解説

バンド
ばんど

ザ・バンド

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世界大百科事典(旧版)内のバンドの言及

【バンド】より

…楽団あるいは楽隊と訳す。器楽の合奏団のことであるが,今日ではおもに,管楽器を主体とする合奏団,またはジャズをはじめとする民衆的あるいは民俗的な合奏団(編成はさまざま)を指す語として用いる。 上記の英語あるいはフランス語のbandeは,もともと集団,とくに軍隊のそれを意味していたが,合奏団をこれになぞらえたのは17世紀からで,フランスの〈王の24人の弦楽合奏隊Les vingt‐quatre violons du roi〉が〈グランド・バンドLa grande bande〉と呼ばれ,これにならったイギリスのチャールズ2世の楽団も〈The King’s Private Band〉と呼ばれるようになった。…

【ベルト】より

…バックル形式やフック形式の留具を用いることが多い。バンドbandとも呼ばれるが,これはウエストバンド,帽子のハットバンド,タキシードのカマーバンド(飾り腹帯)のように,衣服や帽子などに付属した独自の形態をしたものを指すことが多い。皮革,織物,編物,金属,合成樹脂などでつくられる。…

【マントヒヒ】より

…日中はふつう30~90頭程度の集団をつくって移動,採食を行う。この集団はバンドbandと呼ばれ,その構成員は固定的である。夜間の泊り場や水場の付近では,いくつかのバンドが集まって,ときには750頭にも達する大集団をつくることがある。…

【採集狩猟文化】より

…採集狩猟社会の人口密度は希薄で,食糧資源にもっとも恵まれた環境に住む民族でも1km2あたり1人に満たず,大部分の社会は0.5~0.1人,または場合によってはそれ以下にとどまっている。居住をともにする集団(バンド)の大きさにも限界があり,それは数十人から100人前後までの,親族関係でつながる家族の集合によって形成されている。バンド間には婚姻を通じて親族関係が結ばれているが,バンドを超えたより大きな集団や統合機構は存在しない。…

【ネグリト】より

…装身具が好まれ,女性は首輪,腕輪などをつけ,すすや石灰で化粧する。社会生活の特徴としては,政治的統一のないいくつかの居住域に分かれ,それぞれのグループは多くのバンド(移動集団)に分かれて移動の生活をする。このバンドが政治,経済,社会の重要な単位である。…

※「バンド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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