パンドラの箱(読み)パンドラのはこ

故事成語を知る辞典の解説

パンドラの箱

さまざまな災いを引き起こす原因となるもののたとえ。

[使用例] この竜宮のお土産も、あの人間のもろもろのの種の充満したパンドラの如く、乙姫の深刻な復讐、或いは懲罰の意を秘めた贈り物であったのか[太宰治*お伽草紙|1945]

[使用例] この世界はいわば、地殻にじこめられたパンドラのはこなのよ。そして私たちはこれからその中心を通り抜けようとしているわけ[村上春樹*世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド|1985]

[由来] ギリシャの詩人、ヘシオドスの「仕事と日」に出てくる話から。太古の昔、人間たちは、神、プロメテウスによって火を使うことを教えられました。これによって人間たちの暮らしは豊かになりましたが、同時に、火を用いて争いをするようにもなりました。そこで、全能の神、ゼウスは、人間たちを懲らしめるために、パンドラという女性に箱(本来は壺)を持たせて、人間界へと送り込みます。絶対に開けてはいけないと言われていたその箱を、好奇心にかられてつい、開けてしまう彼女。すると、中から疫病、犯罪、悲しみなどなど、ありとあらゆる災いが飛び出してきました。慌てたパンドラが箱を閉めた結果、箱の中には「希望」だけが残された、ということです。

[解説] ❶火の使用は科学技術の源。技術が発展すると災いも広がっていくという、現代の私たちが直面している大問題が、紀元前八~七世紀のヘシオドスによって、早くも語られていたのは、とても興味深い事実です。❷現在では、「パンドラの箱を開ける」の形で、「災いを招くきっかけを作る」ことを指してよく使われます。

〔英語〕Pandra's box.

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精選版 日本国語大辞典の解説

パンドラ の 箱(はこ)

ギリシア神話で、ゼウスがパンドラに渡した箱。あらゆる悪・不幸・禍を封じ込めてあった。彼女が好奇心からこの箱を開けたので、地上には不幸が広がり、「希望」だけが箱の底に残ったという。
※宣言(1915)〈有島武郎〉「かくて、小林の家庭は一箇の雑然たるパンドラの箱だ」

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デジタル大辞泉の解説

パンドラ‐の‐はこ【パンドラの箱】

ゼウスパンドラに持たせた、あらゆる災いの詰まった箱(本来は壺)。彼女が地上に着いたとき好奇心から開けたところ、すべての災いが地上に飛び出したが、急いでふたをしたので希望だけが残ったという。
[補説]作品名別項。→パンドラの箱

パンドラのはこ【パンドラの箱】[戯曲]

《原題、〈ドイツ〉Die Büchse der Pandoraウェデキントによる戯曲。1904年発表。「地霊」とあわせてルル2部作と呼ばれ、ベルクのオペラ作品「ルル」の原作として知られる。

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とっさの日本語便利帳の解説

パンドラの箱

ゼウスはすべての悪を封入した箱を地上最初の女性パンドラに贈り、決して開けてはならないと命ずる。パンドラが地上で好奇心から箱を開くと、あらゆる災禍が外へ飛び出したが、彼女があわててをしたので「希望」だけがに残った。

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世界大百科事典内のパンドラの箱の言及

【パンドラ】より

プロメテウスが天上の火を盗んで人間に与えたとき,怒ったゼウスは,人間どもにその恩恵の代償を支払わせるべく,鍛冶の神ヘファイストスに命じて粘土で女を造らせ,他の神々から女性としての魅力や美しい衣装などを授けられた彼女をパンドラ(〈すべての贈物を与えられた女〉の意)と名づけて地上に下し,プロメテウスの弟のエピメテウスに与えた。このとき彼女は神々からのみやげとして1個の壺(いわゆる〈パンドラの箱〉)を持参していたが,好奇心にかられた彼女がそのふたを開けると,中からあらゆる災いが飛び出して四方に散った。ただひとつ〈希望〉だけは,急いで彼女がふたを閉じたため,壺の底に残ったという。…

※「パンドラの箱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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