フランシウム(英語表記)francium

翻訳|francium

デジタル大辞泉 「フランシウム」の意味・読み・例文・類語

フランシウム(francium)

アルカリ金属元素の一。同位体はすべて放射性アクチニウムの崩壊生成物中から発見された。性質セシウムに似る。元素記号Fr 原子番号87。

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精選版 日本国語大辞典 「フランシウム」の意味・読み・例文・類語

フランシウム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] francium ) アルカリ金属元素一つ。原子番号八七番の元素。記号は Fr 同位体はすべて放射性。

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改訂新版 世界大百科事典 「フランシウム」の意味・わかりやすい解説

フランシウム
francium

周期表第ⅠA族に属するアルカリ金属元素の一つ。いわゆるエカセシウムekacesiumとしてセシウムの下に位置すべき重アルカリ金属元素(原子番号87)を天然のセシウム化合物から濃縮分離しようとする試みは古くから行われ,安定同位体の発見に成功したとして,バージニウムvirginium,モルダビウムmoldavium,アルカリニウムalkaliniumなどの名称が与えられたことがあるが,これらは後の研究によってすべて誤りであることが判明し,否定された。1939年フランスのプレーM.Perey(1909-75)が,89番元素アクチニウムの精製試料について,α粒子の放出による崩壊を確かめ,さらにその崩壊生成物がβ⁻放射体であり,バリウム(Ⅱ),鉛(Ⅱ),セリウム(Ⅳ)の難溶性塩とは共沈しないが,セシウム(Ⅰ)の難溶性塩とはよく共沈することを確認し,この性質と放射能測定の結果から下式のような分岐崩壊を明らかにして,87番元素の存在を証明した。

この87番元素は,発見者の生国フランスにちなんでフランシウムと命名された。フランシウムは天然には,天然放射系列の一つであるアクチニウム系列に属する質量数223の最長寿命同位体アクチニウムK(AcK)がウラン235の崩壊生成物としてウラン鉱物中に含まれるが,半減期22分で存在量はきわめて少ない。人工放射性核種は206Frから223Frまで合計17種知られているが,いずれも半減期が20分以下ときわめて短寿命であるため,フランシウムの金属単体,フランシウム化合物の集合体としての物理的性質は,223Frについて融点27℃,沸点677℃のほかは,ほとんど知られていない。化学的性質はトレーサー量のものについてのみ知られ,沈殿反応,溶解度,イオン交換などにおける挙動の放射能による研究から,セシウムにきわめて近く,最重アルカリ金属元素に想定されるものとよく一致することが確認されている。すなわち,原子価は+1価が安定で,水溶液中では水和Fr⁺イオンとして挙動し,過塩素酸セシウム,クロロ白金酸セシウム,種々のヘテロポリ酸セシウム,クロロスズ酸セシウムなどの難溶性セシウム塩と共沈する。
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化学辞典 第2版 「フランシウム」の解説

フランシウム
フランシウム
francium

Fr.原子番号87の元素.電子配置[Rn]7s1の周期表1族アルカリ金属元素.天然に質量数223(半減期22 min,β 崩壊)がアクチニウム系列中に存在する.慣用名でアクチニウムK(AcK)とよばれる.このほか,質量数199~232の人工放射性核種が知られているが,いずれも半減期は,212Fr(20 min),222Fr(14.2 min)を除いて5 min 以下である.D.I. Mendeleyev(メンデレーエフ)が1871年にeka-caesiumと暫定名で予言した元素.その後,発見の努力が続けられ,いろいろな元素名が提案されたが確認されず,1939年になってようやくキュリー研究所のM. Perey女史が,227Ac のα崩壊の娘核種として 223Fr を発見した.崩壊系列中の位置から古典的にはAcKとよばれたが,1946年にPereyの母国にちなんでfranciumと命名され,1949年にIUPACが元素名,元素記号を承認した.同位体核種のなかでもっとも半減期が長い 223Fr がウラン鉱物のなかに,崩壊系列中で放射平衡が成立するため含まれているが,存在量は非常に少ない.フランシウムの重い同位体は,ウランあるいはトリウムに高エネルギーの陽子を照射することによりつくられ,軽い同位体は,重イオンにより金,テルル,鉛中で起こる核反応によって得られる.融点27 ℃,沸点677 ℃.第一イオン化エネルギー4.08 eV.周期表の左下に位置するもっとも陽性の元素である.トレーサー量しか得られないので,性質はトレーサー量で調べられている.水溶液中では一価の原子価をとる.化学的にはセシウムに似て活性が強いCsClO4,Cs2[PtCl6]などと共沈する.[CAS 7440-73-5]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フランシウム」の意味・わかりやすい解説

フランシウム
ふらんしうむ
francium

周期表第1族に属し、もっとも重いアルカリ金属元素。周期表中、いわゆるエカセシウムとして、セシウムの下に位置すべき87番元素は、その性質が理論的に予測され、天然にもみいだそうという試みがいくつか行われた。たとえば、安定同位体を発見したとして、バージニウム、モルダビウムなどの名称が与えられたが、これらはのちに誤りとして否定されている。1939年に至り、フランスのペレイMarguerite Perey(1909―1975)は、アクチニウム227のα(アルファ)崩壊によって質量数223の87番元素が生成することを証明した。フランシウムの名は、発見者の生国にちなんだものである。

 フランシウム223はβ(ベータ)崩壊性で、半減期21.8分。このほか17種の放射性同位体が人工的に得られているが、半減期はいずれも20分程度で、トレーサー量しか得られていない。化学的性質はセシウムと類似しているが、寿命が短いため、物理的性質の詳細は不明である。

[鳥居泰男]



フランシウム(データノート)
ふらんしうむでーたのーと

フランシウム
 元素記号 Fr
 原子番号 87
 原子量  (223)
 融点   27℃
 沸点   677℃
 密度   ―

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フランシウム」の意味・わかりやすい解説

フランシウム
francium

元素記号 Fr ,原子番号 87。周期表1族,アルカリ金属元素の1つ。天然には質量数 223 (半減期 22分,β壊変) のアクチニウム系核種が存在する。その他 17種の人工放射性同位体が知られているが,いずれも短寿命核種である。化学的性質は重アルカリ金属元素とよく類似している。 1939年 M.ペレイはアクチニウム 227のα壊変で生成するアクチニウムKという物質を研究し,これが 87番元素であることを確かめ,祖国フランスにちなんでフランシウムと名づけた。これがフランシウム 223である。

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百科事典マイペディア 「フランシウム」の意味・わかりやすい解説

フランシウム

元素記号はFr。原子番号87。アルカリ金属元素の一つで,放射性。1939年フランスのプレーが227Acの崩壊系列から発見,国名にちなんで命名。最も長い半減期をもつ同位体は223Fr(22分)。ウラン鉱物中にきわめてわずかに存在。化学的性質はアルカリ金属,特にセシウムによく似る。

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