超アクチノイド人工放射性元素の一つ。原子番号114、元素記号Fl。1998年にロシアで初めて合成され、2009年にアメリカ、2010年にドイツでも合成が確認された。暫定名称ウンウンクアジウムununquadium、暫定記号Uuqとされていたこの元素に対して、2012年5月30日、国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)は、元素名をfleroviumとし、元素記号をFlとする正式決定を発表した。命名理由はロシアのフレロフ核反応研究所(英語名 Flerov Laboratory of Nuclear Reactions)の伝統と名誉によるとされ、その創設者であるロシアの核兵器開発者ゲオルギー・フリョーロフГеоргий Николаевич Флёров/Georgy Nikolayevich Flyorov(1913―1990)個人の業績に属するものではない、とされている。同年6月、日本化学会は日本語元素名をフレロビウムとした。
2012年までに、94番プルトニウムと20番カルシウムとの核衝突実験で質量数285から289までの同位体の生成が報告されている。いずれもきわめて不安定であり、112番コペルニシウムへα(アルファ)崩壊するが、確認された半減期は長くても数秒程度とされている。また、同時に正式名称が決定された116番リバモリウムのα崩壊によっても生成する。
フレロビウム原子核の陽子の個数(原子番号)114は、核を特に安定化する「魔法数」の一つに相当しており、中性子の魔法数の一つである184との組合せになるフレロビウム298は特に長い半減期をもつと予想されるが、まだ合成されていない。周期表では14族、鉛の下に位置し、化学的にはかなり安定ではないかとも予想されている。
[岩本振武]
Fl.原子番号114の元素.電子配置[Rn]5f146d107s27p2(推定)の14族元素.周期表で鉛の下に位置する(エカ鉛).常温で固体と思われる金属元素.短寿命人工元素.1999年1月にロシアのドゥブナの原子核合同研究所(Joint Institute for Nuclear Research)内のフレロフ核反応研究所(Flerov Laboratory of Nuclear Reactions)で,244Puを標的として48Caで衝撃して,中性子3個と21 s で112番元素285Cn(コペルニシウム)にα崩壊する質量数289の核種1個が得られたと発表された.この崩壊鎖は確認されず,同年6月の再実験で観測された質量数289の核種が最初の確実な合成とされる.同年7月には,日本の理化学研究所のチームが協力して242Puを標的として48Caで衝撃して中性子3個と約5 s でα崩壊する質量数287の核種を得たとしている.s のけたの半減期は超重元素としてはきわめて長く,理論的に予想されていた二重魔法数による“安定の島(Island of stability)”の存在を裏づけるものとされる.質量数285~289の核種が得られており,289Flがもっとも安定で,半減期2.7 s(α崩壊).2012年5月30日,IUPACは,共同研究を行った原子核合同研究所とアメリカのローレンス・リバモア国立研究所の提案に従って,元素名フレロビウム,元素記号Flと決定した.G.N. Flerov(フレロフ)は,実験の行われた核反応研究所の創始者で,研究所名は1991年から,フレロフを冠している.暫定名ウンウンクアジウムと記号Uuqは今後使用されない.[CAS 54085-16-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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