プロトアクチニウム

精選版 日本国語大辞典 「プロトアクチニウム」の意味・読み・例文・類語

プロトアクチニウム

〘名〙 (protactinium) 天然放射性元素一つ記号は Pa 原子番号九一。原子量二三一・〇三五八八。アクチノイドの一つで周期表3族に属す。

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デジタル大辞泉 「プロトアクチニウム」の意味・読み・例文・類語

プロトアクチニウム(protactinium)

アクチノイドに属する放射性元素の一。単体は灰色の金属。ウラン鉱石中から発見された。元素記号Pa 原子番号91。原子量231.0。

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化学辞典 第2版 「プロトアクチニウム」の解説

プロトアクチニウム
プロトアクチニウム
protactinium

Pa.原子番号91の元素,電子配置[Rn]5f 26d17s2の周期表3族アクチノイド元素.原子量231.03588(2).天然には 231Pa が存在する.質量数212~240の同位体核種が知られている.231Pa はアクチニウム崩壊系列に属する(半減期3.276×104 y,α崩壊).ウラン系崩壊系列には 234Pa(UZ,半減期6.70 h,β 崩壊)と 234mPa(UX2,半減期1.175 min,β 崩壊,準安定状態)があり,いずれもウラン鉱物中に存在する.1913年にK. FajansとO.H. Göhringが 234Pa(UX2)を発見,寿命の短いところからラテン語の“短い”brevisをとってbreviumと名づけた.長寿命の 231Pa は1917年にO. Hahn(ハーン),L. Meitner(マイトナー),独立にFajans,さらにF. Soddy(ソディ)らによってピッチブレンド中に発見された.α崩壊によりアクチニウムになるので,その前という意味で,ギリシア語の“最初”πρωτο(protos)からプロトアクチニウム(protoactinium)と名づけられたが,1949年にIUPACにより現在のprotactiniumに短縮された.1937年にA. GrosseがPa2O5ヨウ化物PaI5にかえ,真空中で,電流を通じて高温にしたフィラメント上で熱分解してはじめて金属を得た.単体は銀灰色金属で,正方晶のα相と1167 ℃ 以上で体心立方格子のβ相の二相がある.密度15.37 g cm-3(25 ℃,計算値).融点1840 ℃.酸化数3,4,5.空気中ではかなり安定で酸化されにくい.1100 ℃ 以上で酸素と反応してPa2O5(無色)を生じる.黒色のPa O2も存在する.PaO2とH2-HF混合系の反応でPaF4(褐色)が得られる.ハロゲン化物には,ほかにPaF5,PaCl4,PaCl5,PaBr5,PaI4,PaI5などがある.水溶液中で容易に加水分解してコロイド状になる.[CAS 7440-13-3]

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改訂新版 世界大百科事典 「プロトアクチニウム」の意味・わかりやすい解説

プロトアクチニウム
protactinium

周期表第ⅢA族に属するアクチノイド元素の一つ。1918年ドイツのO.ハーンら,およびこれと独立にイギリスのF.ソディらはピッチブレンド中から分離することに成功した。このとき分離したものは長寿命(半減期3×104年)の231Paで,227Acの親にあたるものであり,アクチニウムに先立つ元素という意味で命名された。これに対し,同位体の234mPaは,短寿命でUX2と呼ばれ,すでに1913年ファヤンスK.Fajansによって見いだされていたが,半減期が1.18分と短いために,91番元素であると確認されていなかった。質量数225~235および237が知られており,いずれも放射性である。天然には231Pa(アクチニウム系列),234mPa(ウラン系列),234Pa(ウラン系列)の三つがあり,231Pa以外は短寿命。ウラン鉱物中に存在するが,231Paの存在量はきわめてわずかで107分の1にすぎず,ほとんど分離はむずかしい。コンゴ産のウラン鉱抽出残渣60tから12段階の工程をへてプロトアクチニウム約125gが分離されたことがある。灰色金属で,展性があり,硬さはウランと同じ程度。空気中ではかなり安定であるが,ゆっくりと表面が酸化される。水素とは250℃で水素化物をつくる。ヨウ素とはヨウ化物をつくる。5価が普通で,4価の化合物もある。金属はハロゲン化物を高真空中で熱分解するか,フッ化物をバリウムで還元してつくられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロトアクチニウム」の意味・わかりやすい解説

プロトアクチニウム
ぷろとあくちにうむ
protactinium

アクチノイドに属する放射性元素の一つ。原子番号91、元素記号Pa。天然にはウラン・ラジウム系列およびアクチニウム系列中にごくわずかに存在し、1913年から1918年にかけて発見と確認が続けられ、α(アルファ)崩壊でアクチニウムに変わることからプロトアクチニウムと命名された。アクチニウム系列中の質量数231同位体の約3万年を除くと、その後人工合成されたものも含め、いずれも半減期は短い。ウラン鉱物中に含まれるが、その化学的挙動は複雑である。単体は灰色の金属で展性に富み、化合物では5価または4価の陽イオンとなることが多い。質量数233の同位体は、天然のトリウムから核燃料となるウラン233を得る際の重要な中間体となる。

[岩本振武]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロトアクチニウム」の意味・わかりやすい解説

プロトアクチニウム
protactinium

元素記号 Pa ,原子番号 91,原子量 231.03588。周期表3族,アクチノイド元素の1つ。質量数 231の長寿命の天然放射性同位体 (半減期3万 4300年) が 1917年 O.ハーンと L.マイトナーにより,またほとんど同時に F.ソディと J.クランストンにより独立に発見された。天然にはウラン鉱物中に質量数 234のウラン系核種と,質量数 231のアクチニウム系核種が存在するが,このほか 12種類の人工放射性核種の存在が知られている。トリウムを中性子照射して得られるプロトアクチニウム 233は,核燃料となりうるウラン 233の親核種で,非常に重要である。酸化数4,5で,化学的性質はタンタルに類似している。

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百科事典マイペディア 「プロトアクチニウム」の意味・わかりやすい解説

プロトアクチニウム

元素記号はPa。原子番号91,原子量231.03588。密度15.37,融点1840℃。アクチニド元素の一つ。1918年O.ハーンとマイトナーがピッチブレンド中から231Paを初めて発見,α崩壊によりアクチニウムを生じる母体元素ということで命名された。灰色の金属で,空気中でかなり安定。天然にはウラン鉱物中に微量存在する。最も半減期の長いものは231Pa(3.43×104年)。
→関連項目マイトナー

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