ヘルパンギーナ (読み)へるぱんぎーな(英語表記)herpangina

  • (子どもの病気)
  • (感染症)
  • ヘルパンギーナ Herpangina
  • ヘルパンギーナ(コクサッキーウイルス,エコーウイルス,エンテロウイルス)

知恵蔵miniの解説

主に乳幼児に発症する、発熱と口腔粘膜に現れる水疱発疹を特徴とする病気エンテロウイルスと呼ばれるウイルス群による感染症で、主に「コクサッキーウイルス」が原因となって発症する。いわゆる夏風邪の一種で6月~9月ごろにかけて流行する。1歳くらいからかかりやすくなり、多くは3~5歳以下に見られる。感染から発症までは3~5日、突然38~40度の高熱が出て、炎症を起こし赤くなった喉の奥・口蓋垂の根元付近に小さな水疱が数個~十数個できる。予防・治療薬はなく、対症療法として解熱剤を用いることもあるが、特に治療をしなくても1週間ほどで自然に治癒する。

(2013-8-1)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

百科事典マイペディアの解説

39℃前後の発熱があり,咽頭(いんとう),口内粘膜,などに小さい水疱ができ,潰瘍(かいよう)となって痛む病気。夏,幼児に多く,4〜5日でなおる。病因はウイルス(コクサッキーA)で,治療は発熱に対する対症療法。食事は牛乳流動食がよく,しみるもの等刺激物は避けたほうがよい。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 コクサッキーウイルスA群の感染でおこる夏かぜの1つです。
●かかりやすい年齢
 かかるのは、90%以上が5歳以下の乳幼児です。
●流行する季節
 晩春から夏にかけて多発します。
[症状]
 3~5日の潜伏期を経て発病します。急に39℃前後の熱が出て、ふきげんになって食欲がなくなり、嘔吐(おうと)したりします。年長児の場合は、のどの痛みのほか、腹痛や頭痛を訴えることがあります。
 のどの前口蓋弓(ぜんこうがいきゅう)から軟口蓋(なんこうがい)にかけての粘膜(ねんまく)に、直径2mm前後の小水疱(しょうすいほう)(水ぶくれ)が数個から十数個みえます。また、これがつぶれて小潰瘍(しょうかいよう)になったものが混在していることもあります。
 熱は2~3日で下がり、のどの潰瘍も少しおくれて回復し、およそ1週間ですっかり治るのがふつうです。
[治療]
 有効な薬はないので、解熱薬(げねつやく)を用います。
 やわらかく、味の薄い、冷たい食事にします。乳幼児は、食欲不振と高熱のために脱水症(だっすいしょう)におちいり、輸液(点滴)が必要になることもあります。
[予防]
 病人の咽頭分泌物(いんとうぶんぴつぶつ)や糞便(ふんべん)中のウイルスが飛沫感染(ひまつかんせん)、あるいは経口感染(けいこうかんせん)します。予防接種がないので、手洗いやうがいなどの一般的な予防法を守るほかはありません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

大辞林 第三版の解説

口腔内後端の咽頭に開く部分にできる急性で炎症性の小さな潰瘍かいよう。コクサッキー A 群ウイルスの感染によりおこる。高熱が数日続いて下がって後、数日で口腔内の症状もなくなる。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

おもにコクサッキーA群のウイルスの感染によっておこる乳幼児の夏かぜの一種で、咽頭(いんとう)粘膜に小水疱(すいほう)を生じ、のどが狭まるところから水疱性口峡炎ともよばれる。5歳までの乳幼児が90%を占め、晩春から夏にかけて多発する。ウイルスは咽頭分泌物や糞便(ふんべん)中に存在し、飛沫(ひまつ)感染あるいは経口感染する。
 潜伏期は3~5日で、急に39℃前後の熱が出て2~3日続く。不機嫌になり、食欲がなく、嘔吐(おうと)したりする。すこし年長児の場合には、咽頭痛や嚥下(えんげ)痛のほか、腹痛や頭痛を訴える。他覚的には、咽頭粘膜が発赤して腫(は)れ、咽頭炎を呈するが、特徴的には前口蓋弓(こうがいきゅう)から軟口蓋にかけての粘膜に、直径2ミリメートル前後の灰白色の小水疱が数個から十数個みられる。この小水疱が破れて小潰瘍(かいよう)になったものが混在していることもある。
 一般に軽症で予後はよく、1週間以内に症状はなくなる。病原ウイルスに効く薬はなく、解熱剤など対症療法を行う。乳幼児では高熱による拒食のため脱水症をおこし、輸液を必要とすることもある。したがって、食事は軟らかで味の薄い冷たいものを与える。ワクチンなど的確な予防対策はまだないので、患者との接触を避けるようにする。[柳下徳雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (herpangina) ウイルスの感染によって起こる乳幼児の病気。特有な症状として、小さな水疱や潰瘍(かいよう)が咽頭の前面に生じ、夏風邪の原因となることがある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

内科学 第10版の解説

2)ヘルパンギーナ(herpangina):
ヘルパンギーナは突然の発熱と咽頭痛,嚥下痛で発症し,軟口蓋中心に発赤を伴う直径2~4 mmの小水疱が1~数個認められ,水疱は潰瘍化する.病変は口腔後方に集中し,ヘルペスウイルスによる口内炎のように歯肉炎を伴うことがない.鼻かぜ様の上気道症状はない.通常1週間で治癒する.原因ウイルスはA群コクサッキーウイルス(A2~A6,8,10,B1~5),エンテロウイルス9,16,17などである.毎年夏季に1歳をピークに5歳未満の小児に流行し,年間患者数は130万人程度と推定されている.ヘルパンギーナは感染症法における五類感染症・定点把握疾患であるが,学校伝染病には含まれていない.[中込 治]
■文献
Palacios G, Casa I, et al: Human enteroviruses. In: Infectious Diseases 3rd ed (Cohen J, et al eds), pp1528-1538, Mosby-Elsevier, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 夏かぜ疾患のひとつで、熱とともに口腔粘膜に水疱(すいほう)、潰瘍ができ、痛みのため飲んだり食べたりすることが普段より落ちる病気です。夏季(主に4~10月ころ)に多く、幼児を中心に流行します。

原因は何か

 主にコクサッキーA群ウイルスによります。ポリオウイルスやエコーウイルスと同じグループで、これらをまとめてエンテロウイルス、腸管ウイルスとも呼びます。

症状の現れ方

 経口、経気道感染でウイルスが侵入し、3~6日の潜伏期ののち、急に高い熱が出て発病します。熱は1~4日続き、口蓋弓(こうがいきゅう)軟口蓋(なんこうがい)口蓋垂(こうがいすい)に小さな水疱ができ、破れると1~4㎜程度の潰瘍をつくります。これらは4~6日で治りますが、この間、痛みを伴うことが多く、食欲不振や不機嫌になり、よだれが出ます。

 高熱が続いたり、機嫌が極めて悪くなったり、何かいつもとかなり違うような時には、無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)を合併していることもあるので注意が必要です。

検査と診断

 診断に役立つ特別の検査はありません。夏の流行期に口内所見が認められれば診断できます。

治療の方法

 このウイルスに対する特効薬はありません。対症療法が中心になります。

病気に気づいたらどうする

 すぐに小児科医の診察を受けてください。口のなかが痛くて食べることや飲むことが難しくなります。とくに高熱や飲むことができなくなるため、脱水症に注意してください。刺激の少ない、固くない物、たとえばヨーグルトやアイスクリームなどを与えてください。

浅野 喜造

どんな感染症か

 毎年7月ごろをピークとして4歳以下の小児、とくに1歳代に流行することが多い夏かぜの代表疾患です。高熱と口腔内の発疹(のどの奥に紅暈(こううん)で囲まれた小水疱(しょうすいほう)が現れる)が特徴的です。

 原因ウイルスは多種類ありますが、多くはコクサッキーAウイルス(CA)、とくに4、6、10型が多いといわれています。そのほか、CA2、3、5、8、16型、コクサッキーBウイルス、エコーウイルスなども、ヘルパンギーナを起こすことがあります。

症状の現れ方

 2~4日の潜伏期ののち、突然の高熱で発症します。口蓋垂(こうがいすい)(のどちんこ)の上周辺に紅暈を伴った多数の小水疱が認められます。水疱が破れて潰瘍を作ることもあり、幼小児では痛みのために水分摂取が不足し、高熱とも相まって脱水症状を起こすことがよくあります。

 発熱に伴って熱性けいれんを合併することもありますが、一般的に数日の経過で回復し、予後は良好です。まれに無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)心筋炎を合併することがあります。

検査と診断

 高熱と特徴的な口腔内の症状から、ほとんどが臨床的に診断されます。原因ウイルスを特定するには、患者さんの咽頭ぬぐい液、便などからウイルスを直接分離することが最も有効です。最近ではRT­PCR法を用いてウイルス遺伝子(RNA)の検出を行うこともあります。抗体価を測定することもありますが、交差反応(別のものにも反応する)を認めることが多いので一般的ではありません。

 区別すべき病気として、手足口病(てあしくちびょう)、単純ヘルペスウイルスによる口内炎アフタ性口内炎などがありますが、その他の症状なども考慮すれば、臨床症状から診断されることがほとんどです。

治療の方法

 通常、対症療法だけで回復します。飲食ができなくなったり脱水症を併発した場合は、輸液(点滴)を必要とする場合があります。合併症を併発した場合は、入院が必要となる場合があります。

病気に気づいたらどうする

 高熱が出て経口摂取が十分できなくなる場合も多いため、早めにかかりつけの小児科を受診してください。流行時には、うがい、手洗いの励行、患者さんとの接触を避けることなどが予防につながります。ワクチンはありません。

 患者さんは便中に1カ月近くウイルスを排泄していることが多いため、排便あるいはおむつ交換後の手洗いを徹底します。学校、幼稚園、保育所などでは登校・登園停止の疾患にはなっていませんが、その症状から、急性期は自宅での安静が必要です。

多屋 馨子

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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