ペプチドグリカン(読み)ぺぷちどぐりかん(その他表記)peptideglycan

デジタル大辞泉 「ペプチドグリカン」の意味・読み・例文・類語

ペプチドグリカン(peptidoglycan)

多糖類ペプチドからなる高分子原核生物細胞壁を構成する主成分であり、糖鎖とペプチドが架橋した網状構造をもつ。ムコペプチドムレイン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペプチドグリカン」の意味・わかりやすい解説

ペプチドグリカン
ぺぷちどぐりかん
peptideglycan

細菌などの細胞壁の基本構造をなす多糖とペプチドからなる網状巨大分子。ムコペプチドmucopeptide、ムレインmureinともいう。ムレインは主としてドイツ語圏で用いられる。壁(ラテン語murus)に由来する語である。ペプチドグリカンのペプチドはアミノ酸ペプチド結合(-CO-NH-)により結合してできた化合物のこと、グリカンは単糖が脱水結合(脱水縮合)してできた多糖のことである。ペプチドグリカンは特殊な多糖の直鎖がペプチドによって架橋した網状の巨大な分子である。全体として細胞膜全面を包む袋状の構造体(サキュルスという)をつくっている。大部分の原核生物の細胞壁成分で細胞膜を保護し細胞の形態を維持している。糖鎖はN-アセチルムラミン酸(ムラミン酸はアミノ基-NH2カルボキシ基カルボキシル基)-COOHをもつ炭素9個の化合物。N-アセチルとはアミノ基のHがアセチル基-COCH3で置換されていることを示す)とN-アセチル-D-グルコサミン(グルコサミンはグルコースのヒドロキシ基-OHの一つがアミノ基-NH2に置換したもの)がβ(ベータ)-1→4結合(β型についてはヘキソースの項参照。1→4結合は一方の化合物の1番目の炭素と他方の化合物の4番目の炭素のところで結合していることを示す)で繰り返し結合(通常20~140残基)したものが基本である。菌種によりムラミン酸やグルコサミンのアミノ基が置換されていないもの、ムラミン酸がN-グリコリル(CH2(OH)-CO-)化や2-N,6-O-ジアセチル化されているものもある。ペプチド部分はテトラペプチド(アミノ酸が四つ結合したもの)が基本であるが、アミノ酸組成や架橋の様式は菌種によって異なる。

[徳久幸子]

『天児和暢著『写真で語る細菌学』(1998・九州大学出版会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペプチドグリカン」の意味・わかりやすい解説

ペプチドグリカン
peptide glycan

多糖類 (グリカン) に短鎖のポリペプチドが結合した化合物。細菌の細胞壁を構成しているムレインは,ペプチドグリカンの鎖を主体とし,これがグリシン5分子ずつの鎖で横方向につなぎ合わされた構造から成る。またこのグリカンの鎖はNアセチルグルコサミンとNアセチルムラミン酸という2種類の糖誘導体が交互につながったものであり,ポリペプチドのほうは,D型とL型のアミノ酸が交互に4個つながったものである。

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化学辞典 第2版 「ペプチドグリカン」の解説

ペプチドグリカン
ペプチドグリカン
peptideglycan

原核生物の細胞壁構成成分の一つ.網状ポリマーで,縦糸に相当する糖鎖の間をペプチドが横糸のように架橋しており,細胞壁に強度を与えている.ペニシリンやβ-ラクタム系抗生物質は,ペプチドグリカンの合成を阻害する.[CAS 9047-10-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「ペプチドグリカン」の解説

ペプチドグリカン

 多くの原核生物の細胞壁成分で,N-アセチルムラミン酸,N-アセチルグリコシルムラミン酸,D-アミノ酸などを構成成分とする糖ペプチド.二糖ペプチドの反復構造が特徴的.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のペプチドグリカンの言及

【細菌】より

…細胞壁は厚くて剛性があり,細菌の形を一定に保つのに役だつとともに,細胞内の浸透圧を支えるものとして機能している。細胞壁の基本的な骨格をつくっているものはペプチドグリカン(糖とアミノ酸が多数結合した網状巨大分子)である。グラム陽性菌は,グラム陰性菌に比べて,より厚いペプチドグリカン層をもっている。…

【多糖】より

…キチンはさらに線形動物,腔腸動物,そしてカビに分布している。細菌の細胞壁の骨格はペプチドグリカンによって構成される。この多糖部分はN‐アセチルグルコサミンおよびその乳酸エーテルであるN‐アセチルムラミン酸からなる。…

※「ペプチドグリカン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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