ホオジロ(その他表記)long-tailed bunting
Emberiza cioides

改訂新版 世界大百科事典 「ホオジロ」の意味・わかりやすい解説

ホオジロ (頰白)
long-tailed bunting
Emberiza cioides

スズメ目ホオジロ科の鳥。全長約17cm。スズメより少し大きく,全体に赤褐色背面には黒い縦斑があり,眼の後方は黒く,白い眉斑(びはん)と顎線(がくせん)にはさまれて目だつ。のどは灰色。雌は雄よりくり色みが少なく,眼の後方は褐色で,眉斑は淡黄褐色。雄は興奮すると冠部の羽毛を逆立てる。アジア東部に分布し,中国,シベリア南東部,沿海州,朝鮮半島,日本などで繁殖する。日本では薩南諸島以北に分布し,北海道では夏鳥,本州以南では留鳥か漂鳥である。二次林,林縁,川辺などで低木が濃く茂っているところにすみ,道のへり,農耕地を取り巻く生垣,造林地で樹木がやぶ状になってきたようなところにも多く,日本の低地から低山帯にかけ,もっともふつうな鳥の一つである。やぶのある近くの地上雑草種子をついばむ。少しでも異変があれば,すばやくやぶの中へ逃げこむ。体を左右に揺すり,尾羽を小刻みに開閉する。このとき尾羽の外側の白い羽が見える。一夫一妻で繁殖し,雄は強いなわばり性を示す。地上または低木の茂みの中にわん型の巣をつくり,1腹4~6個の卵を産む。雛は昆虫で養われる。冬には小群で見られることが多く,畑地の周辺や山地の草地に小群でねぐらをとる。

本科Emberizidae(英名bunting)は554種を含む大きい科であるが,比較的均一な分類群で,あまり多様化していない。一般にホオジロ亜科,コウカンチョウ亜科およびフウキンチョウ亜科の3亜科に分けられる。前2者は穀物食で,雑草の小粒の種子を拾いとれるように,元が太く,先は鋭くとがったピンセットのようなくちばしをもつ。しかし雛には虫を与える。多くのものは口蓋に骨質の膨らみがあり,穀類のすりつぶしに適応している。フウキンチョウ亜科は昆虫・果実食で,くちばしはいくらか細い。ホオジロ科はオーストラリアや南太平洋の島々を除く全世界に分布しているが,大部分の種は新世界にすみ,とくに南アメリカに多くの種がいる。旧世界にはホオジロ亜科の40種しかいないが,そのうち37種はホオジロ属Emberizaに属している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホオジロ」の意味・わかりやすい解説

ホオジロ
ほおじろ / 頬白
bunting

広義には鳥綱スズメ目ホオジロ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Emberizidaeは、ホオジロ亜科281種、ズキンフウキンチョウ亜科1種、コウカンチョウ亜科37種、フウキンチョウ亜科233種、ツバメフウキンチョウ亜科1種の5亜科131属553種に分類され、そのうちホオジロ亜科のうちの6属40種以外はすべて南・北アメリカに分布している。全長13~23センチメートル。ホオジロ亜科は褐色系でじみであるが、ほかの亜科には赤色系、青色系などの美しい色彩のものが多い。

 種のホオジロEmberiza cioidesはホオジロ亜科に属するホオジロ属38種中の1種である。全長約16.5センチメートル。シベリア南部、日本、中国北部・中部に分布し、山地、平野の比較的明るい林縁、低木林に生息する。夏は昆虫やクモなど、冬は草本類の種子を食べる。背面は赤褐色を帯び、とくに腰の部分は赤みが強い。顔は黒く眉斑(びはん)と頬線(きょうせん)の白色が顕著。尾は長く外側尾羽の白色は飛び立つときに目だち、ホオジロ属の特徴となる。日本では全土にごく普通の鳥で、「一筆啓上つかまつる」「源平ツツジ白ツツジ」と聞きなされる声は風格があり、飼い鳥として好まれた。

 同属のミヤマホオジロE. elegansは全長約15.5センチメートル。日本には冬鳥として渡来し、本州西部、九州には少なくないが、関東地方以北には少ない。対馬(つしま)では繁殖の例がある。眉斑とのどが美しい鮮黄色で、雄の頭上は黒色である。木に止まるとき頭上の羽冠を立てることと、胸にある黒色の三角紋とはこの種最大の特徴である。姿も声もよいので飼い鳥として好まれる。

 ツメナガホオジロとユキホオジロは属が異なる。ツメナガホオジロCalcarius lapponicusは全長約15.5センチメートル。雄の夏羽は頭上、顔、あご、のどが漆黒色で黄白色の眉斑が顕著である。冬羽は頭上に黄褐色斑、背面に黒褐色縦斑がある。後頭に栗(くり)色斑のあることと、後趾(こうし)のつめがヒバリのように長いことがこの種の特徴である。日本には冬季にまれに広い海浜や農耕地に飛来する。ユキホオジロPlectrophenax nivalisは全長約16.5センチメートル。色彩は白と黒を基調として上品である。雄の夏羽は背、肩、中央尾羽、初列風切(かざきり)の前半、三列風切、小翼羽が黒、そのほかは白。冬羽は頭頸(とうけい)部、背、肩が白、黒、淡赤褐色のまだらである。日本には冬季に北海道、本州の日本海側の雪原に飛来するが、数は少ない。

[坂根 干]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホオジロ」の意味・わかりやすい解説

ホオジロ
Emberiza cioides; meadow bunting

スズメ目ホオジロ科。全長 17cm。雄は背面,下面とも赤褐色で,背面には黒褐色の縦斑があり,顔は黒く,喉は灰色で,白色の眉斑と顎線が顕著である。雌は全体に色が淡く,また眉斑と顎線は淡褐色で,顔も褐色で黒くない。中央アジア東部からシベリア南部,モンゴル中国東アジアサハリン島にかけて分布し,日本では留鳥として東北地方から屋久島種子島まで生息する。サハリンと北海道では夏鳥(→渡り鳥)で,冬季には南部に移動する。日当たりのよい土地を好み,おもに種子食で畑,原野,草原,低木林,下生えの茂った疎林などにすむ。さえずりは複雑であるが,「一筆啓上仕候(いっぴつけいじょうつかまつりそうろう)」と鳴くと聞きなされている。地鳴きは「ちっちっちっ」と鳴く。日本全国でよく親しまれている鳥の一種である。

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百科事典マイペディア 「ホオジロ」の意味・わかりやすい解説

ホオジロ(頬白)【ホオジロ】

ホオジロ科の鳥。翼長7.5cm。雄は背面が赤褐色で黒褐色の縦斑があり,白色の眉斑が顕著。雌は全体に淡い。東アジアに分布。日本では全国で繁殖するが,北方のものは冬には暖地へ移動する。草原,川原,低木林にすみ,地上または低い枝に巣を作る。雄は繁殖期,巣の近くの枝で〈一筆啓上仕候〉とか〈源平つつじ白つつじ〉等に聞こえる声でさえずる。草の種子を主食とし,昆虫も食べる。

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