デジタル大辞泉 「まし」の意味・読み・例文・類語
まし[助動]
1 反実仮想を表す。
㋐多く上に「ませば」「ましかば」「せば」などを伴って、事実に反する状態を仮定し、それに基づく想像を表す。もし…だったら…だろう。
「草枕旅行く君と知らませば岸の
㋑事実とは反対の状態を想像して希望する意を表す。もし…ならよかったのに。
「思ひけむ人をぞともに思はましまさしやむくひなかりけりやは」〈古今・雑体〉
2 上に疑問語を伴って、疑いためらう気持ちを含む意志を表す。…しようかしら。…したものだろうか。
「これになにを書かまし」〈枕・三一九〉
「あな恋し行きてや見まし津の国の今もありてふ浦の初島」〈後撰・恋三〉
3 推量・決意を表す。…だろう。…う(よう)。
「やがて
「飛騨たくみほめてつくれる真木柱たてし心は動かざらまし」〈賀茂翁家集〉
[補説]未然形「ませ」「ましか」は「ば」を伴って、「ませば」「ましかば」の形で用いられるが、「ませ」は主に奈良時代に用いられ、平安時代以降は和歌以外には用いられなくなる。また、已然形「ましか」は、ほとんど係助詞「こそ」の結びとして用いられる。3は主として中世以降、擬古文などで「む」と同じ意味で使われる用法である。