マッハ数(読み)マッハスウ(その他表記)Mach number

翻訳|Mach number

デジタル大辞泉 「マッハ数」の意味・読み・例文・類語

マッハ‐すう【マッハ数】

流体中の物体の速さの音速に対する比。航空機ロケットなどの速度を示すのに用いる。マッハ数1は音速と等しい速さで、秒速約340メートル、時速約1225キロメートル。記号M マッハ。

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精選版 日本国語大辞典 「マッハ数」の意味・読み・例文・類語

マッハ‐すう【マッハ数】

  1. 〘 名詞 〙 ( マッハは[ドイツ語] Mach オーストリア物理学者エルンスト=マッハから ) 流体、または、流体の中を運動する物体の速度と音速との比。マッハ一は秒速約三四〇メートル。時速約一二二四キロメートル。飛行機やロケットなどの飛行速度を表わすのに用いられる。記号M マッハ。〔ロケット航空工学(1944)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マッハ数」の意味・わかりやすい解説

マッハ数
まっはすう
Mach number

流体の流速vと音速cの比M=v/cをマッハ数という。オーストリアの物理学者のE・マッハが導入した概念。流体の流れのようすは、マッハ数が1より大きいか小さいかによって非常に異なる。海面で時速約1225キロメートル、成層圏で約1060キロメートルがマッハ数1の速さである。

 マッハ数が1より小さい流れを亜音速流、1より大きい流れを超音速流という。マッハ数が1より十分小さい流れでは流体の密度の変化を無視し、縮まない流体とみなせる。一方、超音速流では、流れの中に衝撃波が発生するなど、流れのようすは複雑となる。空気中を運動する物体の周りの流れでも、マッハ数が1を超えると、衝撃波が発生し、空気抵抗は急激に大きくなる。超音速飛行機などでは、衝撃波ができるだけ発生しないように、あるいは発生しても弱くなるように、後退翼にし、飛行機の先端を鋭くするなど種々のくふうがなされている。

[坂下志郎]

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知恵蔵 「マッハ数」の解説

マッハ数

飛行体の速度が音速(大気中を圧力の変化が伝播する速度)を超えると周囲の空気は圧縮され、体積が減り、温度が上昇し、主翼胴体など飛行体周囲の圧力分布は一変する。音速は気温が15℃の時に毎秒340mだが、気温によって変化するので、圧縮性の影響を受ける高速飛行体の速度は音速を基準にして表現する。マッハ1が音速、1.2〜5が超音速、1未満が亜音速、飛行体の速度が音速に近づいて、部分的に音速を超え亜音速と超音速が共存し、その境界に衝撃波を発生する状態になったのが遷音速。空気抵抗が急増し、衝撃波失速を誘起し、バフェット(激しい振動)、ウイングロック(不意自転)、タックアンダー(強力な機首下げ)、ピッチアップ(操縦不能の機首上げ)などの操縦困難に直面する。超音速になるとこうした現象は消滅するが、飛行体周囲の圧力変化は、機首を頂点とする円錐面(マッハコーン)に蓄積され、そのエネルギーが地上に到達するとソニックブームと呼ばれる衝撃音となる。マッハ4を超えるような高マッハ飛行では舵や尾翼の利きが低下するため、ガスの噴出などで機体姿勢の制御が必要になる。マッハコーンの頂角が鋭くなり、機体表面の空気の温度は圧縮によって500℃を超えるようになる。この状態が極超音速域。スペースシャトルは超音速で打ち上げられ、極超音速で大気圏に再突入、亜音速飛行で着陸する。

(鳥養鶴雄 元日本航空機開発協会常務理事 技術士(航空機部門) / 2007年)

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百科事典マイペディア 「マッハ数」の意味・わかりやすい解説

マッハ数【マッハすう】

流体の速度,または流体内を動く物体の速度を,その流体内の音波の速度で割った数値。航空機,ミサイル,高速気流等の速度を表すのに使う。空気中の音波の速度(音速,330m/s前後)は温度が下降すると減少するため,マッハ数が同じでも実際の速度は温度により異なる。なお,マッハ数はE.マッハによって導入された。→超音速気流
→関連項目空力加熱ターボプロップエンジン超音速機マッハ計

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改訂新版 世界大百科事典 「マッハ数」の意味・わかりやすい解説

マッハ数 (マッハすう)
Mach number

気体中を運動する物体の速度,あるいは流れている気体の速度をその気体中の音速で割った値をいう。飛行機やロケット,弾丸などの飛行に関してよく用いられるが,音速は空気の温度によって異なるので,マッハ数が等しくとも飛行速度が等しいとは限らない。マッハ数は必ずしも音速を単位とする速度表示ではない。むしろ気体の流れに及ぼす圧縮性の影響を表す尺度であり,流れの状態はマッハ数によって非常に異なってくる。なお,マッハ数という概念は,超音速気流の研究の先覚者で哲学者でもあるE.マッハによって導入されたものである。
高速気流
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単位名がわかる辞典 「マッハ数」の解説

マッハすう【マッハ数】

ジェット機やロケット、弾丸など、気体中を高速で運動する物体の速さを示す尺度。記号は「M」。元の定義は流体中の物体の速さuと音速cとの比Mu/cで表される無次元数をいい、それが速度の尺度として用いられるようになった。音速をMが1のときとし、1以上のときを超音速という。地表近くの音速は約330m/sなので、これと等しい速度をもつ飛行体の速度を1マッハ(マッハ1またはマッハ数1)という。なお、音速は気体の圧力や温度などによって変化するので、飛行体の速度が同じでもマッハ数が同じとは限らない。成層圏などの高空では音速は低下するので、同じ速度でもマッハ数は大きくなる。◇「マッハ」ともいう。名称はオーストリアの物理学者マッハにちなむ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マッハ数」の意味・わかりやすい解説

マッハ数
マッハすう
Mach number

流体の速度 u と流体中の音速 c との比 u/c を表わす次元のない数。普通 M で表わす。圧縮性流体に対しては,この比によって流れの性質がほとんど定まる。静止流体中を物体が動くときには,物体の速度と流体中の音速の比をマッハ数という。

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法則の辞典 「マッハ数」の解説

マッハ数【Mach number】

音速に対する物体の移動速度の比(無次元数)のこと.記号は M,もしくは Ma である.成層圏を飛行する航空機などの場合,大気は低密度,低温であるため,音速も常温常圧状態とは異なるから,単純に換算はできないことに注意.Ma>1ならば超音速,Ma≦1のときは亜音速と呼ばれている.

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世界大百科事典(旧版)内のマッハ数の言及

【高速気流】より

… 気体の一様な流れの中に物体が置かれた場合を考える。いま,物体のずっと上流の流れの速度をU,そこでの音速をaとすると,Uaで割った値U/aをマッハ数といい,通常Mで表す。上述の圧縮性の影響の大小はこのマッハ数の大きさで決まり,Mが1に比べて小さければ圧縮性の影響は小さく,Mが1に近くなるにつれて大きくなる。…

【マッハ】より

…彼の研究関心は一種のルネサンス人と形容しうるほど多岐にわたっており,物理学,哲学,科学史,心理学,生理学,音楽論の各分野で第一級の業績を残している。物理学では超音速の先駆的研究によって速度単位マッハ数にその名をとどめ,また〈マッハの原理〉は一般相対性理論への道を開くものであった。心理学における〈マッハの帯〉や〈マッハ効果〉の発見,生理学における〈マッハ=ブロイアー説〉など彼の名を冠する業績は数多い。…

※「マッハ数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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