翻訳|Micronesia
西太平洋,赤道のほぼ北,南緯3°~北緯20°,東経130°~180°の海域に散在する島々の総称。マリアナ諸島,カロリン諸島,マーシャル諸島,ギルバート諸島(キリバス)とナウル島などの島より構成され,島の総数は約2100,総面積は2851km2である。このうち人が居住する島は130にすぎず,人口は約30万(1982)。島は火山島,環礁島,隆起サンゴ礁島よりなり,最大の島グアム島でも541km2,小さな島になると1km2に満たない。このような地形的特徴からこの地域は,ギリシア語のミクロスmikros(小さい)とネソスnēsos(島)にちなんでミクロネシア(小さい島々)と名づけられた。熱帯に位置するこの地域の気候は,平均気温28℃前後で年間を通じてあまり変わらず,年降水量は熱帯低気圧に見舞われなければ火山島を除き約360mm,北東からの貿易風が卓越し,乾季と雨季の差が顕著でない。西カロリンの海域で発生する熱帯低気圧は,台風へと発達し日本などを襲う。比較的均質な自然環境下にある島々も,政治・経済面ではグアム島,ナウル島とそれ以外の島とで大きな差異がみられる。グアムは1898年以来アメリカ領になり,アメリカ軍基地や観光地として経済的に自立している。ナウルは1968年に独立し,リン鉱石の輸出で安定した経済基盤を確立している。しかしカロリン,マーシャル,ギルバートの諸島はコプラの生産以外に産業が発達しておらず,アメリカやイギリスの経済援助に依存している。そこでの主要な栽培植物はタロイモ,ココヤシ,パンノキ,バナナで,ヤップ島やポナペ(ポーンペイ)島ではヤムイモが加わる。最近では米の輸入によって米食への変化もみられるが,それらの作物が主食となっている。島の人々による豊富な漁業資源の開発は進まず,小規模な漁労活動に基づく漁獲も日常的に消費される程度である。営利的漁業としては,パラオ諸島のアメリカ資本による缶詰工場経営程度。
ミクロネシアの島々は1521年のマゼランによるグアム島発見以来,18世紀末までにほとんどの島の存在が明らかになった。マリアナ,カロリン,マーシャルの諸島はヨーロッパ人による発見以来,スペイン,ドイツ,日本そしてアメリカの統治下に置かれてきた。日本は第1次世界大戦中にそれらの島を占領し,戦後は委任統治領の南洋群島として治めた。最盛期には10万人もの日本人が進出し,漁業,鉱業,農業の開発に従事した。とくにサイパンやテニアンでのサトウキビ栽培と砂糖生産は,南洋群島の経済的支柱であった。第2次世界大戦後はアメリカの信託統治領となったが,現在4ブロックに分かれて新しい国家を建設中である。グアムを除くマリアナ諸島は北マリアナ諸島として1986年からアメリカの自治領となった。ヤップ,トラック,ポナペ,コシャエ(クサイエ)はミクロネシア連邦,そしてマーシャル諸島はマーシャル諸島共和国と国名を決め,それぞれアメリカと自由連合free association協定を結び,1986年に独立した。パラオ諸島はパラオ共和国(ベラウ)と国名を決め,アメリカとの自由連合を目ざした。パラオ独自の憲法の非核条項をアメリカに限っては適用しないという修正を行い,94年自由連合協定が発効し独立した。またギルバート諸島は1892年から続いたイギリス植民地の地位を離れ,1979年にキリバス共和国の名のもとにイギリス連邦加盟の独立国となった。
→ミクロネシア人
執筆者:須藤 健一
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太平洋の西部のうち,赤道以北に散在する島々の総称。ポリネシア,メラネシアとともに太平洋の3区分の一つ。ギリシア語で「小さい島々」を意味する。先住民はオーストロネシア語族に属し,根栽農耕と漁撈を主たる生業としていた。1521年にマゼランがヨーロッパ人として初めてグアムを訪れ,以後,スペイン人がガレオン船の中継地としてこの地域を利用した。その後,アメリカ‐スペイン戦争に敗れたスペインは,ドイツにミクロネシア地域を売却した。第一次世界大戦後は日本の委任統治領となり,南洋群島と呼ばれた。戦後はアメリカの信託統治領となり,1979年にキリバス共和国,86年にミクロネシア連邦,マーシャル諸島共和国,94年にパラオ共和国がそれぞれ独立している。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報
…残りの数千を数える島々の総面積はわずか18万km2にすぎない。 大陸を除いたオセアニアの島々の世界は,通常地理学的および人類学的観点からメラネシア,ポリネシア,ミクロネシアの3地域に区分される。メラネシア(ギリシア語で〈黒い島々〉の意。…
※「ミクロネシア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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