ミーム(読み)みーむ

日本大百科全書(ニッポニカ)「ミーム」の解説

ミーム
みーむ

ドーキンスRichard Dawkins(1941― )によって、遺伝子geneの対概念として命名された概念。『利己的な遺伝子』The Selfish Gene(原著初版1976/翻訳版1991・紀伊國屋書店)で提唱された。遺伝子は体をつくるが、ミームmemeは文化をつくる。そして遺伝子と同じように淘汰(とうた)によって次の世代へと引き継がれていく。ドーキンスは生物学における物理法則に匹敵するような普遍的法則として、「全ての生物は自己複製を行う実体の生存率の差に基づいて進化する」という原理を提唱している。ミームというのはドーキンスの造語であるが、この自己複製あるいは模倣の単位をさすギリシア語「mimeme」を「gene」と対になるように縮めたとしている。

 ミームは比喩(ひゆ)ではなく遺伝子と同じく実体である。実際の生物進化においても教育(文化の伝承)が体と同様に重要である例がいくつか示されている。たとえば、一部の鳥類の鳴き声、動物による狩りなどは遺伝子に書かれた情報ではなく、親から子への教育の結果であることが示されている。また、人間のもつ文化、とくに言語とそれによって語り継がれる物語、宗教などもミームである。

[中島秀之 2019年9月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉「ミーム」の解説

ミーム(meme)

《gene(遺伝子)と〈ギリシャ〉mimeme(模倣)を組み合わせた造語》模倣によって人から人へと伝達し、増殖していく文化情報。文化の遺伝子。英国の生物学者R=ドーキンスの用語。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版「ミーム」の解説

ミーム【mime[フランス]】

ミームとは,かつてのJ.G.ドビュローピエロに代表されるパントマイムとは区別されて,現代に至り,フランスのエティエンヌ・ドクルーÉtienne Dec‐roux(1898‐1991)によって創始された新しい身ぶり芸術表現に対する呼名である。ドクルーはまずJ.コポーのビュー・コロンビエ座に学び,その後はC.デュランのアトリエ座で,J.L.バローや後にはM.マルソーなどとともに,単なる物まねではないこの新しいジャンルに踏み出して,その創始者となった。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

世界大百科事典内のミームの言及

【バレエ】より

…馬の調教に際し,馬を馬場いっぱいに円く走らせるのと同じく,舞台または教室で,円を描くようにして動いていくさまをいう。ミームmime黙劇。マイムともいう。…

【パントマイム】より

…演者が声を用いず,身体の動きや顔の表情のみを表現手段とする芸能。単に〈マイムmime〉ともいい,〈黙劇〉〈無言劇〉などの訳語・用語も用いられる。
[パントマイム前史]
 pantomimeという言葉は,その語源をさかのぼれば,古代ギリシア語のpantōs(すべて(に))とmimos(ものまね)の合成語pantomimosであり,この言葉自体は古代ギリシアの多くの文献に見ることができる。しかし,このような〈ものまね〉あるいは〈呪術的模倣所作〉とでも称すべきものは,周知のように,演劇一般の〈始源的形態〉にほぼ共通して見ることができる重要な一構成要素であり,そのようなものの一種として,古代ギリシアにおいては先のmimos(あるいはpantomimos)という言葉で表現される〈ものまね〉を中心とした座興的な雑芸(これを演劇史で〈ミモス劇〉などとも呼ぶ)が行われていたことは事実であるにせよ,それが今日のパントマイムに通じる一つの独立した芸能ジャンルであったとは言いがたく,演劇史では,ふつうパントマイムの起源を,古代ローマのパントミムスpantomimusに求めることが行われている。…

【バレエ】より

…演劇的な舞踊,舞踊劇ともいわれるようなものを指し,劇場的な舞台舞踊である。演劇がせりふによって進行するのに対し,せりふの代りに舞踊およびミーム(マイム)によって進行する劇をいう。一貫した筋があり,2人以上の登場人物をもち,その登場人物が何かの役にふんし,したがってその役の要求する衣装を着し,舞台装置をもった劇で,せりふをいっさい排して舞踊だけによって構成されるものである。…

【パントマイム】より

…たとえば,イタリアのコメディア・デラルテの中には,パントミムス的要素を色濃く見てとることができる。なお,17,18世紀にフランス宮廷などで行われた神話を題材とする仮面舞踊劇(バレエ)も,パントミームpantomimeの名で呼ばれている。【川添 裕】
[近代的パントマイムの誕生]
 19世紀に入ると,パントマイムは演劇史の表面に現れ,その全盛期を迎えるにいたった。…

※「ミーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

個人メドレー

競泳種目の一つ。同一個人が定められた距離をバタフライ,背泳ぎ,平泳ぎ,自由形の順に続けて泳ぐ。個人メドレーの際の自由形は,他の3種以外でなければならないため,クロールで泳ぐのが一般的。次の泳法への移行...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android