天然ガスの主成分メタンと水分子が結び付き、海底下の地層などに固体で存在している。太平洋側は「砂層型」、日本海側は「表層型」と呼ばれる異なる形態で分布しており、それぞれに合った採掘技術の開発を進めている。海底にある固体をガス化して取り出すには高度な技術が必要で、商用化の実現にはコストの低減も課題となっている。
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メタンガスと水からなる氷状固体物質。低温・高圧の環境条件のなかで存在する物質で、水深500メートル以深の深海底下の堆積(たいせき)物中や永久凍土中に広く分布する。メタンハイドレートが存在できる最大の深度(メタンハイドレート安定領域)は水深や海域によって異なり、海底から数百メートル程度の深さといわれる。メタンハイドレートにはメタンなどの炭化水素分子が閉じ込められており、石油などの在来型エネルギー資源にかわる新しいエネルギー資源として注目されている。
自然界に存在するメタンハイドレートの発見は、1965年に報告されたロシア西シベリアの天然ガス田での調査が最初とされる。その後アメリカが行った深海底調査により、凍土地帯だけでなく、海底にも膨大な量が分布することが解明された。これ以降、世界各地の深海底で探査が行われ、日本は1995年(平成7)に資源化を探る調査に着手した。こうした調査の結果、日本近海でも、紀伊半島や四国沖の南海トラフの陸側斜面を中心に3万5000平方キロメートルにも及ぶ広大な範囲に分布することが発見され、ほかの海域もあわせた賦存量は約6兆立方メートル(日本の年間天然ガス使用量の100年以上分に相当)と試算されている。
メタンハイドレートを資源として開発するため、2001年(平成13)7月に経済産業省によって「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」が策定された。また、2018年に閣議決定された海洋開発計画でメタンハイドレートのエネルギー資源としての重要性が改めて位置づけられ、これを踏まえ経済産業省が2019年に「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を改定、砂層型メタンハイドレート等について2023~2027年度の間に民間主導の商業化に向けたプロジェクト開始を目ざした研究開発等に関する計画が示された。しかし、メタンハイドレートの安全かつ効率的な産出には、いまだ技術的・経済的課題が多く、商業生産のめどはたっていないのが現状である。また、メタンハイドレートは、温度や圧力の変化で容易に分解して地球温暖化効果の高いメタンを大量に放出する可能性もあり、その利用については慎重論もある。
[伊藤葉子・小山 堅 2022年1月21日]
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(小林和男 東京大学名誉教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
水分子が内部に空孔をもった立体網目状構造をつくり,その空孔にガス分子が取り込まれている包接化合物の一種で,低温・高圧環境下で水分子の結晶構造のなかにメタン分子が取り込まれた固体のことをいう.可燃性.大陸棚の水深数百メートルから5000メートルの深海の海底や,北極・南極圏の凍土地帯に分布する.日本近海にも大量に存在するといわれており,新しい天然ガス資源として期待されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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