メヌエット(英語表記)Menuett[ドイツ]

デジタル大辞泉 「メヌエット」の意味・読み・例文・類語

メヌエット(〈ドイツ〉Menuett)

フランスに起こり17、8世紀ヨーロッパの宮廷で流行した典雅舞踏および舞曲三拍子で中庸の速度をもち、のちには器楽曲楽章にも用いられた。ミニュエット

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「メヌエット」の意味・読み・例文・類語

メヌエット

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Menuett ) 舞曲の一つ。フランスに始まった四分の三、または八分の三拍子の曲。あまり速くなく、小きざみに踊ったところから「細歩」の意でこの名称がついた。二拍目が強く、それに装飾音がついていることが多い。ミニュエット。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「メヌエット」の意味・わかりやすい解説

メヌエット
Menuett[ドイツ]

舞踊および舞曲の一種。本来フランスのいなかの踊りであったが,1660年代のルイ14世宮廷に取り上げられて以来,古いクーラントやパバーヌに取って代わって全ヨーロッパ的に流行し,舞踏と舞踏音楽に新時代をひらいた。メヌエットは,1組の男女が洗練された作法,優雅なステップで,君主貴賓の臨席する長方形大広間を太陽王を象徴するS字またはZ字形に進む,きわめて悠長な貴族的社交ダンス風の舞踏である。メヌエットの音楽も3/4拍子の中庸の速度の典型的なバロック舞踏音楽である。18世紀中葉以降,市民社会の興隆,産業革命の進展などにより,人々の生活感覚が大きく変化した後も,メヌエットだけは生き残り,前古典派,古典派音楽に受け継がれた。しかし舞踏音楽本来の性格はうすれ,〈メヌエット-トリオ(中間部)-メヌエット〉の3部分形式の1楽章としてソナタ交響曲に組み込まれ,曲想も軽快,機智的なものに変化した。そしてベートーベンにおいてスケルツォへと発展解消した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「メヌエット」の意味・わかりやすい解説

メヌエット

フランス起源の優雅な3拍子系の舞踊曲。フランス語でムニュエmenuet。ルイ14世期の宮廷で用いられて以来,ヨーロッパ各地の宮廷舞踊として流行した。交響曲ソナタ室内楽曲の一つの楽章(第3楽章)にも用いられたが,ベートーベンではスケルツォへと発展した。→シュターミツ
→関連項目セレナードトリオ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メヌエット」の意味・わかりやすい解説

メヌエット
めぬえっと
menuet フランス語
Menuett ドイツ語
minuet 英語

音楽用語。西洋音楽における舞曲の一つのタイプで、本来は踊りの音楽であったが、のち踊りを伴わない自律した音楽となる。この語の綴(つづ)りは数十種もあり、前記のものはその代表的なものにすぎない。三拍子の優雅な舞曲で、しばしば二つのメヌエットが組み合わされており、最後にもう一度、最初のメヌエットが繰り返されるという型が一般的であった。17世紀中ごろ、フランスのルイ14世の宮廷でもてはやされ始め、18世紀を通じてヨーロッパ各地の宮廷で好まれた。それと同時に、18世紀中ごろから、多楽章の純器楽作品のなかに一つの楽章として組み入れられるようになって、この種のメヌエットは舞踊とは切り離された。そして第二メヌエットは、その編成上の特徴からトリオとよばれることが一般化し、ここにメヌエット―トリオ―メヌエットという器楽形式が成立した。このような楽章としてのメヌエットは、いわゆる「ソナタ多楽章構成」の一部となって、ディベルティメント、ソナタ、三重奏曲や四重奏曲などの室内楽、また交響曲にも広く用いられた。19世紀に入ると、メヌエット楽章はしばしば、よりテンポの速いスケルツォ楽章にとってかわられた。

[大崎滋生]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メヌエット」の意味・わかりやすい解説

メヌエット
minuet

ムニュエ menuetともいう。3拍子のフランスの舞踊,およびその舞曲。フランス語の menu (小さい) が語源といわれる小幅のステップで,中庸なテンポの優雅な曲に合せて踊る。元来はブランルなどの舞踊に由来するものともいわれ,西部ポワトゥ地方から興り,ルイ 14世の宮廷舞踊に取入れられ,全ヨーロッパに広まった。普通8字形を床に描くように踊られたが,宮廷ではZ字形などもみられた。舞曲は,18世紀の組曲ではサラバンドとジグの間におかれたが,マンハイム楽派によって3声体で書かれたトリオと呼ばれる対照的な第2メヌエットを伴って古典派の交響曲,室内楽曲の第3楽章に用いられた。テンポも軽快なものに変り,ベートーベンにいたってスケルツォに変化した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のメヌエットの言及

【宮廷音楽】より

…ヨーロッパの例としては,16~18世紀の宮廷舞踊(音楽)がある。今日,その代表とみなされているパスピエpassepied(3/8,6/8拍子の速い陽気な舞曲),メヌエット,リゴードンrigaudon(2/4,4/4拍子の快活な舞曲)はもとはそれぞれブルターニュ,ポアトゥー,プロバンス各地方の民俗的な舞踊であった。日本の例としては,遊女から習った今様(いまよう)を廷臣に教えた後白河法皇の行為が挙げられる。…

【社交ダンス】より

…また中世のヨーロッパでは,農民の踊る荒々しい踊りは身分の高い男女にはふさわしくないとされた。宮廷では,ゆったりとした音楽による,踊りの規則のやかましいものへと変化して,優雅なメヌエット,ガボット,カドリーユなどが生まれた。フランス革命後,宮廷での儀式的なものより庶民的な踊りが好まれるようになり,古くからオーストリアの山岳地方で行われていた舞踊レントラーLändlerがしだいにワルツに発展,ウィーンを中心にヨーロッパ全域へと爆発的な流行をもたらした。…

【舞曲】より

…17世紀に入ると,性格の異なる舞曲を連ねて組形式とする前世紀からの習慣が発展し,新たに組曲が誕生した。その際,上記の舞曲に代わって緩やかな偶数拍子系のアルマンド,速い3拍子で軽快なテンポのクーラント,サラバンドジーグ,さらにはブーレガボットメヌエットといった宮廷舞曲が組み合わせられた。J.S.バッハの《フランス組曲》や《管弦楽組曲》がその好例である。…

※「メヌエット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android