装飾音(読み)そうしょくおん(英語表記)ornamental notes

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

装飾音
そうしょくおん
ornamental notes

楽曲中の個々の旋律を装飾するため通例小さくつけ加えられた音符,あるいは記号で示された特定の音型。歌手や演奏者たちが即興的に加えたり,作曲者自身が記号の形あるいは音符によって記したりするが,装飾音は旋律様式の重要な特色である。 16世紀の鍵盤曲やリュート曲において装飾する習慣がみられ,イギリスのバージナル音楽におけるようにある程度まで記号が用いられた。バロック時代になっても実際の演奏では旋律の骨組みを細かく装飾する習慣が行われたが,フランスのクラブサン楽派では正確な記号でこれを示した。装飾音のおもな種類はトリルターンモルデントアルペッジョ前打音 (アポジャトーラ) ,後打音などであり,それらを組合せた複雑な複合装飾音もある。 19世紀以後になると装飾音はもっぱら作曲者自身によって書かれるようになり,即興性を失っていった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

そうしょくおん【装飾音 ornament】

旋律を構成する特定の音に,表現力の充実,アクセント付与などの目的で付加された音型をいう。装飾音は,一般には記号や小さい音符で示される特定の装飾音型を意味するが,本来は,そのような定型化したもの以外をも含んだより広範囲にわたる現象である。即興的に音と音との間を自由に埋めていく装飾法は,声楽,器楽を問わず歴史上広く認められ,定型化された装飾音の生まれ出る母体をなすと考えられる。中世ヨーロッパの教会音楽の根幹をなしていたグレゴリオ聖歌の編曲や変奏のほとんどは装飾的意味をもっていた。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

そうしょくおん【装飾音】

曲の興趣・表情を豊かにするため、ある音に部分的に付加する音。前打音・後打音・ターン・トリルなど。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

装飾音
そうしょくおん
ornamentgrace英語
OrnamentManierドイツ語

作曲家や演奏家が旋律を華やかにし、音楽に興趣を添えるために加える特別な細かい音、またはそれらの音の集まりをさす音楽用語。装飾音は時代や地域を問わずさまざまな音楽にみられ、内容も多種多様である。
 西洋音楽では、すでにグレゴリオ聖歌に装飾音がみられ、以来中世を通じて音楽の本質にかかわる重要な問題の一つであった。しかし、それは楽譜に記されることがなく、演奏家の即興あるいは演奏慣習に従って自由に奏されていた。16世紀に入ると、鍵盤(けんばん)楽器やリュートの楽曲で装飾音のための略記法が用いられるようになったが、それぞれの記号が何を意味するかについてはまだ混乱を呈していた。のちに装飾音に関する略記法はしだいに標準化されていき、17世紀のフランスの作曲家たちによって、広くヨーロッパを通じて一般化されるに至った。とりわけ、鍵盤楽器の楽曲を作曲していた人々がアグレマンagrments(フランス語で装飾の意)とよんでいた使用法は、その後の装飾音およびその略記法の基礎となった。17、8世紀、装飾音は最盛期を迎え、ほとんどが略記法で示された。19世紀以後も装飾音は用いられたが、その種類は減少し、普通の音譜で記されることが多くなった。
 欧米以外の諸民族や日本の音楽では、一般的な特徴として単旋律の性格が強いために、旋律の単調さを避けようとして装飾音が盛んに用いられる。それらの多くは、イントネーションや音色の微妙な変化、ビブラートなどと深い関係をもっている。代表例には、インドネシアのガムラン音楽のように多数の旋律打楽器が、同時に主旋律をさまざまな方法で細分、装飾し、多音的効果を生むもの、イスラム圏の声楽にみられる、のどを使ったヨーデル風のトリルやモルデント、朝鮮の声楽にみられる激しいビブラート、日本の声楽に使用される「こぶし」、三味線や箏(そう)の手にみられる「スリ上ゲ」「ゆりいろ」などの技法がある。[黒坂俊昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

そうしょく‐おん サウショク‥【装飾音】

〘名〙 旋律音を装飾するための音。小音符を付して表示する。トリル、ターン、前打音、後打音など。〔洋楽手引(1910)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内の装飾音の言及

【文様】より


[装飾としての文様]
 文様を飾る対象は,人体をはじめ,衣服,器物,家具,その他の工芸品や建築物などにひろくわたるが,その目的としては,第1には,純粋に〈飾る〉ということだけのための快楽的,観賞的な装飾文様がある。物を〈飾る〉とか〈装う〉とかいう言葉は,西洋ではラテン語起源の〈デコレーションdecoration〉あるいは〈オーナメントornament〉などがあるが,それらは人間の生活にとってよけいなものとか,ぜいたくなものと考えられたこともあった。しかし,それは本来,人間のもって生まれた装飾本能に由来するもので,先史時代以来,人類はみずからの生活環境を美化し,人生の喜びを見いだそうとして,あらゆるものに装飾をほどこしてきた。…

※「装飾音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

日米安全保障条約

1951年9月8日に対日講和条約と同時に署名された「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」Security Treaty between Japan and the United States ...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

装飾音の関連情報