ロシアの人権団体。人権活動でノーベル平和賞を受けた故アンドレイ・サハロフ博士らが中心となり1987年にモスクワで前身団体を発足。89年に地方組織を統合した。スターリン時代に迫害された人々の名誉回復が活動の原点。ソ連時代の政治弾圧や、ソ連崩壊後にロシア軍が南部チェチェン共和国で実施した独立派武装勢力の掃討作戦などによる犠牲者の資料を記録し、人権擁護を訴えてきた。(共同)
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ロシアの人権団体。旧ソ連時代から、一貫して政治弾圧や人権侵害の歴史を掘り起こし、記録・告発する人権擁護活動を展開。ロシアがウクライナに侵攻した2022年に、ノーベル平和賞を受賞した。授賞理由は「長年にわたり権力を批判するとともに、基本的人権を守る活動に取り組み、戦争犯罪、人権侵害、権力の濫用を記録するために並はずれた努力を重ねてきた」ことであり、さらに、「軍国主義との闘い、人権の確立や法の支配に基づく政府の実現を推進する取組みの最前線にたってきた」と称揚された。ウクライナ侵攻2か月前の2021年12月、ロシア最高裁判所から解散を命じられたが、団体メンバーは名前を変えるなどしながらロシア内外で活動を続けている。なお、ロシア関連でのノーベル平和賞受賞は、プーチン政権批判を続けるジャーナリストのムラートフから2年連続。
メモリアルは旧ソ連時代の1987年、ノーベル平和賞受賞者で物理学者のA・サハロフらが発起人となって創設。スターリン時代の粛清など、隠された人権弾圧の歴史を掘り起こす活動からスタートし、収容所に送られるなど迫害された人々の名誉回復や、政治囚の名簿の作成、さらに弾圧された人々がヨーロッパ人権裁判所に訴える動きなどを支援したほか、難民や国内避難民の支援、教育、慈善活動にも取り組み、ロシア最大の人権団体となった。本部をモスクワ、支部をウラル、シベリアなどに置き、ウクライナ、ドイツなど海外にも拠点をもつ。1994年に起きたチェチェン紛争では、ロシアや親ロシア派による市民の虐待や戦争犯罪を検証したが、チェチェンで活動中のメモリアル活動家が2009年に殺害された。ムラートフが編集長を務めた独立系リベラル紙とも協力し、プーチン政権への批判を続けたため、2016年、ロシア当局から、スパイと同義の「外国の代理人(エージェント)」に指定され、2021年に解散させられた。解散後も、メンバーはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイトに、「完全な人権センター2.0」などのアカウントを開設し、情報発信を続けている。ノーベル平和賞は、ウクライナの人権団体の市民自由センター(CCL)、ベラルーシの人権活動家ビャリャツキとの共同受賞であった。
[矢野 武 2023年2月16日]
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