メーザー(英語表記)Möser, Justus

  • Justus Möser
  • maser

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

[生]1720.12.14. オスナブリュック
[没]1794.1.8. オスナブリュック
ドイツの評論家,歴史家。領主司教区オスナブリュックの種々の指導的地位につき,政治家としても活躍。国粋的な方向を目指す歴史観の代表者。ドイツ民族意識の発達にも影響を及ぼし,ゲーテらに尊敬された。主著『愛国的幻想』 Patriotische Phantasien (4巻,1774~78) ,『オスナブリュック史』 Osnabrückische Geschichte (2巻,68) 。
原子や分子誘導放出を用いて電磁波増幅発振を行う装置microwave amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をつないで名づけられた。 1954年 C.H.タウンズが最初の発振に成功したアンモニア分子線を用いたメーザーや,水素原子線による気体メーザー周波数安定性がよく,周波数標準に用いられる。また,常磁性共鳴を利用したルビーなどの固体メーザーは低雑音増幅器として電波望遠鏡の初段増幅器に用いられる。反転分布の状態をつくるには気体メーザーの場合は,分子線や原子線に沿った集束電極または集束磁極を用いる。共振器としてはマイクロ波空洞共振器が使われる。のちにこれが発展して光を発振するものとなり,レーザーとなった。

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百科事典マイペディアの解説

物質と電磁波との相互作用における誘導放出を利用してマイクロ波の増幅,発振を行わせる装置。メーザーmaserはmicrowave amplification by stimulated emission of radiation(誘導放出によるマイクロ波増幅)の頭文字をとったもの。通常の熱平衡状態にある物質では,低いエネルギー準位にある原子や分子が多いので,マイクロ波を照射しても吸収されるだけだが,適当な方法で高いエネルギー準位にある原子や分子を多くした物質では,マイクロ波を照射すると吸収よりも誘導放出が多くなり,原子や分子の内部エネルギーを得てマイクロ波は増幅される。増幅系を共振器の中に置き,出力の一部を共振器にフィードバックしてやると発振させることができる。メーザーでは入力波と出力波の周波数,位相が同じでコヒーレント(可干渉的)な増幅が特徴で,周波数変動や内部雑音も少ない。材料により気体メーザー(ガスメーザー)と固体メーザーに分かれる。前者は高真空中に気体原子または気体分子をビーム状に噴出させ,高いエネルギー準位にある原子(分子)を集束器によって集束し,空洞共振器へ導くもので,原子線(分子線)メーザーともいう。水素原子,アンモニア分子などが使われ,周波数の安定した発振が得られるので周波数標準,原子時計などに応用される。後者は常磁性結晶の磁気共鳴を利用し,外部磁場をかけると結晶中に4種のエネルギー準位が現れるので,そのうちの適当なエネルギー準位を選んでメーザーに用いる。人工ルビー,ルチル(金紅石)などが用いられ,効率を上げるため極低温にする。低雑音マイクロ波増幅器としてすぐれ,電波天文学,人工衛星による通信,超遠距離レーダーなどに応用される。→レーザー
→関連項目ガスメーザータウンズプロホロフ量子エレクトロニクス

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世界大百科事典 第2版の解説

microwave amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をとって作られた。アメリカのタウンズCharles Hard Townes(1915‐ )の命名といわれる。物質と電磁波との相互作用における誘導放出を利用したマイクロ波の増幅や発振,あるいはそのための装置をいう。microwaveのmをlightのlにかえたのがレーザーで,両者はまったく同一の原理に基礎をおいている。
1720‐94
ドイツ北部の町オスナブリュックの文筆家,政治家。イェーナゲッティンゲンの大学で学んだのち,1742年にオスナブリュックの騎士階層の団体の書記となり,そののち弁護士となる。47年にはオスナブリュックの内政外政にわたる法律問題の全権をゆだねられた。68年以後は全ラントの統治をゆだねられ,有能な政治家として活躍した。1766年以後《オスナブリュッカー・インテリゲンツブラット》(週刊)を発行し,ほぼ同じころに《愛国的幻想》を編んだ(全4巻,1775‐86)。

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大辞林 第三版の解説

誘導放出を利用してマイクロ波を増幅する装置。外部からマイクロ波でエネルギーを与え、高い準位にある電子の数を低い準位の電子の数より多くし、さらにマイクロ波を与えて、高い準位のものを低い準位に落とし、位相の揃ったマイクロ波を増幅・発振する。雑音がきわめて小さい増幅器として原子時計・宇宙通信・電波望遠鏡などに利用。
microwave amplification by stimulated emission of radiation

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (maser microwave amplification by stimulated emission of radiation の各語の頭文字をつないでつくった語) 誘導放射を利用した原子系または分子系の電磁波増幅器または発振器。
(Justus Möser ユストゥス━) ドイツの歴史家・政治家。オスナブリュック司教国の高級行政官として執務するかたわら「オスナブリュック史」を完成。ロマン主義、歴史主義の先駆者とみなされている。(一七二〇‐九四

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化学辞典 第2版の解説

電磁波の誘導放出を利用して,電磁波の増幅,発振を行う装置.本来はマイクロ波の増幅あるいは発振を行わせるための装置として考案されたものであり,メーザー(MASER)という名前もmicrowave amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をとったものである.その後,波長範囲が広がり,ラジオ波や光の領域にまで及び,光のときにはレーザーとよばれるようになった.増幅,発振に必要な負温度の状態を得る方法としては,電磁波を用いるポンピング,分子線を用いエネルギーの高いほうの準位にある原子または分子のみを選択する方法,磁場を急速に反転する方法,あるいは光を用いるポンピングなどがある.おもに原子・分子の超微細構造準位間の遷移,あるいは磁場のなかに置かれた常磁性物質のゼーマン準位間の遷移が用いられている.大別すると,分子線を用いるビームメーザーと常磁性物質を用いる常磁性メーザーとがおもなものである.有名なものとしては,はじめてメーザーとして成功したアンモニアビームメーザー,H原子,Cs原子を用いるビームメーザー,あるいはルビーや,そのほかの常磁性物質(Cr3+,Fe3+,Cd3+)を低温で用いる常磁性メーザーがある.メーザーの重要な性質は,その発振周波数を高い精度で安定化することが可能な点と,増幅器として用いたときに低雑音であることである.その性質のうち,前者は電波の周波数標準あるいは原子時計に応用され,また後者はマイクロ波のとくに低雑音を必要とする受信器の初段増幅器に用いられている.

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世界大百科事典内のメーザーの言及

【レーザー】より

…低いエネルギー状態(エネルギー準位)にある分子(あるいは原子,イオン)の数より高いエネルギー状態にある分子の数のほうが多いという非熱平衡分布(反転分布)をしている物質系に,共鳴する光を作用させて,誘導放出過程によって,コヒーレントな光の増幅を起こさせることおよびそのための装置をいう。lightをmicrowave(マイクロ波)におきかえたメーザーmaserと同じ原理に基づく。
[原理]
 分子(または原子,イオン)から電磁波(光もマイクロ波もその一種)が放射される機構は,自然放出と誘導放出の二つに大別される。…

【オスナブリュック】より

…しかし17世紀にいたるまで,この町はほとんど帝国直属都市と同じような位置をもちつづけることができた。18世紀の後半にはJ.メーザーが事実上この町の行政の責任者となり,その体験のなかから《愛国者の幻想》や《オスナブリュック史》が生まれた。19世紀にはシュテューベCarl Bertram Stüve(1798‐1872)が市長となり,ハノーファー地区の農民解放に尽くし,メーザーの《オスナブリュック史》の後編を書いている。…

※「メーザー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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