モスリン(その他表記)muslin

翻訳|muslin

精選版 日本国語大辞典 「モスリン」の意味・読み・例文・類語

モスリン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] muslin, [フランス語] mousseline ) 毛織物の一つ。梳毛糸平織りにした薄地で柔らかい風合のもの。また、それを模した布地。特に、綿糸で織られたものは綿モスリンという。唐縮緬(とうちりめん)メリンス。モス。
    1. [初出の実例]「印度に於ては昨今モスリンの需要漸次増加し」(出典:中外商業新報‐明治三三年(1900)一一月一〇日)

モスリンの語誌

もともとはメソポタミアモスル(Mosul)で織りだされた布地で、それを模してフランスやイギリスで織りだした毛織物。幕末、明治時代に輸入され、和服用として需要が拡大、国産化され、国外にも輸出されるようになった。はじめメリンスと呼ばれたが、明治時代後半からモスリンと呼ばれるようになった。

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改訂新版 世界大百科事典 「モスリン」の意味・わかりやすい解説

モスリン
muslin

JIS繊維用語では〈たて,よこ糸に紡績単糸を使用した平,または斜文織の柔軟な織物〉と説明されているが,代表的なものは細い梳毛(そもう)単糸を平織にした柔らかい薄地の毛織物である。〈モスリン〉の語源イラクの都市モースル由来し,この地で織られた薄地の綿織物にモスリンの名が付された。インドとくにダッカ(現,バングラデシュ)のモスリンは,金銀糸を用いたきらびやかな薄地綿織物で,ヨーロッパで高く評価され多量に輸出されたが,産業革命期のイギリスはランカシャーの綿工業を保護するためダッカの織工を抑圧し,インドの在来綿業を壊滅させた。その後イギリス,フランスで綿,毛,絹のモスリンの製作が盛んとなった。梳毛糸のモスリンは1826年フランスで創製され,これにカシミア,ショール風の柄(ペーズリー)を捺染したものが流行した。日本では幕末ころから梳毛糸のモスリンを輸入し,明治になってからは色無地のほか,あらかじめ友禅模様のデザインを送りそれを捺染したものを輸入したが,輸入の急増に刺激されて国産毛織物の道を開いた。これらは戦前は〈メリンス〉(毛用のヒツジ,メリノーmerino種の名に由来)または〈唐ちりめん〉と称し,捺染できる数少ない毛織物の一つとして和服の着尺,帯,襦袢,布団地などに広く用いた。斜文織(綾織)にしたものもありこれを〈綾モス〉という。綿糸で織り上げたものを〈綿モス〉または〈新モス〉,スフ糸を用いたものを〈スフ・モス〉と称し,他にも種々の合成繊維を混紡したものが使われた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モスリン」の意味・わかりやすい解説

モスリン
muslin

梳毛 (そもう) 糸を平織,斜文織にした柔らかい薄地の毛織物。もとイラク北西部のモースル (マウシル) で製織された薄い平織綿織物であったが,のちにフランス,イギリスなどで羊毛糸を使った平織物をモスリンと呼ぶようになった。これが明治初期に日本に輸入され,一般にメリンス,唐縮緬 (ちりめん) といわれ,和服地として普及。明治末期に国産化され,日本の毛織物として輸出,さらに綿糸で織った新モス (綿モス) や,スフモス,化繊モスなども生産され輸出されたが,現在は生産されていない。白地,無地のほか,友禅染捺染模様などが多く,従来は女性,子供のきもの,帯,下着として盛んに用いられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モスリン」の意味・わかりやすい解説

モスリン
もすりん
muslin

元来、木綿の薄手のものをいうが、日本ではメリンスとか唐縮緬(とうちりめん)、また略して「とうち」などともいわれた薄い毛織物で、おもに女性の衣料として用いられた。明治初期、イギリスから生地(きじ)が輸入され、まもなく、これに友禅染めを施したものが普及した。その後1897年(明治30)ごろから日本でも生地の製織が行われ、着尺(きじゃく)、帯地、下着、ふとんなどの用に供された。綿製の綿モス、新モスなどもあった。一時はネルやセルなどとともに女性の普段着としてかなり広い需要層をもっていたが、虫のつきやすいことなどから、しだいに用いられることが少なくなり、今日ではほとんどみられなくなった。

[山辺知行]

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百科事典マイペディア 「モスリン」の意味・わかりやすい解説

モスリン

メリンス,唐縮緬(ちりめん)とも。平織の薄地の梳毛(そもう)織物で,明治初期フランスから輸入され和服地として広まった。柔軟で暖かく,色無地,友禅染などにして着物の裏地,長襦袢(じゅばん),子どもの着物,ふとんなどにする。化繊によるスフ・モスもある。→新モス

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世界大百科事典(旧版)内のモスリンの言及

【毛織物】より

…フクリンは一段と優れたという形容にも使われ,〈傾城にふくりんかけた御奉公〉(《柳多留》)などの川柳も生まれた。 幕末から明治前期にかけて,薄地でしなやかで精緻なうえにきわめて安価な平織羊毛布地のモスリンがラシャの2倍以上も輸入され,これを唐縮緬(とうちりめん)と呼んで着物や帯や袴(はかま)の布地として広く愛用された。関西や業界では古くからモスリンと呼んでいたが,明治30年代から関東ではメリンスと呼んだ。…

【織工】より

…エジプトからの亜麻織物,インドからの綿織物,ビザンティン,イラン,中国からの絹織物の技術の摂取がなければ,アッバース朝(750‐1258)時代の手工業において,他のどの分野をもはるかにしのいだ織物業の発展はなかったであろう。また,十字軍をきっかけにした東西交流の活発化のなかでバグダードの錦織,ダマスク織(どんす織),モスリン織(メリンス),木綿の栽培がヨーロッパに伝わることもなかったであろう。とくにダマスク織,モスリン織は,当時の織物の中心地であったダマスクス,モースルの名を冠してよばれたものである。…

※「モスリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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