フタバガキ科に属する一部の樹木およびその木材を総称するフィリピン名で,サラノキ属Shorea,パラショレア属Parashorea,ペンタクメ属Pentacmeの3属約10種からなる。いずれも樹高50~60m,直径1~2mになる大高木で,下から上まで同じ太さの幹をもつ。木材の色調からふつうレッドラワン類red lauan(心材は赤褐色~濃赤褐色),ホワイトラワン類white lauan(心材は淡灰白色~淡桃褐色),イエローラワン類yellow lauan(心材は淡黄白色~淡緑黄色)の3グループに分けられる。材の気乾比重はおよそ0.50~0.65で,加工性のよさ,適度の強度などの点から建築造作用,実用家具類,器具類などに使いやすく,大径材がまとまって得られるので合板の最適材とされる。ただし辺材はヒラタキクイムシ類の害を受けやすいので,防虫処理をする必要がある。また材色は単調で,外観がやや粗雑なので,装飾的用途には適さない。
ラワン材は第2次世界大戦前から日本に輸入されていたが,戦後その量が急増し,一時は東南アジアからの輸入材(いわゆる南洋材)のほとんどを占めていた。そのため東南アジアの木材はすべてラワン材であるという誤解が生じた。しかしラワン材は前記のように限られた樹種の木材であり,またサラノキ属などでも木材が重硬なものはラワンとはいわない。フィリピンのとくにミンダナオ島の伐採が進んだ結果,ラワン材の資源が乏しくなり,近年はボルネオおよびスマトラがもっぱら南洋材の供給源となっている。これらマレー語圏ではラワンに相当する樹種および木材(すなわちサラノキ属などの樹種で,木材が比較的軽軟なもの)をメランチmerantiまたはセラヤserayaと呼んでおり,日本の木材市場でもこの名で広く通用している。
→外材
執筆者:緒方 健
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熱帯アジアの原生林に多いフタバガキ科(APG分類:フタバガキ科)植物のうち、主としてショレア属Shorea、パラショレア属Parashorea、ペンタクメ属Pentacmeの3属に入る、比較的材質が軽軟な樹種の総称。フィリピンではこれに相当するメランティ類のことをラワンと称する。ベニヤ、建築材、器具材など用途が広く、日本は多量に輸入している。
種類が多く、普通は高さ50~60メートル、直径0.8~1メートル以上になり、通直な円筒状の大径木になって大きな樹冠を広げる。陰樹で、稚樹は強い陽光に弱い。花は5枚の萼片(がくへん)と花冠があり、果実には萼片の発達した翼があり、ショレア属やパラショレア属では3枚が長く、2枚は短い。樹皮、木材ともに樹脂道をもち、一般に樹脂は黄色系で芳香がある。材は比重0.6程度までの散孔材で、材色は紅色から白色まである。年輪は認められないが、横断面では垂直樹脂道が年輪状に並ぶことが多い。材の保存性は一般に低く、屋内の利用にはよいが、接地または屋外での使用には不向きである。
材色、材質から次のように区分している。(1)赤ラワン類 材は淡紅または紅褐色で、ラワンのなかではやや重硬である。レッドラワン、タンギルなどはこれに入る。(2)白ラワン類 材は灰白、淡灰褐、淡紅褐色で、軽軟である。ホワイトラワン、アルモンなどはこれに入る。(3)黄ラワン類 材は淡黄、淡黄褐色で、中庸またはやや重硬である。イエローラワンなどはこれに入る。
[小林義雄 2020年11月13日]
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…南洋材が世界の他の熱帯地域からの木材と非常に異なっている点は,アジアの熱帯地域には数百種のフタバガキ科の樹種があり,しかもそれらが森林での優勢木となっていることである。その内でもラワン・メランチ類は,幹がまっすぐ(通直),大径で,材質が均質,しかも大量に得られるため,日本の木材工業の原料として非常に重要なものとなった。南洋材の中に含まれるラワン・メランチ類の比率は現在でも高い。…
…できあい品は,日本の場合,幅・長さが91cm×182cm(三六(さぶろく)板),世界的には121cm×242cm(四八(しはち)板)が標準サイズである。合板用原木は,日本では東南アジアから輸入されるいわゆるラワン類が圧倒的に多い。国産材ではブナ,カバ,ナラ,ハリギリなどが用いられていたが,現在では少なくなった。…
…果実には2枚の長翼がある。材は心材暗赤褐色,気乾比重0.65~0.85で,ラワンよりは硬く強度が大きく,工場や作業場の床板,機械類の台,トラックの荷台などに用いられる。しかし材面からやにが出やすく,造作材や家具材には適さない。…
…かつて輸入木材の首位にあったフィリピンは70年をピークとして大幅な減少に転じた。南洋材はラワンなどフタバガキ科の広葉樹がほとんどを占める。南洋材産地国では,自国における木材産業の発展を図るため,丸太輸出の制限を強めており,代りに製材,合板などの製品輸出を進めている。…
※「ラワン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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