リアリズム法学(読み)リアリズムほうがく(英語表記)legal realism; realism in law

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

リアリズム法学
リアリズムほうがく
legal realism; realism in law

(1) 1920~30年代にアメリカで興った法学上の一傾向。ネオ・リアリズム法学または新実在主義法学,現実主義法学とも呼ばれる。 J.フランク,K.ルウェリン,T.アーノルドなどがその代表者とされる。彼らの間に必ずしも全面的な方法論上の一致があるわけではないが,伝統的法学における観念的思考方法や形式論理的操作の偏重に反対し,法が実際に機能する裁判過程の経験的,事実的分析に考察の主眼をおく点において共通するものをもつ。思想的にはプラグマティズムや行動主義心理学などの影響が強い。 (2) スウェーデンの法学者 A.ヘーゲルストレームを祖とし,K.オリベクローナ,A.ロスなどによって代表される北ヨーロッパのリアリズム法学,スカンジナビアン・リアリズムをさす。アメリカのネオ・リアリズム法学が裁判過程の実証的分析を主要課題とするのに対して,法学上の伝統的な諸概念の形而上学的,観念的な性格を批判し,それを経験的に再構成しようとするところに特色がある。

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世界大百科事典 第2版の解説

リアリズムほうがく【リアリズム法学】

第1次,第2次両大戦間の時期のアメリカを席巻した法学上の一傾向で,J.フランクK.ルーウェリン,ムーアUnderhill Moore,オリファントHerman Oliphant,ローデルFred Rodell,コーエンFelix S.Cohenらはその代表的旗手である。法,とりわけ裁判について,旧来の〈ロマンティシズム,空想,美化を排斥し〉(フランク),現実を直視する立場がこれらの人たち(リアリスト)に共通しているといえる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

リアリズム法学
りありずむほうがく
realist jurisprudence

法を規範としてではなく、事実としてとらえようとする法学の潮流をさす。
(1)ホームズ、パウンドなどの影響の下で、1930年代に登場したアメリカ法学の学派で、ネオリアリズムneo-realismともよばれる。その出発点となったジェローム・フランクの『法と現代精神』(1930)は、法的安定性を神話であるとし、法解釈の客観性やとくに裁判官の事実認定の客観性を批判した。この潮流に属するのは、サーマン・アーノルド、フレッド・ローデル、カール・ルウェリンKarl Nickerson Llewellyn(1893―1962)などである。
(2)スウェーデンのウプサラ大学のアクセル・ヘーゲルストレームAxel Hgerstrm(1868―1939)を中心として、法の経験科学的理論を確立しようとした学派Scandinavian legal realismをさし、代表者はオリベクローナKarl Olivecrona(1897―1980)、ロスAlf Ross(1899―1978)などである。[長尾龍一]

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世界大百科事典内のリアリズム法学の言及

【法実証主義】より

…現代ではH.ケルゼン純粋法学H.L.A.ハートの現代分析法理学,およびそれらを批判的に継承する運動,あるいはスカンジナビアにおける心理主義的・科学主義的な〈法的リアリズム〉などがある。 このほか,法実証主義と目される法理論の中には実践的問題関心の強い,ベンサムの法理学やアメリカの社会学的・政治学的な〈法的リアリズム〉(リアリズム法学),さらにイデオロギー批判家としてのケルゼンの議論がある。
[特徴]
 すべての法実証主義の理論が以下のすべての問題場面で一定の見解をとるわけではないが,その多くは少なくとも次の五つの場面で下記の見解をとる。…

※「リアリズム法学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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