ロストジェネレーション(読み)ろすとじぇねれーしょん(英語表記)Lost Generation

翻訳|Lost Generation

デジタル大辞泉 「ロストジェネレーション」の意味・読み・例文・類語

ロスト‐ジェネレーション(Lost Generation)

第一次大戦への従軍体験から、戦後、社会のあらゆる既成概念に疑念を示し、虚無的傾向のうちに新たな生き方を追求した米国の作家の一群。ヘミングウェイドス=パソスフィッツジェラルドら。女流小説家G=スタインの命名。失われた世代。
日本のバブル経済崩壊後の超就職難の時代に学校を卒業し、就職活動をした世代。昭和40年代後半(1970年代前半)から50年代前半(1970年代後半)の生まれ。確かな就職先がなく、アルバイト派遣社員などで職を転々とする人が多く出た。氷河期世代。→就職氷河期
[補説]2は、安定した収入がなく、生活の基盤を確立できないため将来への希望を失う人も多い。この世代を「ロストジェネレーション」とよんだのは朝日新聞
[類語]ビートジェネレーションX世代Y世代Z世代団塊の世代しらけ世代バブル世代氷河期世代ミレニアル世代デフレ世代ゆとり世代

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精選版 日本国語大辞典 「ロストジェネレーション」の意味・読み・例文・類語

ロスト‐ジェネレーション

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] lost generation ) 第一次世界大戦によって宗教・道徳など社会のあらゆる既成概念の価値を見失い、絶望と虚無に陥った世代のアメリカ作家の一群。女流作家ガートルード=スタインが命名したもので、ヘミングウェーフォークナー、フィッツジェラルド、ドスパソスらが属する。失われた世代。
    1. [初出の実例]「自分たちは戦争の犠牲に供された世代の青年でありいはゆるロースト・ジェネレイションに属してゐること」(出典:親切な機械(1949)〈三島由紀夫〉)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロストジェネレーション」の意味・わかりやすい解説

ロスト・ジェネレーション(日本社会)
ろすとじぇねれーしょん
Lost Generation

一般に他世代に比べて雇用・教育・社会福祉面での負担を強いられ、価値観の転換を迫られた世代を意味するが、日本ではバブル経済崩壊後の就職氷河期に社会に出た世代をさす場合が多い。1990年代なかば以降の不況期に学校を卒業し、求人数が厳しく絞り込まれるなかで就職活動をした、1970年代~1980年代初頭に生まれた世代が該当する。格差問題が注目されるようになった2000年代なかばにロスト・ジェネレーションとよばれるようになり、「ロスジェネ」と略されるほか、「失われた世代」「さまよえる世代」「氷河期世代」「格差世代」などともいわれる。正社員として就職できず、アルバイト、派遣社員、契約社員などとして職を転々とするフリーターや、通学や求職活動もしないニートなどの比率が高い傾向にある。リーマン・ショックなどの不況期には職を失うリスクが高く、賃金水準も相対的に低いという特徴がある。こうした世代がそのまま中高年・高齢者になると、未婚人口が増え、社会保障制度が不安定になるなど、健全な社会の維持に支障をきたすとの指摘が労働経済学者などから出ている。このためロスト・ジェネレーションの中途採用促進や非正規雇用の待遇改善などが必要であるとされ、一億総活躍社会を掲げる第三次安倍晋三(あべしんぞう)改造内閣は、2016年(平成28)1月、多様な働き方の一環として同一労働同一賃金の実現を目ざす方針を表明した。

 もともとロスト・ジェネレーションは、青年期に第一次世界大戦を経験して既存の価値観に懐疑的であったヘミングウェイ、F・S・フィッツジェラルドら1920~1930年代に活躍したアメリカの作家群をさすことばであった。その後、1950年代の日本の「太陽族」、1980年代に繁栄の空虚さを小説に描いたアメリカのニュー・ロスト・ジェネレーション、1990年代以降の教育を受けていないアフリカの青年層など、価値観の大転換を経験したり、満足な教育・雇用・社会保障を享受できなかったりした世代をさすことばとして使われるようになった。

[矢野 武 2016年8月19日]


ロスト・ジェネレーション(アメリカ文学)
ろすとじぇねれーしょん
Lost Generation

アメリカにおいて、第一次世界大戦中に成年期を迎え、戦争体験を通じて、既存の思想、道徳、宗教に不信の念を抱き、またアメリカ文化の俗物性に絶望し、新しい生き方を求めた世代をいう。「失われた世代」「迷える世代」「喪失の世代」「幻滅の世代」などと翻訳されている。この名称は、G・スタインがパリでヘミングウェイにいった「あなたがたはロスト・ジェネレーションね」ということばを、ヘミングウェイが『日はまた昇る』(1926)の見返しに用いたことから有名になった。この世代の特色は社会の風潮に反抗し、固く自我を守るところにあり、ヘミングウェイ、ドス・パソス、スコット・フィッツジェラルド、フォークナー、カミングズ、M・カウリーら、優れた文学者を数多く生み出したところから、狭義では、これらの文学者集団をさしてロスト・ジェネレーションという。彼らは国外離脱者としてフランスに渡り、T・S・エリオット、J・ジョイス、E・W・L・パウンド、スタインらのモダニズムの感化を受けながら、それぞれ独自の文学的実験を試み、第二のアメリカン・ルネサンスともいうべき成果をあげた。彼らは文体もまた思想であることを示し、その後のアメリカ小説に大きな影響を与えている。しかし、1929年以後、大恐慌ファシズムの脅威など社会情勢の変化に伴って、ロスト・ジェネレーションも個人の世界に閉じこもることをやめ、社会的に積極的に行動するようになった。

[井上謙治]

『谷口陸男著『失われた世代の作家たち』(1966・南雲堂)』『高稿正雄著『「失われた世代」の作家たち』(1974・冨山房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ロストジェネレーション」の意味・わかりやすい解説

ロスト・ジェネレーション
lost generation

第1次大戦の惨禍を直接,間接に体験し,既成の理想や価値観に絶望したアメリカの〈生きる指針を見失った世代〉〈迷える世代〉。〈失われた世代〉と訳される。ヘミングウェーの《日はまた昇る》(1926)の題辞に引用されたG.スタインの言葉(You are all a lost generation)に由来するこの呼び名は,直接的にはこの小説で描かれているように,大戦の生々しい傷痕をかかえて1920年代のパリにたむろした虚無的,享楽的なボヘミアンたちを指す。一方,文学史の用語としてはとくにヘミングウェー,F.S.K.フィッツジェラルド(《夜はやさし》でこの世代の精細な心理描写を行った),E.E.カミングズ,J.ドス・パソスら,既存の権威やモラルの徹底した洗い直しと,大胆な手法上の実験とによってアメリカ文学に新時代を開いた作家や詩人の一群をいう。19世紀の末に生まれた彼らの多くは義勇兵として直接,大戦の恐怖と幻滅を味わい,戦後は主としてパリに滞在してヨーロッパのモダニズムの洗礼を受け(ローリング・トウェンティーズ),当時アメリカ文学の主流をなしていた19世紀的写実主義や〈お上品な伝統〉を離れた地点から,改めて自国の文学の活力と伝統を発見した。社会の〈良識〉や美名に対する強い疑念の表明,世界の不条理性の自覚,そこに住む個人の誇りと自由の追求,時間の推移に対する鋭い感覚,独自の文体の開発など,彼らの革新的な試みが20世紀文学の方向づけに果たした功績は大きい。
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知恵蔵 「ロストジェネレーション」の解説

ロストジェネレーション

ロスト・ジェネレーション(ロスジェネ)。直訳すれば「失われた世代」。本来は、第1次世界大戦後に活躍したヘミングウェイ、フィッツジェラルド、フォークナーなど米国人作家に代表される世代を指し、「迷える世代」「喪失の世代」などとも訳される。「朝日新聞」が2007年の年始特集で、バブル崩壊後の「失われた10年」に社会に出た若者たち(25~35歳)の実態を連載。この世代に多いフリーター、ニート、ひきこもり、派遣労働者、就職難民たちを総称する言葉として用い、次第に広がっていった。08年5月には、同世代の手による『ロスジェネ』(かもがわ出版)も創刊され、それと前後して雇用・経済の問題とこの世代とを結びつけて論じる時評も増えた。彼らはバブルの残像を知りながら、学卒時に就職氷河期を迎え、グローバル化や新自由主義経済が加速させた「格差社会」の中に投げ出される。その数は、2千万人弱。雇用機会を均等に与えられなかっただけでなく、長期の経済不況下にあって、非正規から正規雇用、再就職といった再チャレンジの道も閉ざされているため、最も割を食った「貧乏くじ世代」とも言われる。08年の金融危機による「派遣切り」の被害者も、非正規雇用者が多いこの世代に集中。上の世代からは、内向きで覇気がないなどと批判されがちだが、インターネット世代でもある彼らは、家族・地域・会社といった伝統的共同体とは別の「見えない他者」との緩やかな連帯を求める傾向が強い、とも指摘される。また、政治には無関心と見られていたが、07年4月に行われた統一地方選では多くのロスジェネ議員が誕生し、政界に新風を吹き込んでいる。

(大迫秀樹 フリー編集者 / 2008年)

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百科事典マイペディア 「ロストジェネレーション」の意味・わかりやすい解説

ロスト・ジェネレーション

ヘミングウェーを評したG.スタインの言葉。〈失われた世代〉の意。第1次大戦後の1920年代,米国を逃亡して西欧で文学を追求し,戦争体験等を不信感,喪失感をこめて書いた若い作家たちをさす。ほかにドス・パソスフィッツジェラルドら。
→関連項目ウィルソンカウリーカミングズ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロストジェネレーション」の意味・わかりやすい解説

ロスト・ジェネレーション

失われた世代」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のロストジェネレーションの言及

【アメリカ文学】より

…そこにアメリカ自然主義の特異性があるが,この流れが20世紀になってW.キャザー,S.アンダーソン,S.ルイスなどに受け継がれ,ドライサーの《アメリカの悲劇》(1925)において最高潮に達したと言えよう。 第1次世界大戦を経て,戦後のいわゆるロスト・ジェネレーションの作家たちは,1920年代の〈荒地〉的風景において,その名の示す通り,神の恩寵から見放された人間の状況を書いた。F.S.フィッツジェラルドは《偉大なるギャッツビー》(1925)その他の作品でジャズ・エージの夢が崩壊するさまを書き,ヘミングウェーは《陽はまた昇る》(1926)以下の作品において〈ハードボイルド〉と呼ばれる,タフ・ガイが非情に語るような文体を駆使して現代の空虚に生きる人間を示した。…

【ヘミングウェー】より

…しかもここに見られるいくつかのテーマ,例えば暴力と死の脅威にさらされた世界の不条理性の自覚,救いようのない戦いを強いられながら勇気ある敗者の誇りを貫こうとする不屈の意志,そして空虚な観念よりも純粋な感覚の充足に確実なよりどころを求める生き方などは,その後のすべての作品の基調を予告する。1926年の《日はまた昇る》は,パリにたむろするアメリカ,イギリスの〈国籍離脱者〉たちの無軌道な生活と,その底にひそむストイックな〈おきて〉への信奉ぶりを通じて大戦後の精神の荒廃を描き出す傑作として,作者を一躍〈ロスト・ジェネレーション〉の代弁者の地位に押し上げた。鍛えぬかれた羅列的口語体を駆使して刻々と展開する〈なまの現実〉を再現し,強烈な臨場感を与える彼のスタイルは,この作品と次の《武器よさらば》(1929)で完成の域に達し,多くの模倣者を生んだ。…

【ローリング・トウェンティーズ】より

…ディアギレフのバレエ・リュッス(ロシア・バレエ団)はパリ・ファッションを刺激した。ヘミングウェー,F.S.K.フィッツジェラルドなどのロスト・ジェネレーションに属する作家,ガーシュインやコール・ポーターなどの音楽家,そしてマン・レイなどの〈パリのアメリカ人〉たちがヨーロッパにジャズ,カクテルなどのアメリカン・スタイルを持ち込んだ。逆にファッションからアール・デコの家具に至るフランス文化がアメリカに送られた。…

※「ロストジェネレーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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