妖怪伝承の一つ。山野で通りすがりの人を脅かすといって恐れられる。単眼か片目かの区別ははっきりしない。姿も7~8歳の童児であったり,大入道と伝えるところや,片足片目の山の神という伝承もある。関東地方には,2月と12月のこと八日(ようか)にこの妖怪が家々にやってくるといって,庭先に目籠を掲げて退散させる風習があり,目籠は目が多いので,妖怪が恐れるのだと信じられていた。一つ目小僧がかつて神であったと推論したのは柳田国男で,祭祀の際に一般の人と区別するために片目をつぶして神の一族とした時代があったと説明している。それが信仰の衰微とともに,その神が誤って植物などで目を突いたりして片目になったのだと伝えられてきた。山の神や鎮守様が片目であるとか,寺社の池にすむ魚が片目であるという伝承は,そのなごりであるという。片葉の葦の伝承も同系統の伝説とみなされるというのである。これとは別に,一つ目小僧を鍛冶職と関連するとみる考え方もある。《日本書紀》に出てくる天目一箇(あまのまひとつ)命が鍛冶神であるという伝承とも結びつく。鉄の溶解を肉眼で見るために目をつぶした鍛冶職人が,神としてまつられたとする。鍛冶神を一つ目として伝承する例は各地にある。いずれにしても,片目である神の零落した姿が一つ目小僧であった。一方,鎌倉権五郎や平将門が片目であるという伝承は御霊(ごりよう)信仰との関連が深い。
執筆者:花部 英雄
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一つ目の妖怪(ようかい)。普通、7、8歳くらいの男児とする伝承が多い。岐阜では目一つ足1本の大入道であるといい、雪の朝に出現するという。人に危害を加えることはしないが、山野などに出現しては人々を驚かし恐怖を与える。関東地方では2月と12月の事八日(ことようか)にこの妖怪が現れるといい、庭先に目籠(めかご)を高く掲げて退散の呪(まじな)いとした民俗が残されている。この一つ目小僧と関連した伝承に、片方の目の神の伝説がある。武将や鎮守様が転んだ際に、胡麻(ごま)や栗(くり)、竹などで目を突き片方の目をつぶしてしまったという。そのためにこれらの植物は栽培しなくなったという。東北地方では11月23日に村々を訪れる神をダイシ様というが、この神は足が片方だという。柳田国男(やなぎたくにお)はこのような片方の目や足の神について、かつて祭日に神の一族であることを示すために体の一部を傷つけた名残(なごり)だろうと説いた。一つ目小僧はそうした神々の零落した姿であるという。しかしこれには批判的な説もある。
[野村純一]
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…そこから片目をつぶす形式が,人から動物の生贄にも適用されるにいたり,上記の片目の魚にまつわる種々のタブーが生まれたという。またいわゆる〈一つ目小僧〉も元来は片方の目をつぶされて神に捧げられたもの,ないしはそのことによって神の仲間となったもので,これが時の経過に従って神としての出自が不明になって,山野を漂泊する妖怪のごときものになったとする。一つ目目【野口 武徳】。…
…用の済んだ針を豆腐やこんにゃく,餅などに刺し,川へ流したり近くの社寺へ持ち寄って供養してもらうのが一般的で,全国の広い地域で2月もしくは12月の8日(こと八日)に行われている。これら両日を厄日と考え,一つ目小僧や厄病神の来訪を説いて,山へ入るなとか仕事を早く切りあげて家で静かにしていよとする伝承が東日本を中心に各地にあるが,針仕事を休むというのも,これらの日が仕事を避けて忌籠(いみごもり)すべき日であったからだと思われる。北陸地方の沿岸部では,12月8日には海が荒れてハリセンボン(針千本)という魚が打ち上げられるが,それを軒につるして厄よけにしたり,富山県のように嫁いじめの伝説と結合させ,嫁が投身してハリセンボンになって吹き上げられ姑の顔に食いついたという話を伝えている所もある。…
※「一つ目小僧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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