神話,昔話などに現れる他界・彼岸の住人,あるいはその世界と交渉をもつ者は,しばしば正常のものとは違った,ゆがんだ姿を与えられている。その異形のあり方は,小人,巨人,半人半獣,片足,片目など多様だが,いずれもこの世ならぬ異次元の世界に対する人々の畏怖,戦慄を表現している。ギリシア神話では一つ目の巨人キュクロプスが有名。片目というと日本では〈片目の魚〉の話が各地に広く流布している。それは鯉であったり鮒であったりするが,そのすむ池や川は多くが社寺と関係をもっている。柳田国男によれば,神への供物とするために魚を片目にして,常用の食物と区別された清浄で神聖なものとしたうえで,いわば禁制の魚として池などに一時放しておいたことから,片目の魚を食べるとたたりがあるという信仰が生まれ広がったという。さらに柳田はより古い形として,神への犠牲として選ばれた特定の人間の片目をつぶし,片足を折ってその神聖で特権的性格を強調する風習を想像している。そこから片目をつぶす形式が,人から動物の生贄にも適用されるにいたり,上記の片目の魚にまつわる種々のタブーが生まれたという。またいわゆる〈一つ目小僧〉も元来は片方の目をつぶされて神に捧げられたもの,ないしはそのことによって神の仲間となったもので,これが時の経過に従って神としての出自が不明になって,山野を漂泊する妖怪のごときものになったとする。
→一つ目 →目
執筆者:野口 武徳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…〈ひとつまなこ〉ともいう。両眼のうち一つを盲(めしい)にした片目も,のちに一つ目とされ,両者は混同されるようになった。
[日本]
一つ目の古い事例では,《古事記》や《古語拾遺》の中の天目一箇命(あめのまひとつのみこと)や,《出雲国風土記》《今昔物語集》などにみえる人を食った一つ目の鬼があげられる。…
…山野で通りすがりの人を脅かすといって恐れられる。単眼か片目かの区別ははっきりしない。姿も7~8歳の童児であったり,大入道と伝えるところや,片足片目の山の神という伝承もある。…
※「片目」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新