正極活物質に酸化水銀HgO、負極活物質に亜鉛Zn、電解液に酸化亜鉛ZnOを飽和させた水酸化カリウムKOHの30~40%水溶液を用いた一次電池。第二次世界大戦中にアメリカのルーベンSamuel Ruben(1900―1988)によって発明され、彼とアメリカのマロリーPhilip Rogers Mallory(1885―1975)によって実用化され、後にマロリー電池社(現、デュラセル。持株会社バークシャー・ハサウェイの子会社)が設立された。発明者名をとってルーベン電池、また両者の頭文字をとってRM電池、さらに酸化水銀電池ともいわれる。起電反応は以下のように示される。
(正極)
HgO+H2O+2e-―→Hg+2OH-
(負極)
Zn+2OH-―→ZnO+H2O+2e-
(全体)
HgO+Zn―→Hg+ZnO
起電力は1.35ボルト、エネルギー密度は105~120Wh/kgである。KOHのかわりに水酸化ナトリウムNaOHを用いて耐漏液性を改善したものもある。放電容量が大きく、アルカリマンガン電池の約2.5倍、酸化銀電池の約1.5倍ある。
水銀電池は温度特性や貯蔵性がよく、放電電圧が平坦(へいたん)であるなど一次電池としての特性に優れていて、ボタン形のものが補聴器や腕時計、カメラ、小形ラジオなどの電源に使用されてきた。しかし、水銀は環境負荷が大きいことから社会に受け入れられなくなり、日本工業規格(JIS。現、日本産業規格)の「アルカリ一次電池」(JIS C8511-1978)で制定されていた水銀電池は、1993年(平成5)の改正により規格から削除され、現在は生産されていない。その代替として空気電池(空気亜鉛電池)、酸化銀電池、リチウム電池、アルカリボタン電池などが使用されている。
[浅野 満]
『電気化学会編『電気化学便覧』(2000・丸善)』
陽極活物質に酸化水銀(Ⅱ)HgO,陰極活物質に亜鉛Zn,電解液に酸化亜鉛ZnOを飽和した30~40%水酸化カリウムKOH水溶液を用いた一次電池。1947年にアメリカのルーベンS.Rubenが発明したもので,発明者の名を冠してルーベン電池,あるいは発明者と製造会社であるマロリーMallory社の頭文字をとってRM電池ともいう。扁平型(ボタン型),円筒型などの種類がある(図1)。陽極はHgOと黒鉛の粉末を混合成形したもの,陰極はアマルガム化した亜鉛粉末を成形したものである。起電力は1.35Vで,マンガン乾電池よりもやや低いが,図2のように,端子電圧は放電末期に至るまで一定で,電圧安定性がよく,自己放電が少なく,エネルギー密度大というすぐれた特徴を有している。電子腕時計,電子制御カメラなどの電子機器の電源として用いられている。
執筆者:笛木 和雄
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