国民の代表機関である議会が一つの会議体だけで構成されているもの。二院制、両院制に対する語。議会政治の母国イギリスが、貴族・僧侶(そうりょ)身分と庶民部分をそれぞれ上院と下院に分属させ二院制の形態をとったため、その後の世界のほとんどの国々がこの二院制を採用している。日本も第二次世界大戦前には貴族院・衆議院、戦後は衆議院・参議院の二院制によって議会を構成している。
近代に入って最初に一院制を採用したのはピューリタン革命時代のイギリスで、ここでは国王を処刑し上院を廃止した(1649)ため、一時期下院だけの時代が続いた。その後、フランス革命直後のフランス議会も一院制を採用した(のちに二院制に改められた)。当時の上院は特権階級の利益を代表していたので上院の廃止が強く望まれたものと思われる。それと同時に、国民主権主義の立場から、国民を代表する会議体は単一でなければならないという考えが一院制採用の理論的根拠となったとも考えられる。第二次世界大戦後の東欧社会主義諸国のほとんどが、また中華人民共和国などが現在も一院制の代表機関を採用しているのも、国民の意志が正しく反映されるならば一院制でもよいという考えにたっているものといえよう。もっともソ連のような多民族国家からなる連邦国家においては、その代表機関は国民的部分と民族的部分を代表する二つの会議体から構成されていた。またソ連崩壊後のロシアでも二院制を採用している。
一院制の長所としては、立法や議事の決定が迅速に運び、二院制の場合に生じがちな無用な議事の遅滞を避けることができるという点があげられるが、その反面、一院だけでは議事の決定の際に慎重さを欠くおそれがあるという批判も聞かれる。資本主義国でも、フィンランド、デンマークなどが一院制を採用している。
[田中 浩]
議会構成の一つの型で,国民代表より成る単一の合議体だけで議会を構成する制度をさし,二院制と対比される。一院制が初めて採用されたのは,1789年のフランス革命議会においてであった。当時のフランスでは,主権は単一不可分であるから,国民の主権を代表する議会もまた不可分でなければならず,議会を二院に分けることは,国民の意思を二つに分離することになるとする理論が広く受け入れられていた。シエイエスの〈上院は何の役に立つであろうか。それがもし下院と一致すれば無用であり,一致しなければ有害である〉とする有名な言葉は,こうした立場を要約したものといえよう。一院制の長所としては,民意の分裂をもたらさないことのほかに,議事が迅速に進むこと,保守的な上院による民主的改革への妨害を免れうることなどがあげられる。しかしその反面,一院制には,議会の意思決定が慎重を欠いて軽率に進められるとか,多数党の横暴によって少数派の権利が侵されるとかいった欠陥もあり,一院制が二院制よりすぐれた制度であると断定することはできない。現代の世界では,二院制を採用する国が圧倒的に多く,一院制をとる国は少ない。一院制をとるおもな国としては,ユーゴを除く東欧の人民民主主義諸国,ノルウェーを除く北欧諸国,ハイチ,ケニア,パナマなど発展途上地域の新興諸国などがあげられる。
執筆者:阿部 斉
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