日本大百科全書(ニッポニカ) 「シエイエス」の意味・わかりやすい解説
シエイエス
しえいえす
Emmauuel Joseph Siéyès
(1748―1836)
フランスの政治家。プロバンス州のフレジュスに生まれる。司祭になるが、ルソーに私淑し、1789年3月『第三身分とは何か』を著し、フランス革命の指導原理を創造。国民に「何者かになろう」と呼びかけた。同年開かれた三部会の議員に選ばれ、三部会を国民議会に改組する立憲派の先頭にたち、初期革命の推進者として活動した。「1791年憲法」の成立後、一時政界を離れたが、1792年9月国民公会の議員に返り咲く。しかし、ロベスピエールから「もぐら」と称されたように、多数議員の集まる平原派の群れに埋もれ、人民主義の狂態を冷眼視しつつ、沈黙を守って恐怖政治を生き続けた。1799年総裁政府の大臣につくが、エジプトから帰国したナポレオンを擁して、ブリュメール(霧月)のクーデターを計画し、統領政府を樹立。ナポレオンとともに統領(執政)に就任するが、まもなく彼と折り合わず、政界を退いた。アカデミーの会員に推され、百日天下期には伯爵に叙せられた。王政復古後にはルイ16世の処刑に賛同したかどで、国外追放にあい、オランダに一時身を避けた。
[金澤 誠]
『大岩誠訳『第三階級とは何か』(岩波文庫)』