大乗仏教における3種類の教え。乗は〈乗物〉であって,人間が悟りの境界へ至るための乗物すなわち教えを意味している。大乗仏教では全仏教を声聞乗(しようもんじよう),縁覚乗(えんがくじよう),菩薩乗(ぼさつじよう)の3種に分け,それぞれ能力の異なった3種類の対象のために異なった教えがあるとしている。声聞は最も能力の劣ったもので,仏の声に導かれてみずからの悟りのみを求めるものであり,次位の縁覚はひとりで悟りを開いたもの,最上位の菩薩はみずからのためのみならずいっさいの人間の悟りのために修行しているものを意味し,声聞,縁覚は自利,菩薩は自利利他とする。このように,仏教には高低3種の教え・修行法があり,それぞれに対象や内容,さらに到達しうる境地を異にするという考えに対立して,《法華経》などでは,これらの3種の教えは,本質的に異なるものではなく,人を導く手段として異なった説き方がされただけで,それらは一つの大乗仏教に帰するとする一乗教(いちじようきよう)が強調された。
執筆者:井ノ口 泰淳
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仏教の教理用語。サンスクリット語ではトリーニ・ヤーナーニtrīi yānāniあるいはヤーナ・トラヤyāna-trayaといい、いずれも「三つの乗り物」の意を表す。「乗」(乗り物)は、人々を乗せて仏教の悟りに至らしめる教えを譬(たと)えていったもので、大乗仏教ではそれに声聞(しょうもん)乗(仏弟子の乗り物)、縁覚(えんがく)乗(ひとりで悟った者の乗り物)、菩薩(ぼさつ)乗(大乗の求道(ぐどう)者の乗り物)の三つがあるとする。ただし、部派仏教(いわゆる小乗仏教)ではこのうちの菩薩乗を説かず、かわりに仏乗(仏の乗り物)をたてる。初期大乗経典の『法華経(ほけきょう)』では、三乗は一乗(仏乗、一仏乗ともいう)に導くための方便であり、真実なる一乗によってすべてのものが等しく仏になると説いている。
[藤田宏達]
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…一つの乗りものという意味である。一仏乗のことで,三乗(声聞乗,縁覚乗,菩薩乗)に対する語。衆生を乗せて悟りにおもむかせる教えにたとえたもの。…
…3巻。法相宗において人の資質や能力に応じて声聞(しようもん)・縁覚・菩薩に固有の3種の悟りの道があるとする三乗説を反駁し,天台宗の立場から《法華経》に説く,悟りに導く教えはただ一つしかなく,いかなる衆生もすべて仏になれるとする一乗説を主張。一乗思想が真実の教えで,三乗思想が方便であることを諸経論の引用で立証した。…
… 27(または28)章よりなるが,第2章〈方便品〉を中心とした部分が最も早く成立し,その思想は〈開三顕一〉〈開権顕実〉などと呼ばれる。すなわち,仏は衆生の機根に応じて三乗(声聞乗,縁覚乗,菩薩乗)の教えを説いたが,究極においては真理はただ一つであるとして,従来の大乗・小乗の対立の止揚統一を図っている。遅れて成立した後半部分の中心は〈如来寿量品〉で,ここでは菩提樹下で成仏した釈迦は仮の姿で,実は五百塵点劫(じんてんごう)という大昔に成仏していると説き,永遠の仏(久遠実成(くおんじつじよう)の釈迦)の理想を明らかにしている。…
※「三乗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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