仏教の教理用語。サンスクリット語のエーカ・ヤーナeka-yāna(一つの乗り物)の訳語で、乗(乗り物)は、人々を乗せて仏教の悟りに赴かせる教えをたとえていったもの。仏教にはさまざまな教えがあるが、いずれも仏が人々を導くための手段として説いたもので、真の教えはただ一つであり、その教えによってすべてのものが等しく仏になると説くことをいう。この主張はインドの初期大乗仏教において成立したもので、とくに『法華経(ほけきょう)』で強調されている。すなわち、仏の教えは人々の資質や能力に応じて声聞(しょうもん)乗(仏弟子の乗り物)、縁覚(えんがく)乗(ひとりで覚(さと)った者の乗り物)、菩薩(ぼさつ)乗(大乗の求道(ぐどう)者の乗り物)の三乗に分けられるが、この三乗は一乗(一仏乗ともいう)に導くための方便(ほうべん)にすぎず、究極的にはすべて真実なる一乗に帰すと説く。この一乗の思想は大乗仏教の精髄を示すものとして後代の仏教に大きな影響を与え、中国の天台(てんだい)宗、華厳(けごん)宗においてとくに重視された。
[藤田宏達]
梵語eka-yānaの訳。一つの乗りものという意味である。一仏乗のことで,三乗(声聞乗,縁覚乗,菩薩乗)に対する語。衆生を乗せて悟りにおもむかせる教えにたとえたもの。仏陀は人間の素質や能力に応じて種々の説(三乗)を説いたが,それらは人びとを導くための方便にすぎず,実は唯一つの真実の教えがあるのみで,それによっていかなる人間もすべて平等に仏に成ることができると説く。法華・勝鬘・華厳等の大乗経典の所説で,とくに《法華経》(方便品)は,三乗の教えを方便の権説とし,一乗の教えのみが真実説であり,三乗教も究極的にはこの一乗教に帰するものであることを明らかにしたので有名。これを《法華経》の〈一乗開会(かいえ)〉という。中国唐代以来,天台宗・華厳宗と法相宗との間で,三乗・一乗の方便・真実を争う議論がくりかえされ,これを三一権実論争という。日本では,最澄と徳一との論争が有名である。
→三乗
執筆者:薗田 香融
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…また分家,分派は14家に及び,これらを脇後藤と称しており,その中では加賀後藤が最も栄え,金沢で製作を続けた。幕末には京の七郎右衛門家に一乗(1791‐1876)が出て,一世の名工として名をあげ,後藤家の掉尾を飾っている。【原田 一敏】。…
…浜野政随・矩随,大森英秀・英満,石黒政常・政美,岩本昆寛,染谷知信,鉄元堂正楽,大月光興,藻柄子宗典らが著名である。幕末には後藤家の掉尾を飾る一乗(1791‐1876)が,原則として鐔を製作しなかった後藤家一門にあって鐔の製作に乗り出し,格調ある作風を展開した。また加納夏雄は対象を写生画風に鉄鐔に表現して独自の作風を樹立した。…
…3巻。法相宗において人の資質や能力に応じて声聞(しようもん)・縁覚・菩薩に固有の3種の悟りの道があるとする三乗説を反駁し,天台宗の立場から《法華経》に説く,悟りに導く教えはただ一つしかなく,いかなる衆生もすべて仏になれるとする一乗説を主張。一乗思想が真実の教えで,三乗思想が方便であることを諸経論の引用で立証した。…
※「一乗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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