出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
能の曲名。四番目物。狂女物。世阿弥時代からあったらしい能。シテは千満(せんみつ)の母(狂女)。子どもを人買いにさらわれた母親(前ジテ)が,清水の観音に参ると,三井寺へ行けという夢の告げを受ける。夢占いの男(アイ)の判断も吉だったので,喜んで近江に向かう。三井寺では,住職(ワキ)たちが稚児(子方)を連れて十五夜の月見をしている。一方,母親は,長らくの物思いで物狂い(後ジテ)となったが,道を急いで三井寺に着く(〈カケリ・上歌(あげうた)〉)。狂女は,能力(のうりき)(アイ)の突く鐘の音に引かれて鐘楼に近づき,とがめられると古詩を引いて許しを求め,みずから鐘を突いて戯れる(〈鐘ノ段〉)。また興奮がおさまると,静かに澄み渡る琵琶湖の夜景を心ゆくまで眺めて時を過ごす(〈クセ〉)。そのうち月見の席の稚児がわが子の千満と知り,狂気も直って連れ立って帰って行く。狂女物の中でも屈指の名作である。沈静の場と興奮の場を交互に配して美しく作曲されている。長唄《娘道成寺》に詞章が引用されている。
執筆者:横道 万里雄
→園城寺(おんじょうじ)
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…山号は長等山。俗に三井寺といい,山門(延暦寺)に対して寺門ともいう。寺伝では,大友皇子の発願にもとづき,その子大友与多麿が686年(朱鳥1)に開創したというが,これは山門に対抗するための付会説で,実際には出土の瓦から,当地に住む大友村主(すぐり)氏の氏寺として白鳳時代に創建されたものであろう。…
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