伊豆諸島の大島(おおしま)(東京都大島支庁大島町)の大部分を占める二重式の大島火山の中央火口丘(758メートル)。三原新山、内輪山ともいう。大島火山は玄武岩質の活火山で、過去一万数千年間は、平均約150年間隔で大噴火を反復してきたが、直径3~4キロメートルの東方に開くカルデラは、5~6世紀ごろの2回の大噴火に伴って形成され、現在の中央火口丘・三原山の山体は、最後の1777~1779年(安永6~8)大噴火で生じた。以後の諸噴火は三原火口内でおきたが、1986年(昭和61)11月には、同火口やカルデラ床のほか、北側外輪山でも割れ目噴火した。溶岩流が集落に迫り、強震が続発し、諸所で火山性らしい種々の異常現象が認められたため、ほぼ全島民約1万人が、約1か月間、島外に避難した。カルデラ外での噴火は1421年(応永28)大噴火以来である。この火山はストロンボリ式(小爆発を間欠的に反復)ないしハワイ式(溶岩が噴泉をなして流出)の噴火をよくするが、大噴火は激烈なスコリア(岩滓(がんさい))噴出、溶岩流出、長期にわたる断続的火山灰噴出が順次展開され、溶岩流が海に達したことが多い。中噴火は平均三十数年おきにおき、通例、溶岩流はカルデラ内にとどまった。1986年噴火の噴出物総量は約6000万トンで、1950~1951年の中噴火程度だったが、当分、火山活動の推移はとくに警戒を要する。1987年、1988年、1990年にも小噴出した。径約800メートルの三原火口内の径約400メートルの火孔は、静穏期には深さ約500メートルにもなるが、活動期には浅くなり、火山活動長期予測に役だつ。島の最高峰は、1986年に三原火口内にできた噴石丘であるが、その崩壊や次の噴火などで、火口内の地形は変動する。
三原山の噴火は御神火(ごじんか)と仰がれ、絶えることのない噴煙は大島のシンボルで、観光客が多いが、1957年には噴石で死者1、傷者53を出した。伊豆大島火山防災連絡事務所が常時火山観測をしており、東大地震研究所の火山観測所もある。富士箱根伊豆国立公園に属し、カルデラ縁までバスの便がある。なお、1933年(昭和8)2月、東京の一女学生の前記火孔への投身自殺が新聞で大々的に報じられたのをきっかけに、半年間に129人(うち女性12人)もの自殺者があり、その大半が18歳から25歳までの青年男女だったため、一躍、自殺の名所にされ、自殺者が後を絶たなかったが、第二次世界大戦から戦後にかけてようやく自殺者はまれになった。
[諏訪 彰]
『地質調査所発行『特殊地質図26 伊豆大島火山1986年の噴火』(1987)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
東京都,伊豆諸島の大島中央部にある火山。標高759m。大島全体が玄武岩質の二重式成層火山で,三原山はそのカルデラ内に生じた後カルデラ丘にあたる複成スコリア丘である。カルデラ形成後,安永噴火(1777-78)までに十数回の噴火を記録し,降下スコリア,火山灰,溶岩流などの噴出物が島を広く覆っている。現在の三原山の山体は最後の安永噴火によってできたもので,以後の中小規模の噴火はいずれも三原山火口内で生じたが,1950-51年の中噴火では火口からカルデラ床へ溶岩が流出した。噴火は御神火と呼ばれて島民に畏敬されてきたが,外輪山の御神火茶屋から〈砂漠〉と呼ばれる広いカルデラ内を歩いて中央火口丘の火口付近まで達することができ,また火口底の溶岩が夜空に映える〈お映え〉や今なお立ちのぼる噴煙,山頂からの富士山や天城山の雄大な眺望によって大島観光の中心となっている。86年11月,安永噴火に匹敵する大噴火を起こし,溶岩が元町地区に接近したため,一時全島民に島外避難命令が出された。
執筆者:中村 一明+大村 肇
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…八丈島は北西部の西山(八丈富士。854m)と南東部の東山(三原山。701m)の両火山とその間の中央低地からなる。…
…人口9693(1995)。活火山三原山(758m)を最高点とする火山島である。北北東~南南西に長い紡錘形の島で,東部や北部の海岸は急崖をなす。…
…山頂直下3~4kmに存在するマグマ溜り内部にあったマグマの一部が側方に流出するため天井部が陥没するもので,溶岩は必ずしも山頂火口から流出する必要はない。たとえば伊豆大島では,約1300年前に起こった大噴火により大島火山の山頂部が陥没し,5km×4km,深さ300m以上のまゆ形のカルデラを生じている(なお,その後の噴火によってカルデラ底は溶岩で埋められ,中央火口丘の三原山が成長した)。(b)じょうご形カルデラ 軽石や火山灰の大規模な噴火に伴って火口周辺が陥没して生じる。…
※「三原山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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