下戸（読み）ゲコ

デジタル大辞泉

げ‐こ【下戸】

１ 酒の飲めない人。酒が嫌いな人。⇔上戸じょうご。
２ 律令制で、戸を大戸・上戸・中戸・下戸に分けたうちの最下級。徴発に応じて出す壮丁が三人以下の戸。

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

げ‐こ【下戸】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 令制で、戸の等級の一つ。構成員の少ない戸。家族の少ない世帯。定数は決まっていないが、「慶雲三年格」では正丁（成人男子）二人としている。
   1. [初出の実例]「凡課_二桑漆_一。上戸桑三百根。漆一百根以上。中戸桑二百根。漆七十根以上。下戸桑一百根。漆根以上」(出典：令義解（718）田)
3. ② 下層階級。貧民。
   1. [初出の実例]「下戸の小民のつかれよわい者をば先づ上に見て」(出典：史記抄（1477）一六)
   2. [その他の文献]〔史記‐酷吏伝〕
4. ③ 酒の飲めない人。酒を好まない人。⇔上戸。〔色葉字類抄（1177‐81）〕
   1. [初出の実例]「声をかしくて拍子とり、いたましうするものから、げこならぬこそをのこはよけれ」(出典：徒然草（1331頃）一)

出典　精選版 日本国語大辞典

改訂新版　世界大百科事典

下戸 (げこ)

《魏志東夷伝》にみられる社会階層。3世紀中葉を中心とした時期に，高句麗，夫余，濊（わい），韓，倭など東夷全域に存在していた。本来下戸は中国で使用された概念であるが，《魏志東夷伝》のそれは固有の意味をもっている。すなわち，〈奴僕〉のごときものであり，軍糧を担って諸加（首長層）とともに戦場に赴き，大家（支配層）に〈米糧，魚塩〉を供給する義務を負う存在であった。彼らは邑（村）落共同体の一般成員であり，豪民や渠帥などの邑落首長に統率され，さらにその邑落は王族や諸加によって支配されていた。各種族によって不均等はあるが，総じていえば，下戸は邑落共同体を基礎として累層的に編成された政治社会の被支配者階級である。古代国家形成過程における階級支配の一端を示すものといえる。
執筆者：木村 誠

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

山川 日本史小辞典 改訂新版

下戸
げこ

「魏志」東夷伝にみえる被支配民。倭人条(「魏志倭人伝」)のほか，高句麗・夫余(ふよ)・濊(わい)・韓などの条にもみえ，各地の固有の名称というより中国人による一般庶民の呼称と考えられる。倭人条には「大人(たいじん)は皆四・五婦，下戸も或は二・三婦」とか，「下戸，大人と道路に相逢えば，逡巡して草に入り，辞を伝え事を説くには，或は蹲(うずくま)り，或は跪(ひざまず)き，両手は地に拠り，之が恭敬を為す」など大人と下戸の支配・服従関係が記される。

出典　山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」

旺文社日本史事典 三訂版

下戸
げこ

古代の下層身分の一つ
一般民衆をさす。『魏志』倭人伝によると，邪馬台国 (やまたいこく) には支配層である大人 (たいじん) ，一般民衆である下戸，国家的奴隷である生口 (せいこう) という身分秩序があった。

出典　旺文社日本史事典 三訂版

普及版 字通

【下戸】げこ

貧民、また酒を飲めぬもの。

字通「下」の項目を見る。

出典　平凡社「普及版 字通」

日本大百科全書(ニッポニカ)

下戸
げこ

→上戸・下戸

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)

世界大百科事典（旧版）内の下戸の言及

【上戸･下戸】より

…上戸は酒を多く飲む人，下戸は酒が飲めぬ人をいう。いずれも平安時代には使われていた語で，上戸は《大鏡》，下戸は《色葉字類抄》に見られる。…

※「下戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」