京都府北部,与謝郡の町。2006年3月岩滝(いわたき),加悦(かや),野田川(のだかわ)の3町が合体して成立した。人口2万3454(2010)。
与謝野町北東端の旧町。与謝郡所属。人口6539(2005)。東は天橋立の砂嘴(さし)により宮津湾から区切られた阿蘇海に面し,野田川,男山川の小三角州が占め,西は標高300mの花コウ岩山地が占める。山地には宮津と奥丹後をつなぐ古い往還が数本通っている。近世から機業(丹後縮緬)が盛んで,天領や峰山藩領の年貢積出港としても栄えた。幕末には廻漕問屋が兼営する糸絹問屋が勢力をもち,京問屋に代わって機屋を支配した。商業も発展し,丹後の自由民権運動のにない手を多く輩出した。現在でも丹後機業関係の事業所が集中し,風呂敷などの小物の生産が多い。
与謝野町南部の旧町。与謝郡所属。人口7526(2005)。南東端に鬼退治の伝説で名高い大江山があり,西は丹後山地の江笠山連峰を境に兵庫県に接する。町域の大部分は山林で,北流する野田川に並行して走る国道176号線沿いに市街地が形成されている。丹後地方でもっとも早く開発が進んだ地で,蛭子山(えびすやま)古墳(史),作山古墳(史)をはじめ多数の古墳が分布する。享保年間(1716-36)より始まった丹後縮緬の産地であり,全戸数の半数近くが織物業に従事しているが,近年の繊維不況で打撃を受けている。農業は米作を主に,野菜,タバコ,茶の栽培が行われる。また大江山の森林観光レクリエーション開発も行われている。JR宮津線(現,北近畿タンゴ鉄道宮津線)の丹後山田駅(現,野田川駅)からバスが通じる。
与謝野町中部の旧町。与謝郡所属。人口1万0841(2005)。加悦谷(かやだに)盆地の北半分を占め,中央部を野田川が北東流し,東西の山地から香河川,岩屋川が注ぐ。四辻,三河内(みごち)が中心集落で,機業が盛ん。加悦谷は丹後縮緬の創業地であり,高級品産地として知られるが,経営規模は零細で農業などとの兼業も多い。この地方では年間190日に及ぶ降雨降雪があり,特に秋には丹後特有の〈うらにし〉と呼ばれる時雨がある。北近畿タンゴ鉄道宮津線が通る。
執筆者:松原 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
京都府北西部、与謝(よさ)郡にある町。西部を兵庫県と接する。2006年(平成18)、同郡岩滝町(いわたきちょう)、加悦町(かやちょう)、野田川町(のだがわちょう)が合併して成立。加悦谷(かやだに)とよばれる野田川流域の平野と、これを取り囲む大江(おおえ)山(832メートル)をはじめとする丹後(たんご)山地の山々からなり、北東は一部で宮津(みやづ)湾の内海である阿蘇海(あそのうみ)に面する。京都丹後鉄道宮豊線、国道176号、178号、312号などが通じる。自然・気候環境でみると、冬季には積雪も多い南部山間地と、阿蘇海に臨む北部平野に分かれる。1998年(平成10)にガラス製釧(くしろ)(腕輪。国指定重要文化財)などが発見された弥生時代後期の大風呂南墳墓群(おおぶろみなみふんぼぐん)、ともに国指定史跡である蛭子山(えびすやま)古墳、作山(つくりやま)古墳など遺跡も多い。蛭子山・作山両古墳は歴史公園として復原整備。江戸時代以来、機織業が盛んで、京丹後(きょうたんご)市とともに丹後縮緬(ちりめん)の主産地として知られた。2001年(平成13)岩屋(いわや)に老舗の織物工場跡を活用して丹後ちりめん歴史館が開館。加悦の中心街区には「ちりめん街道」の通称がある。近世から昭和初期に建てられた建造物が一体となって織物の町として栄えた特色ある景観をよく伝え、重要伝統的建造物群保存地区に選定される。江戸時代には阿蘇海に面し、野田川の河口港であった岩滝も廻船(かいせん)業、生糸・縮緬の商いで賑わった。1926年(大正15)に開業、1985年(昭和60)に廃止となった加悦鉄道は、その間、縮緬や大江山のニッケル鉱石の輸送に活躍(鉱石運搬は1945年に廃止)、加悦SL広場に修復された機関車、木造客車などを展示・保存。また旧加悦駅舎は移設して加悦鉄道資料館として利用している。板列八幡神社(いたなみはちまんじんじゃ)の木造女神坐像2体は国指定重要文化財。施薬寺(せやくじ)は与謝蕪村(よさぶそん)ゆかりの寺で蕪村の描いた屏風(びょうぶ)1双を蔵する。面積108.38平方キロメートル、人口2万0092(2020)。
[編集部]
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