丹後国(京都府)に産する染め加工下地の白ちりめん。生地に立体的な美しさを出す皺(しぼ)は,強撚の緯糸を用いて織り,それを精練して生じさせる。丹後はもともと精好(せいごう),つむぎなどを産していたが,18世紀前半に京都の西陣から技法を導入し,宮津藩,峰山藩,久美浜代官所3領下の町村で盛んにちりめんを生産するようになった。奥州福島糸を原料としたちりめんは株仲間を組織する京問屋へ飛脚によって送られ,染色・加工のうえ委託販売に付された。機屋の多くは2機台前後を設備する農家などで,少数の奉公人を雇う経営が多かった。機屋には自営機のほか糸問屋その他から原料の生糸を配られて織賃だけを稼ぐ多数の掛機や歩機があった。小規模経営の機屋は,製品販売を独占する京問屋に従属し糸商の問屋制的支配を被りやすかったばかりでなく,機株制度などを通じて領主側からも規制されていたから,領主,商人,機屋の間にしばしばトラブルが起こった。だがその間,例えば宮津藩における1862年(文久2)の織機数1806台は1803年(享和3)に比べて約2倍に増加している。明治以降は80年前後の生産拡大期を経て,20世紀初頭に問屋制前貸形態がいっそう普及し,1920年代には力織機化も進んだ。第2次大戦後も零細な賃機の展開を軸に復興したが,73年のオイル・ショックを契機に成長が止まっている。
執筆者:工藤 恭吉
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京都府の与謝(よさ)郡と京丹後市、およびその付近で生産される縮緬。とくに中心地は京丹後市の峰山(みねやま)町と網野(あみの)町。この地方の縮緬生産は、享保(きょうほう)年間(1716~36)に京都西陣(にしじん)より技術を導入し、農家の副業として生産が行われ、友禅染め用生地(きじ)として京都の問屋と密接な関連のもとに急激な発展をみた。製品は、ほかの地方の縮緬と比較してしぼが細かく、友禅染め・小紋染め生地として最適のものであった。もと白生地の生産だけで精練はすべて京都で行われていたが、1928年(昭和3)から現地で精練する国練(くにねり)が開始され、品質の統一に役だち、縮緬生産の大部を占めた。しかし現在では合繊の進出と京都の動向に左右され、生産制限をしている状態である。
[角山幸洋]
京都府丹後地方で生産された縮緬。1720年(享保5)峰山地方に,22年加悦谷(かやだに)地方に,いずれも京都西陣から製法が伝えられたという。製品の大部分は,飛脚とよばれる運搬業者を介して京都の問屋に出荷された。丹後機業は京都問屋と西陣の支配をうけつつも,宮津・峰山両藩の保護もあり,めざましく発展した。明治期以降も零細規模ながら存続した。
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…こうした需要拡大を背景に,18世紀に入ると西陣の技術が各地へ伝えられて地方機業が発展するようになる。丹後地方では1719年(享保4)と22年に西陣の縮緬製織の技術を習い帰った者たちが丹後縮緬をつくりはじめ,その技術は52年(宝暦2)に近江長浜へも伝えられて長浜縮緬の生産が開始された。また関東の桐生織物にも1738年(元文3)に西陣織物師弥兵衛により高機技術が導入され,しだいに高級織物が生産されるようになった。…
…この制度は明治初年の土地私有制度の施行とともに大部分消滅した。 丹後縮緬(ちりめん)の創業地は,与謝郡加悦谷地方(現,加悦町と野田川町)と中郡峰山(現,峰山町)の2ヵ所で,いずれも1720年ころ京都西陣より技術を修得し副業として始めたが,その普及は著しく,文久年間(1861‐64)には869機を数えた。企業の規模はいずれも零細で,掛機・歩機のかたちで親方機屋に依存していた。…
…1622年(元和8)京極高知の子高通が峰山に分封され,以後,峰山藩(1万石)の陣屋町として発展した。18世紀初めごろから縮緬(ちりめん)機業が盛んになり,与謝郡加悦谷(かやだに)とともに丹後縮緬の創業地とされる。藩の奨励もあって縮緬屋仲間が結成され,機株と鑑札が定められたりした。…
※「丹後縮緬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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