中村時蔵(読み)なかむらときぞう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「中村時蔵」の意味・わかりやすい解説

中村時蔵
なかむらときぞう

歌舞伎(かぶき)俳優。屋号は4世まで播磨(はりま)屋、5世は万(よろず)屋。

服部幸雄

初世

(1849―1919)明治から大正にかけて活躍した3世中村歌六(かろく)の前名。

[服部幸雄]

2世

(1876―1909)3世歌六の養子。女方(おんながた)、二枚目。1908年(明治41)中村歌昇(かしょう)から2世を襲名したが、翌年没した。

[服部幸雄]

3世

(1895―1959)3世歌六の次男で、初世中村吉右衛門(きちえもん)の弟。17世中村勘三郎の兄。1916年(大正5)中村米吉(よねきち)から3世時蔵を襲名。女方ながら二枚目の立役(たちやく)も勤め、所作事(しょさごと)にも優れていた。初世吉右衛門の相手役として活躍、昭和の立女方(たておやま)として功績があった。1958年(昭和33)日本芸術院会員。

[服部幸雄]

4世

(1927―62)3世の次男。2世中村梅枝(ばいし)、6世中村芝雀(しばじゃく)を経て1960年(昭和35)4世時蔵を襲名。生来の美貌(びぼう)で、演技にも優れた才能をみせて人気があり、次代を担う女方と期待されたが、大成を待たずに急逝した。

[服部幸雄]

5世

(1955― )4世の長男。1981年(昭和56)6月、3世梅枝から5世を襲名。2008年(平成20)芸術院賞受賞。

[服部幸雄]

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新撰 芸能人物事典 明治~平成 「中村時蔵」の解説

中村 時蔵(3代目)
ナカムラ トキゾウ


職業
歌舞伎俳優

肩書
日本芸術院会員〔昭和32年〕

本名
小川 米吉郎

別名
前名=中村 米吉(2代目)

屋号
播磨屋

生年月日
明治28年 6月6日

出生地
大阪府 大阪市

経歴
明治33年2世中村米吉として初舞台、大正5年市村座で3代目時蔵を襲名する。このころから兄吉右衛門の女房役をつとめ、4代目市川男女蔵(のちの3代目左団次)と人気を分けた。その後、当代随一の女形と称されたが、特に世話女房役が得意で、芸術院会員に推された翌年に他界

受賞
日本芸術院賞〔昭和25年〕 毎日演劇賞〔昭和25年〕

没年月日
昭和34年 7月12日 (1959年)

家族
父=中村 歌六(3代目),兄=中村 吉右衛門(初代),弟=中村 勘三郎(17代目),長男=中村 歌昇(2代目),二男=中村 時蔵(4代目),三男=小川 三喜雄(映画プロデューサー),四男=萬屋 錦之介,五男=中村 嘉葎雄

伝記
歌舞伎座の怪人 中村 獅童 著(発行元 講談社 ’09発行)


中村 時蔵(4代目)
ナカムラ トキゾウ


職業
歌舞伎俳優

本名
小川 茂雄

別名
前名=中村 梅枝(2代目),中村 芝雀(6代目)

屋号
播磨屋

生年月日
昭和2年 12月1日

出生地
東京・永田町

経歴
昭和11年に中村梅枝を名乗って初舞台、28年6世中村芝雀を継いだが、35年に前年亡くなった父の名跡の4世時蔵を襲名した。天性の美貌で将来を期待されたが、興行中に急逝する。

没年月日
昭和37年 1月28日 (1962年)

家族
父=中村 時蔵(3代目),兄=中村 歌昇(2代目),弟=小川 三喜雄(映画プロデューサー),萬屋 錦之介,中村 嘉葎雄,長男=中村 時蔵(5代目),孫=中村 梅枝(4代目),中村 萬太郎,祖父=中村 歌六(3代目)

親族
伯父=中村 吉右衛門(初代),中村 勘三郎(17代目)

伝記
新日本現代演劇史〈2〉安保騒動篇 1959〜1962勘三郎の天気 大笹 吉雄 著山川 静夫 著(発行元 中央公論新社読売新聞社 ’09’88発行)


中村 時蔵(2代目)
ナカムラ トキゾウ


職業
歌舞伎俳優

別名
前名=中村 種太郎,中村 歌昇(初代)(ナカムラ カショウ)

屋号
播磨屋

生年月日
明治9年

経歴
3代目中村歌六の養子となる。明治41年2代目時蔵を襲名したが、翌年没。

没年月日
明治42年 (1909年)

親族
義父=中村 歌六(3代目)

出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「中村時蔵」の意味・わかりやすい解説

中村時蔵 (なかむらときぞう)

歌舞伎俳優。5世まである。(1)初世 3世中村歌六の前名。(2)2世(1876-1909・明治9-42) 3世歌六の養子中村種太郎から歌昇と改名,1908年時蔵をついだが翌年没。(3)3世(1895-1959・明治28-昭和34) 本名小川米吉郎,3世歌六の次男。1900年米吉の名で初舞台。兄吉右衛門とともに東京市村座に出演,16年時蔵を襲名,同時に名題昇進。もっぱら兄の女房役をつとめ,4世市川男女蔵(のちの3世左団次)とともに人気を呼んだ。晩年には独特のカンの冴えた口跡と,ほっそりとした容姿とで女方の随一とうたわれ,《先代萩》の政岡,《重の井子別れ》の重の井,《嫗山姥(こもちやまんば)》の八重桐はとくに優れていた。58年芸術院会員に推されたが,翌年没。(4)4世(1927-62・昭和2-37) 本名小川茂雄。3世の次男。1936年2世中村梅枝の名で初舞台,53年6世中村芝雀(しばじやく)となり,60年時蔵を襲名した。生来の美貌と好演技により将来を嘱望されたが,急逝。(5)5世(1955(昭和30)- ) 本名小川光晴,4世の長男。1981年3世梅枝から時蔵を襲名。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

20世紀日本人名事典 「中村時蔵」の解説

中村 時蔵(3代目)
ナカムラ トキゾウ

明治〜昭和期の歌舞伎俳優



生年
明治28(1895)年6月6日

没年
昭和34(1959)年7月12日

出生地
大阪府大阪市

本名
小川 米吉郎

別名
前名=中村 米吉(2代目)

屋号
播磨屋

主な受賞名〔年〕
日本芸術院賞〔昭和25年〕,毎日演劇賞〔昭和25年〕

経歴
明治33年2世中村米吉として初舞台、大正5年市村座で3代目時蔵を襲名する。このころから兄吉右衛門の女房役をつとめ、4代目市川男女蔵(のちの3代目左団次)と人気を分けた。その後、当代随一の女形と称されたが、特に世話女房役が得意で、芸術院会員に推された翌年に他界。


中村 時蔵(4代目)
ナカムラ トキゾウ

昭和期の歌舞伎俳優



生年
昭和2(1927)年12月1日

没年
昭和37(1962)年1月28日

出生地
東京・永田町

本名
小川 茂雄

別名
前名=中村 梅枝(2代目),中村 芝雀(6代目)

屋号
播磨屋

経歴
昭和11年に中村梅枝を名のって初舞台、28年6世中村芝雀を継いだが、35年に前年亡くなった父の名跡の4世時蔵を襲名した。天性の美貌で将来を期待されたが、興行中に急逝する。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中村時蔵」の意味・わかりやすい解説

中村時蔵(3世)
なかむらときぞう[さんせい]

[生]1895.6.6. 大阪
[没]1959.7.12.
歌舞伎俳優。屋号播磨屋。本名小川米吉郎。1世中村時蔵 (3世中村歌六) の次男,1世中村吉右衛門の弟,17世中村勘三郎の兄。女方を専門とし,時代物,世話物ともによく,古格を伝える芸風で,『伽羅先代萩』の政岡,『恋女房染分手綱』の重の井などが当り役。 1958年日本芸術院会員。

中村時蔵(4世)
なかむらときぞう[よんせい]

[生]1927.12.1. 東京
[没]1962.1.28.
歌舞伎俳優。屋号播磨屋。本名小川茂男。3世中村時蔵の次男。6世芝雀を経て 1960年襲名,生来の美貌と天性を期待されながら急逝。

中村時蔵(5世)
なかむらときぞう[ごせい]

[生]1955.4.26. 東京
歌舞伎俳優。屋号播磨屋。本名小川光晴。4世中村時蔵の長男。慶應義塾大学卒業。 1981年中村梅枝より襲名。父譲りの美貌をもつ正統派の女方として将来を嘱望される。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「中村時蔵」の解説

中村時蔵(3代) なかむら-ときぞう

1895-1959 明治-昭和時代の歌舞伎役者。
明治28年6月6日生まれ。3代中村歌六の次男。万屋(よろずや)錦之介,中村嘉葎雄(かつお)の父。明治34年2代中村米吉の名で初舞台。大正5年東京市村座で3代を襲名。4代市川男女蔵(おめぞう)(のちの3代市川左団次)とくみ人気をあつめる。世話女房役を得意とした。昭和26年芸術院賞。33年芸術院会員。昭和34年7月12日死去。64歳。大阪出身。本名は小川米吉郎。俳名は獅童。屋号は播磨屋。

中村時蔵(4代) なかむら-ときぞう

1927-1962 昭和時代の歌舞伎役者。
昭和2年12月1日生まれ。3代中村時蔵の次男。昭和11年2代中村梅枝の名で初舞台。28年6代中村芝雀(しばじゃく)を,35年4代を襲名。美貌(びぼう)の若手女方として人気をあつめたが,37年1月28日睡眠薬をのみすぎ急死した。34歳。東京出身。本名は小川茂雄。屋号は京屋,播磨屋。

中村時蔵(5代) なかむら-ときぞう

1955- 昭和後期-平成時代の歌舞伎役者。
昭和30年4月26日生まれ。4代中村時蔵の長男。昭和35年初舞台。56年歌舞伎座で5代を襲名。若女方として時代物,世話物に役柄をひろげる。平成20年芸術院賞。東京出身。慶大卒。本名は小川光晴。初名は中村梅枝(3代)。屋号は万屋(よろずや)。

中村時蔵(2代) なかむら-ときぞう

1876-1909 明治時代の歌舞伎役者。
明治9年生まれ。初代中村時蔵の養子となる。2代中村種太郎を名のり,明治35年初代中村歌昇とあらためる。41年明治座で2代を襲名。女方,二枚目をつとめた。明治42年9月18日死去。34歳。屋号は播磨屋。

中村時蔵(初代) なかむら-ときぞう

中村歌六(なかむら-かろく)(3代)

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367日誕生日大事典 「中村時蔵」の解説

中村 時蔵(3代目) (なかむら ときぞう)

生年月日:1895年6月6日
明治時代-昭和時代の歌舞伎役者
1959年没

中村 時蔵(4代目) (なかむら ときぞう)

生年月日:1927年12月1日
昭和時代の歌舞伎役者
1962年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の中村時蔵の言及

【中村歌六】より

…(3)3世(1849‐1919∥嘉永2‐大正8) 初世の三男。前名中村米吉,中村梅枝,中村時蔵。1873年(時蔵時代)兄とともに上京,河原崎権之助(のちの9世市川団十郎)と一座したが意見が合わず,その後中芝居を転々として人気を博した。…

※「中村時蔵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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