日本古代の寺院や貴族邸宅などで,外郭と内郭を形づくる築地塀や回廊などがあるとき,内郭の門を中門という。古代寺院では金堂を囲む回廊に開かれた正門で,外郭の正門(南大門など)とともに仏門といわれ,他の僧門と区別された。7世紀末までは中門は重層入母屋造の奥行きの深い立派な門で,両脇に金剛力士など伽藍守護の像を置いた,聖と俗の空間の関門であった。法隆寺中門が7世紀の実例である。8世紀の平城京内の寺では都大路に面する南大門などの方を重層の本格的なものとし,中門には略式のものもあった(金剛力士は南大門に安置され,中門には四天王のうちの2天がおかれる)。東大寺では大仏殿南正面の門を南中門,北面回廊の門を北中門と呼び,両者あわせて前後中門ともいった。塔院回廊の門も中門と称している。中世の禅宗寺院では中門にあたるものを三門(山門)と呼んだ。
貴族邸宅の寝殿造では,寝殿前庭の側面に釣殿(つりどの)などにいたる廊があり,これを横切る入口を中門,この廊を中門廊といった。中世の書院造でも正面広縁の最も下手から鍵の手に突出した短い廊を中門あるいは中門廊と呼ぶ。近世農家で主屋の下手から前面に出っ張る角屋(つのや)を中門と呼ぶのは,寝殿,書院の中門からの連想である。
執筆者:沢村 仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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【日本】
神社の鳥居や,住宅の簡単な門を除いた大部分の門は,中国伝来の形式であると考えられる。門は形式によって名づけられるほか,寺院の南大門,中門,総門,三門(山門)など場所による名称,仁王(におう)門,随身(ずいじん)門など安置された像による名称があり,そのほか建礼門,桜田門など固有名詞をつけられたものなどがある。木造建築であるから,正面の柱間(はしらま)の数と,そこに開かれる戸口の数とによって,その規模が表され,五間三戸(ごけんさんこ),三間一戸,一間一戸というふうに呼ばれる。…
※「中門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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