中門(読み)チュウモン

デジタル大辞泉 「中門」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐もん【中門】

仏教寺院で、南大門の次にある門。回廊前面中央に設けられる。
寝殿造りで、中門廊途中に設けられた門。
書院造りで、前面の広縁一部かぎ形に突き出した部分寝殿造りの中門廊名残
茶庭内外露地の境にある門。中潜なかくぐり。

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精選版 日本国語大辞典 「中門」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐もん【中門】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 表門より内側の方にある門。
    1. 中門〈年中行事絵巻〉
      中門〈年中行事絵巻〉
    2. [初出の実例]「宴百寮主典以上並新羅使金元静等于中門、奏諸方楽」(出典:続日本紀‐霊亀元年(715)正月己亥)
    3. [その他の文献]〔周礼‐天官・閽人〕
  3. 平安宮の、中和院(ちゅうかいん)の南門。
    1. [初出の実例]「左右近衛各一人、移入自掖門中門〈神嘉殿之南中門也〉」(出典:江家次第(1111頃)七)
  4. 寺院伽藍の金堂前方にある門。
    1. [初出の実例]「金剛力士形弐躯〈在中門〉」(出典:法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)二月一一日)
  5. 寝殿造の中門廊の途中に設けられた門で、寝殿南庭の入り口となる門。中門廊が短くなると、その先端につくようになる。
    1. [初出の実例]「申立売買家券文事〈略〉中門壱処」(出典:東寺百合文書‐へ・延喜一二年(912)七月一七日・七条令解)
  6. 書院造で、主殿または広間の東南隅から突出した部分。寝殿造中門廊の名残。また、主な座敷前庭に入る庭の門もいう。
    1. [初出の実例]「又当世大成広間にしては、中門をつけ作るへし」(出典:匠明(1608‐10)寝屋集)
  7. 茶室外露地内露地との間にある門。
    1. [初出の実例]「扨、内露地のかまへは中門中くくり・猿戸、境界と所有の物すきにより候へし」(出典:源流茶話(1715‐16頃か))
  8. 東北あるいは新潟の民家で、主屋の隅から突き出した部分。寝室・出入り口あるいは厩として使う。

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改訂新版 世界大百科事典 「中門」の意味・わかりやすい解説

中門 (ちゅうもん)

日本古代の寺院や貴族邸宅などで,外郭内郭を形づくる築地塀や回廊などがあるとき,内郭の門を中門という。古代寺院では金堂を囲む回廊に開かれた正門で,外郭の正門(南大門など)とともに仏門といわれ,他の僧門と区別された。7世紀末までは中門は重層入母屋造の奥行きの深い立派な門で,両脇金剛力士など伽藍守護の像を置いた,聖と俗の空間の関門であった。法隆寺中門が7世紀の実例である。8世紀の平城京内の寺では都大路に面する南大門などの方を重層の本格的なものとし,中門には略式のものもあった(金剛力士は南大門に安置され,中門には四天王のうちの2天がおかれる)。東大寺では大仏殿南正面の門を南中門,北面回廊の門を北中門と呼び,両者あわせて前後中門ともいった。塔院回廊の門も中門と称している。中世の禅宗寺院では中門にあたるものを三門(山門)と呼んだ。

 貴族邸宅の寝殿造では,寝殿前庭の側面に釣殿(つりどの)などにいたる廊があり,これを横切る入口を中門,この廊を中門廊といった。中世の書院造でも正面広縁の最も下手から鍵の手に突出した短い廊を中門あるいは中門廊と呼ぶ。近世農家で主屋の下手から前面に出っ張る角屋(つのや)を中門と呼ぶのは,寝殿,書院の中門からの連想である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中門」の意味・わかりやすい解説

中門
ちゅうもん

(1) 南都六宗寺院で回廊の正面に開く門。 (2) 寝殿造で中門廊に開き,寝殿南庭の入口となる門。初期書院造では中門廊の退化したものをいう。 (3) 茶庭で外露地と内露地をへだてる門。

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世界大百科事典(旧版)内の中門の言及

【門】より


【日本】
 神社の鳥居や,住宅の簡単な門を除いた大部分の門は,中国伝来の形式であると考えられる。門は形式によって名づけられるほか,寺院の南大門,中門,総門,三門(山門)など場所による名称,仁王(におう)門,随身(ずいじん)門など安置された像による名称があり,そのほか建礼門,桜田門など固有名詞をつけられたものなどがある。木造建築であるから,正面の柱間(はしらま)の数と,そこに開かれる戸口の数とによって,その規模が表され,五間三戸(ごけんさんこ),三間一戸,一間一戸というふうに呼ばれる。…

※「中門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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