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乾漆 かんしつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

乾漆
かんしつ

器物などの素地 (きじ) 製作法の一つ。木,土,石膏などの型を使って,麻布などを糊 (生漆に姫糊を混ぜて作る) で張り重ねて素地を作る方法をいう。中国ではこれを夾紵 (きょうちょ) といい,戦国時代に現れ,漢代に多く製作された。楽浪郡古墳出土の漆器には夾紵のものが多い。また木芯の上に麻布を重ね,漆で固めた木芯夾紵も遺存する。日本では古墳時代末期に上流階級で夾紵棺が使用されるようになった。

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デジタル大辞泉の解説

かん‐しつ【乾漆】

漆(うるし)の液が、長期間の保存で乾燥し固まったもの。
奈良時代に盛行した漆工芸技法。中国の夾紵(きょうちょ)が起源。古代では𡑮(そく)などとよばれた。技法には脱活乾漆脱乾漆)と木心乾漆の2種があり、前者は粘土の原型の上に麻布をいく重にも漆で覆い固めて成形し、乾燥後、中の原型を取り去るもの。後者は心木に布を漆ではり重ねて成形する。

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百科事典マイペディアの解説

乾漆【かんしつ】

仏像製作の技法。脱活乾漆と木心乾漆の2種がある。前者は土で大体の像形を造り,その上に漆で麻布を幾重にも張り重ねて,乾燥した後に中の土を抜き取り,補強の木わくを組み入れる。

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世界大百科事典 第2版の解説

かんしつ【乾漆】

木,土などの型の上に麻布を漆で何重にもはり重ねて固める技法,およびその作品をいう。中国では古くから夾紵(きようちよ)といい,日本でこの技法が盛行した奈良時代には即,塞,(そく)などといった。紵は麻布の一種をいい,塞は布によってふさぐとの意であろう。乾漆は主に近代の用語で,初めは後述の乾漆像について主に用いられ,のち一般化して現在は工芸,考古学の分野でも用いられる。
[中国,朝鮮]
 夾紵技法はおそらく中国で始まり,すでに漢代には山西省陽高県出土の前漢の夾紵棺,楽浪出土の後漢建武21年(45)の夾紵耳杯などさまざまな容器や飲食器の遺例がある。

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大辞林 第三版の解説

かんしつ【乾漆】

長い間貯えておいて塊状になった漆うるし。漢方で通経薬・回虫駆除などに用いる。
奈良時代に始まる漆工芸の技法。土または木の原形に木屑こくそなどを混ぜた漆を塗り、その上に麻布をはり、さらに上に漆を塗ることを繰り返してかたどる方法。上代には「夾紵きようちよ」「ᑮそく」と呼ばれた。脱乾漆と木心乾漆とがある。

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世界大百科事典内の乾漆の言及

【ウルシ(漆)】より

…そのまま塗ったのでは光沢が悪く,乾きも早すぎるので,脱塵,脱水,均質化などの精製処理を行ってから,添加物を加えて使う。生漆を干して固めたものを乾漆(かんしつ)という。 日本における漆の生産量は,1877年の約800tから1930年約30t,1995年3tと激減した。…

【漆工芸】より

…戦後の漆の研究は通産省工芸指導所東北支所での研究を経て,電子顕微鏡等による漆特有の耐久性の解明や,赤外線分光器等による古代漆状物質の同定などの研究が進んでいる。
[素地,道具,顔料など]
 素地(きじ)となる材料には,木,布(乾漆),皮(漆皮),竹(籃胎(らんたい)漆器),紙(一閑張),金属,陶器,プラスチックなどがある。木には板物(指物)としてヒノキ,ケヤキ,アテ(輪島塗),アスナロ(春慶塗),ホオ(会津塗),カツラ(鎌倉彫)などがあり,挽物用としてケヤキ,トチ,ブナなど,曲物用としてヒノキ,カツラなどが用いられる。…

【正倉院】より

…おもな遺品には金銀山水八卦背八角鏡,銀壺,銀薫炉,金銀花盤などがある。(2)漆工 漆に掃墨を入れた黒漆塗,蘇芳(すおう)で赤く染めた上に生漆を塗った赤漆(せきしつ),布裂を漆で塗りかためて成形した乾漆,皮を箱型に成形して漆でかためた漆皮(しつぴ),漆の上に金粉を蒔(ま)いて文様を表した末金鏤(まつきんる),金銀の薄板を文様に截(き)って胎の表面にはり,漆を塗ったあと文様を研いだり削ったりして出す平脱(へいだつ)(平文(ひようもん)),顔料で線描絵を施した密陀絵(みつだえ)などの技法が用いられた。遺品には漆胡瓶(しつこへい),金銀平脱皮箱,金銀平文琴,赤漆櫃,密陀絵盆などがある。…

※「乾漆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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