八部衆(読み)ハチブシュウ

デジタル大辞泉 「八部衆」の意味・読み・例文・類語

はちぶ‐しゅう【八部衆】

仏法を守護する八体一組の仏の眷属けんぞく。天・竜・夜叉やしゃ乾闥婆けんだつば阿修羅迦楼羅かるら緊那羅きんなら摩睺羅伽まごらか天竜八部衆

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精選版 日本国語大辞典 「八部衆」の意味・読み・例文・類語

はちぶ‐しゅう【八部衆】

  1. 仏語。釈迦が説法のとき聴聞に常侍し仏法を讚美した、仏法守護の八体一組の釈迦の眷属。天・龍・夜叉乾闥婆(けんだつば)・阿修羅・迦楼羅(かるら)・緊那羅(きんなら)摩睺羅伽(まごらか)の称。多くは天と龍で代表させて天龍八部という。

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改訂新版 世界大百科事典 「八部衆」の意味・わかりやすい解説

八部衆 (はちぶしゅう)

釈迦に教化され仏法を守護する8種の下級神の総称。大乗経典に仏の説法の聴衆として登場する。天竜八部衆ともいう。(1)天(デーバdeva) 神のことで(devaはラテン語deusと同系),帝釈天をはじめとする三十三天など。(2)竜(ナーガnāga) 水辺にいて降雨などをつかさどる。その居所竜宮と呼ばれる。インドの美術ではコブラまたはコブラを頭につけた人間の姿で表される。(3)夜叉,薬叉(ヤクシャyakṣa) 森の神として福神と鬼神の両面をもつ。夜叉女(ヤクシーyakṣī,ヤクシニーyakṣiṇī)は多く豊満な裸女で表され,毘沙門天の部下とされる。(4)乾闥婆(けんだつば)(ガンダルバgandharva) 帝釈天に仕える音楽神で香(ガンダgandha)を食べて生きるとされ,ギリシア神話のケンタウロスとの関係も指摘されている。(5)阿修羅アスラasura) 天に敵対するとされる乱暴な神。非天と訳されることもある。(6)迦楼羅ガルダgaruḍa) 鷲が神格化されたもの。金翅鳥(こんじちよう)とも訳され,竜のライバル。人間の肢体に鳥の頭,翼,爪をもったガルダの図が中国のベゼクリク石窟にある。(7)緊那羅(キンナラkiṃnara) 歌舞神で,半人半鳥または半人半馬の姿で表される。これが半人半獣(鳥)の神と表されるのは,キンナラが〈人か否か〉を意味するからである。(8)摩睺羅伽(まごらが)(マホーラガMahoraga) 〈大蛇〉の意の神で,楽神とされる。またこれとは別に,四天王配下とされる八部衆がある。(1)乾闥婆,(2)毘舎闍(ぴしやじや)(ピシャーチャPiśāca),(3)鳩槃荼(くはんだ)(クンバーンダKumbhāṇḍa),(4)薛茘多(へいれいた)(プレータPreta),(5)竜,(6)富単那(ふたんな)(プータナーPūtanā),(7)夜叉,(8)羅刹(ラークシャサRākṣasa)。このうち(2)と(8)は食人鬼の一種。(3)は〈甕のような睾丸をもつもの〉を意味し,象皮病患者のイメージに基づくと考えられる神。(4)は餓鬼。(6)は餓鬼の仲間で熱病鬼とされる。
執筆者: 八部衆の造像は,日本においては古代に集中している。著名な作例である奈良・興福寺の彫像(乾漆造,国宝)は五部浄(ごぶじよう),沙羯羅(さから),迦楼羅,鳩槃荼,阿修羅,乾闥婆,緊那羅,畢婆迦羅(ひばから)と称し,五部浄を天に,沙羯羅を竜に,鳩槃荼を夜叉に,畢婆迦羅を摩睺羅伽に当てる。なお興福寺像は二十八部衆の一部である可能性を指摘する説もある。八部衆は奈良時代の作である興福寺像以降は,著名な作例は残されていないが,密教に取り入れられ,胎蔵界曼荼羅図の外金剛部院に八尊が離れて配置されるが,八部衆八尊を一組として造像することはなかった。また,仏涅槃図の中に八部衆の八尊が描かれる例が多い。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「八部衆」の意味・わかりやすい解説

八部衆【はちぶしゅう】

仏教を守護する異形の神々。天竜八部衆,竜神八部とも。天(天部),竜(竜神・竜王),夜叉(やしゃ)(勇健暴悪で空中を飛行する),乾闥婆(けんだつば)(香(こう)を食い,音楽を奏す),阿修羅(あしゅら),迦楼羅(かるら)(金翅鳥で竜を食う),緊那羅(きんなら)(角のある歌神),摩【ご】羅迦(まごらか)(蛇の神)の8をいう。
→関連項目乾漆

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「八部衆」の意味・わかりやすい解説

八部衆
はちぶしゅう

天竜八部衆,竜神八部衆ともいう。釈尊に教化され,仏法を守護する異教の諸神,八種の天部。普通は天,竜,夜叉,乾闥婆 (けんだつば) ,阿修羅,迦楼羅 (かるら) ,緊那羅 (きんなら) ,摩ご羅伽 (まごらか) の一群の像を呼ぶ。また一説には四天王の衆を八部という。前者の作例としては,興福寺の『八部衆像』 (天平時代) が著名。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「八部衆」の解説

八部衆
はちぶしゅう

天竜八部とも。仏法を賛美し守護する守護神。天(デーバ)・竜(ナーガ)・夜叉(やしゃ)(ヤクシャ)・阿修羅(あしゅら)(アスラ)・迦楼羅(かるら)(ガルダ)・緊那羅(きんなら)(キンナラ)・摩睺羅伽(まごらか)(マホラガ)・乾闥婆(けんだつば)(ガンダルバ)をいう。現存の造形では奈良興福寺の八部衆(国宝)が天平期の乾漆(かんしつ)像として有名。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「八部衆」の意味・わかりやすい解説

八部衆
はちぶしゅう

天竜八部衆

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