十大弟子(読み)ジュウダイデシ

デジタル大辞泉 「十大弟子」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐だいでし〔ジフ‐〕【十大弟子】

釈迦しゃか10人の高弟。智慧第一の舎利弗しゃりほつ神通じんつう第一の目犍連もくけんれん頭陀ずだ第一の摩訶迦葉まかかしょう天眼第一の阿那律あなりつ解空げくう第一の須菩提しゅぼだい説法第一の富楼那ふるな論義第一の迦旃延かせんねん、持律第一の優婆離うばり、密行第一の羅睺羅らごら多聞たもん第一の阿難陀あなんだ

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精選版 日本国語大辞典 「十大弟子」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐だいでしジフ‥【十大弟子】

  1. 釈迦の一〇人のすぐれた弟子。智慧第一の舎利弗(しゃりほつ)、神通第一の目犍連(もくけんれん)頭陀(ずだ)第一の摩訶迦葉(まかかしょう)、天眼第一の阿那律(あなりつ)、解空第一の須菩提(すぼだい)、論義第一の迦旃延(かせんねん)、持律第一の優婆離(うばり)、密行第一の羅睺羅(らごら)多聞第一の阿難(あなん)、説法第一の富楼那(ふるな)の一〇人。十弟子。
    1. [初出の実例]「釈尊の十大弟子に擬して、扈従の粧厳重なり」(出典:太平記(14C後)二四)

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改訂新版 世界大百科事典 「十大弟子」の意味・わかりやすい解説

十大弟子 (じゅうだいでし)

釈迦の10人の主要な弟子のこと。(1)舎利弗(しやりほつ) パーリ語でサーリプッタSāriputta。舎利子とも書かれる(puttaの音訳が弗,意訳が子)。智慧第一と称せられる。《般若心経》では仏の説法の相手として登場。(2)摩訶目犍連(まかもつけんれん) パーリ語でマハーモッガラーナMahāmoggallāna。一般に目連と書かれる。神通第一。はじめ舎利弗とともに懐疑論者サンジャヤ・ベーラッティプッタの弟子であったが,舎利弗とともに仏弟子となる。目連が餓鬼道に落ちた母を救うために行った供養が盂蘭盆会(うらぼんえ)の起源になったといわれる。(3)摩訶迦葉(まかかしよう) パーリ語でマハーカッサパMahākassapa。頭陀(ずだ)第一。釈迦の死後その教団を統率し,500人の仲間とともに釈迦の教法を編集し(第一結集),付法蔵(教えの奥義を直伝すること)の第一祖となった。(4)須菩提(しゆぼだい) サンスクリット語でスブーティSubhūti。解空第一。空を説く大乗経典にしばしば登場する。(5)富楼那弥多羅尼子(ふるなみたらにし) サンスクリット語でプールナマイトラーヤニープトラPūrṇamaitrāyanīputra。説法第一。西方への伝道に際し,仏にその地の民の凶暴なことを教えられてもたじろがなかった富楼那とは別人らしい。(6)摩訶迦旃延(まかかせんねん) パーリ語でマハーカッチャーナMahākaccāna。論議第一。辺地では5人の師しかいなくても授戒する許可を仏から得た。(7)阿那律(あなりつ) サンスクリット語でアニルッダAniruddha。天眼第一。釈迦のいとこ。阿難とともに出家した。仏の前で居眠りして叱責をうけ,眠らぬ誓いをたて,視力を失ったがそのためかえって真理を見る眼をえた。(8)優波離(うぱり) サンスクリット語でウパーリUpāli。持律第一。もと理髪師であったが,階級制度を否定する釈迦により,出家した順序にしたがって,貴族出身の比丘の兄弟子とされた。第一結集においては,彼の記憶に基づいて律(仏教教団の生活規則)が編纂された。(9)羅睺羅(らごら) サンスクリット語でラーフラRāhula。羅云とも書かれる。密行第一。釈迦の息子。釈迦の帰郷に際し出家して最初の沙弥(少年僧)となる。(10)阿難(あなん) サンスクリット語でアーナンダĀnanda。多聞第一。釈迦のいとこ。出家して以来,釈迦が死ぬまで25年間,釈迦の世話をした。第一結集のとき,彼の記憶に基づいて経が編纂された。心のやさしい阿難は厳格な摩訶迦葉としばしば対比される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「十大弟子」の意味・わかりやすい解説

十大弟子
じゅうだいでし

釈迦(しゃか)の弟子のなかで代表とされる10人のこと。最初期には特定の弟子はいなかったが、大乗経典では十大弟子の呼称が固定した。一般的には次の10人をいう。(1)舎利弗(しゃりほつ)(智慧(ちえ)第一)、(2)目犍連(もくけんれん)(神通力(じんずうりき)第一)、(3)摩訶迦葉(まかかしょう)(頭陀(ずだ)―苦行による清貧の実践―第一)、(4)須菩提(しゅぼだい)(解空(げくう)―すべて空であると理解する―第一)、(5)富楼那(ふるな)(説法第一)、(6)迦旃延(かせんねん)(論議第一)、(7)阿那律(あなりつ)(天眼(てんげん)―超自然的眼力―第一)、(8)優婆(波)離(うばり)(持律(じりつ)―戒律の実践―第一)、(9)羅睺羅(らごら)(密行―戒の微細なものまで守ること―第一)、(10)阿難(あなん)(多聞(たもん)―釈迦の教えをもっとも多く聞き記憶すること―第一)。具体的な十大弟子信仰は中国に始まったようで奈良興福寺の彫刻はとくに有名。

[石上善應]


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百科事典マイペディア 「十大弟子」の意味・わかりやすい解説

十大弟子【じゅうだいでし】

釈迦(しゃか)の弟子の中でことにすぐれた10人の総称。それぞれ仏教の修行徳目の一つにすぐれるとされる。舎利弗(しゃりほつ)(智慧第一),目【けん】連(もっけんれん)(神通第一),摩訶迦葉(まかかしょう)(頭陀(ずだ)第一),阿那律(あなりつ)(天眼第一),須菩提(しゅぼだい)(解空第一),富楼那(ふるな)(説法第一),迦旃延(かせんねん)(論議第一),優婆離(うばり)(持律第一),羅【ご】羅(らごら)(密行第一),阿難陀(あなんだ)(多聞第一)。
→関連項目阿難乾漆

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十大弟子」の意味・わかりやすい解説

十大弟子
じゅうだいでし

釈尊の弟子中最もすぐれていたとされる 10人。舎利弗 Śāriputra,目 犍連 Maudgalyāyana,摩訶迦葉 Mahākāśyapa,阿那律 Aniruddha,須菩提 Subhūti,富楼那 Pūrṇamaitrāyanīputra,迦旃延 Kātyāyana,優波離 Upāli,羅ご羅 Rāhula,阿難陀 Ānanda。彼らは,順次に,智慧,神通,頭陀,天眼,解空,説法,論義,持律,密行,多聞においてすぐれていたとされる。像の作例としては興福寺の『十大弟子像』 (奈良時代後期) があげられる。

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世界大百科事典(旧版)内の十大弟子の言及

【仏教美術】より

…それゆえ仏教では,祖々仏々として法の伝授は特に重視された。釈迦―十大弟子―各宗の祖師―弟子への系譜を,禅宗や密教で血脈(けちみやく)と称するゆえんもここにある。この系列の美術に羅漢像や祖師像などの肖像や,僧侶自身の墨跡がある。…

※「十大弟子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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