人間の精神を認識する場合,心的現象を一定の要素に還元し再構成するという自然科学にならった心理学的方法では不可能であるとし,〈了解Verstehen〉という認識方法によってとらえようという立場の,主としてドイツにおいて発達した心理学。提唱者であるW.ディルタイによれば,了解は感性的表現や言語,身ぶりを通して対象となる心的現象を追体験,感情移入,内省することによって得られる認識である。〈自然をわれわれは説明するが,精神生活はこれを了解する〉という言葉もあるように,心的構造は了解によって生きた全体関連が記述・分析されるとし,どちらかといえば哲学的傾向が強い。このディルタイの了解が直接的な心的連関の把握であったのに対して,その後彼の構想を発展させた弟子であるE.シュプランガーは,さらに心的連関を客観的な意味連関,価値連関に求め,真の了解には単なる主観的な追体験によるだけでなく,個人を超えた心的連関に対する知識が必要であるとし,これを〈精神科学的心理学〉とよんだ。
執筆者:武正 建一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
広い意味では了解(理解)的方法をとる心理学のことで、精神分析や臨床心理学が患者のことばや動作などを通してその心理を理解する場合がその例である。狭い意味では、ディルタイおよびその弟子のシュプランガーらの主張した心理学をさす。ディルタイは歴史哲学の立場から、歴史家が人間を理解する精神科学的方法を提唱して自然科学的方法に対立させた。彼はブントやエビングハウスらが主張する実験室的な原子論的説明的心理学に反対し、人間の言語、身ぶり、文学、音楽、彫刻などの精神的所産を追体験し、共感し解釈する記述的分節的了解心理学を主張した。分節とは人間には首や胴体や手足があるというように、分けて考えることである。ディルタイはそれによって精神史、文芸学の研究に貢献したが、シュプランガーは、理論、経済、審美、社交、権力、宗教の6種の価値体系を区別して青年心理学、発達心理学に貢献した。
[宇津木保]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…そうするとどうしても客観科学としての心理学からはずれてゆくのである。 以上述べてきたさまざまな心理学のほかに了解心理学の流れがある。了解心理学はW.ディルタイにはじまるが,了解を直接経験の直観的把握にとどめず,精神構造の理論に裏打ちさせたのがS.フロイトの精神分析である。…
※「了解心理学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加